携帯電話IP接続サービス

携帯電話IP接続サービスとは

携帯電話IP接続サービスは、かつての携帯電話（フィーチャーフォン）やPHS端末でインターネットを利用できるようにしたサービスです。これらの端末は、当時のPCに比べて性能が低く、通信速度も遅かったため、専用の仕組みが必要でした。このサービスは、データ通信機能とCompact HTMLブラウザを搭載し、端末単独でインターネットに接続できるようにしたもので、Webサイトの閲覧やメールの送受信を可能にしました。通信プロトコルとしてはHTTPが標準的に用いられました。

サービスの概要

1999年2月にNTTドコモがiモードを世界で初めて開始し、その後、auのEZweb、ソフトバンクのJ-Sky（後のYahoo!ケータイ）が追随しました。これらのサービスはパケット通信を利用し、各キャリアの専用ゲートウェイを経由して、メニューサイトや外部のWebサイトに接続していました。

サービス開始当初は、回線交換方式のSMSよりも低料金でメールができたことから人気を集めました。その後、コンテンツプロバイダが増え、メニューサイトが充実したり、個人が作成したWebサイト（勝手サイト）が見られるようになったことで、利用者が爆発的に増加しました。2001年にはiアプリが登場し、Javaアプリケーションの配信も始まりました。第3世代携帯電話以降では、着うたや動画などのリッチコンテンツも配信されるようになりました。

2004年にはフルブラウザを搭載した携帯電話が登場し、パソコン向けのWebサイトも閲覧できるようになりました。しかし、2007年に登場したiPhoneは、完全にフルブラウザ中心の構成となり、スマートフォンへの移行が進みました。ソフトバンクがiPhoneを発売したことで、各社はスマートフォン向けサイトへの移行を余儀なくされ、サービスを終了するケースも出てきました。

コンテンツの特徴

携帯電話IP接続サービスには、各キャリアが提供する「公式サイト」と、それ以外の「勝手サイト」がありました。勝手サイトには、ポータルサイトや個人のブログ、SNS、ケータイ小説など、多様なコンテンツが存在しました。しかし、一方で、アングラな掲示板や出会い系サイト、アダルトサイト、自殺系サイトなどの闇サイトも存在し、ネットリテラシーの低いユーザーがトラブルに巻き込まれることもありました。これにより、ネットリテラシー教育の重要性が認識されるようになりました。

2005年頃から、各キャリアは未成年者向けに有害サイトへのアクセスを制限するフィルタリングサービスを提供するようになりました。また、迷惑メールが横行したため、2002年には「特定電子メール法」が施行され、メールフィルタリングも整備されました。

サービス開始当初は、パケット通信料が従量制だったため、利用頻度が高いと通信費が非常に高額になる「パケ死」という現象が起きました。一部の利用者は通信料の支払いを拒否して訴訟を起こす事態にもなりました。2004年にはパケット定額制プランが登場し、通信費が平準化されましたが、一部の利用方法では定額対象外になることもありました。

コンテンツを作成する側は、各キャリアの規格に対応したサイトを別々に作る必要があり、公式サイトに掲載してもらうためには、広告代理店やコンサルタント業者を介する必要がありました。

メニューコンテンツ

携帯電話IP接続サービスでは、以下のようなコンテンツが提供されていました。

着信メロディ・着信ボイス・着うた配信
待受画面配信
ゲーム（Javaアプリ）配信
動画配信
天気予報
ニュースサイト
地図
航空券の予約・購入
特急券・指定席券の予約・購入
宿泊・パックツアー予約
乗り換え案内、道路交通情報、バスロケーションシステム
旅行情報（紀行・口コミ）
モバイルバンキング
株取引（オンライントレード）
クレジットカード利用内容照会
ショッピングサイト
辞書、検索サイト
レシピサイト
健康情報・医療情報
SNSサイト

各社のサービス名

iモード (NTTドコモ)
EZweb (au)
Yahoo!ケータイ (SoftBank)
EMnet (イー・モバイル)
AIR-EDGE PHONE (ウィルコム)

類似サービス

スマートフォン
spモード (NTTドコモ)
IS NET (au)
S!ベーシックパック (ソフトバンクモバイル)
EMnet (イー・モバイル)
PHS
NTTパーソナル「パルディオEメール」
ドコモPHS「ブラウザフォン」
DDIポケット「PメールDX」「H"LINK」
アステル「MOZIOeメール」「ドットi」
固定電話
Lモード (NTT東日本・NTT西日本)
J-Web (ソフトバンクテレコム)
モバイル端末向け
infogate (NTTドコモ)

記述言語

WML (Wireless Markup Language)
Compact HTML

まとめ

携帯電話IP接続サービスは、フィーチャーフォン時代にインターネットを身近なものにした画期的なサービスでした。各社の競争が激しく、様々なコンテンツが提供された一方で、問題点も多く存在しました。この経験が、後のスマートフォン時代への発展に繋がったと言えるでしょう。

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