吉士長丹

吉士長丹（きし の ながに/ちょうたん）：飛鳥時代の遣唐使

吉士長丹は、飛鳥時代に活躍した豪族であり、遣唐使として知られています。呉長丹（くれ の ながに）とも表記されます。

出自

「吉士」という姓は、古代朝鮮における「首長」を意味する言葉に由来し、後に氏へと変化しました。その源流を辿ると、中国の周人に繋がるとされています。『新撰姓氏録』によれば、吉志氏は「摂津国皇別」に分類され、「難波忌寸と同祖で、大彦命の後裔である」とされています。彼らの本拠地は、摂津嶋下郡吉志部村（現在の大阪府吹田市岸部町）にありました。

遣唐使としての活躍

白雉4年（653年）、吉士長丹は遣唐使の第一船大使として、総勢121人を率いて唐へと出発しました。当時の位は小山上であり、副使は吉士駒が務めました。学問僧としては、後に粟田真人となる道観、道昭、そして中臣鎌足の長男である定恵らが同行しました。

翌年の7月、吉士長丹は百済・新羅からの使節と共に筑紫国に帰国しました。『日本書紀』には、この時の彼の役職が「西海使」と記されています。

帰国後、吉士長丹は小花下の位に昇叙され、封戸200戸を与えられました。また、呉氏の氏姓を賜りました。この氏姓は、彼が「呉」を経由して長安に到達したことに由来すると考えられています。このことから、彼が南島路を通って唐へ渡った可能性が指摘されています（岸俊男）。

ゆかりの神社

近江国蒲生郡には、吉士長丹ゆかりの呉神社があります。

まとめ

吉士長丹は、飛鳥時代における国際交流の重要な役割を担った人物です。遣唐使としての彼の功績は、日本の文化や政治に大きな影響を与えました。彼の出自や足跡を辿ることで、当時の国際情勢や社会背景をより深く理解することができます。

参考文献

三省堂編修所 編『コンサイス日本人名事典』三省堂〈改訂新版〉、1993年
大林太良 編『海をこえての交流』中公文庫〈日本の古代 3〉、1995年
『日本書紀 四』岩波書店〈岩波文庫〉、1995年
宇治谷孟 訳『日本書紀 全現代語訳 下』講談社〈講談社学術文庫〉、1988年
直木孝次郎『古代国家の成立』中央公論社〈日本の歴史 2〉、1965年
佐伯有清 編『日本古代氏族事典』雄山閣、2015年
* 加藤謙吉『渡来氏族の謎』祥伝社〈祥伝社新書〉、2017年

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