掃守小麻呂

掃守小麻呂の歴史とその背景

掃守小麻呂（かにもり の おまろ）は、飛鳥時代に活躍した武人であり、姓は連、冠位は小乙上である。彼は時代背景や家族との関係から、非常に興味深い存在である。

出自と掃守連氏の背景

彼が属していた「掃守連氏」は、朝廷に貢献するための清掃や舗設を専門とする「掃守部」を率いる伴造氏族である。『新撰姓氏録』によると、この氏族は、「左京神別」や「河内国神別」に分類されており、振魂命の四世孫で天忍人命の後裔と位置付けられている。このことから、大和の伝統に深く根ざした一族であり、名だたる尾張国造とも同じ血筋にあるという。

掃守連氏の拠点は、高安郡掃守郷にあたる現在の大阪府八尾市南高安町の地域と見られており、当時の政治や社会において重要な役割を果たしていたことが伺える。特に、大化5年（649年）には、この一族から掃部連角麻呂が三輪君色夫とともに新羅に派遣された記録があり、外交面でも重用されていたことがうかがえる。

記録に見る掃守小麻呂の足跡

白雉4年（653年）、掃守小麻呂は遣唐第2船の大使、大伴高田首根麻呂の副使として唐へと向かうことになった。この出発の際には、学問僧の道福や義向など、合計120名が同行した。小麻呂のその時の位は小乙上であった。彼の役割は、当時の国際関係において重要であり、学問や文化の交流の一端を担っていたのかもしれない。

しかし、同年の7月、高田根麻呂の船が薩摩の曲と竹嶋の間で衝突し、沈没するという悲劇に見舞われた。この事故により、120名の乗員の中で生き残ったのはわずか5名であり、彼らは竹島に流れ着くこととなった。その後、筏を作り、飲まず食わずの状態で6日間漂流の末に神嶋に辿り着いた。しかし、掃守小麻呂の名は生存者の中にはなく、彼は遣唐船とともに消え去ったと考えられている。

この出来事により、彼は歴史の表舞台から姿を消すが、同時に出航した遣唐第1船は、無事に唐に到着した。吉士長丹たちが目的を果たし、翌年には新羅・百済の使者と共に筑紫まで到達した。彼の一族が長年にわたり外交に携わっていたことは、掃守小麻呂の背景につながる重要な要素である。

まとめ

掃守小麻呂の歴史は、彼の出自や一族の特徴、さらには外交的な役割を通じて、飛鳥時代の政治や文化がどのように形成されていったのかを示唆している。彼の生涯は短かったものの、その影響は後世に渡って評価され続けていくことだろう。なお、掃守連一族は、天武天皇の時代に八色の姓を賜ることで、さらなる名誉を与えられることとなる。

参考文献

• - 『日本書紀』（四）・（五）、岩波文庫、1995年
• - 『日本書紀』全現代語訳（下）、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
• - 『日本の歴史2 古代国家の成立』、直木孝次郎：著、中央公論社、1965年
• - 『日本の古代3 海をこえての交流』、大林太良：編、中公文庫、1995年
• - 『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編、雄山閣、2015年

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