方賓

方賓（ほう ひん）

方賓は、明代初期に活躍した官僚です。生年は不明ですが、1421年に亡くなっています。本貫は杭州府銭塘県です。

生涯

方賓は、洪武帝の時代に太学生として学んだ後、その才能を認められ兵部郎中に試用されました。建文帝の時代には、応天府（現在の南京）の事務を代行しましたが、罪を問われて広東に流されるという不遇を経験しました。しかし、茹瑺の推薦により南京に呼び戻され、再び官界に復帰しました。

1402年、燕王朱棣（後の永楽帝）が南京に入城すると、方賓は劉儁らとともにこれに帰順しました。この功績により、兵部侍郎に昇進しました。

1406年、劉儁が兵部尚書としてベトナム遠征に出陣すると、方賓は兵部の事務を統括し、その手腕を遺憾なく発揮しました。彼は、事務を滞りなく処理し、その能力の高さを周囲に示しました。

1409年には、兵部尚書に昇進し、永楽帝に従って北京に移りました。北京では、行在の吏部事務も兼務し、その多才ぶりを発揮しました。翌年には、永楽帝の漠北遠征に従軍し、胡広、金幼孜、楊栄などの学士や、金純などの侍郎とともに機密事項にも参与しました。その後も、永楽帝の北巡に度々扈従しました。

1421年、永楽帝が親征を計画した際、方賓は戸部尚書の夏原吉、刑部尚書の呉中、礼部尚書の呂震と協議し、戦を止めて民力を休養させるべきであるという意見で一致しました。しかし、この意見は上奏される前に、永楽帝が方賓を呼び出し、兵糧の不足について問いただしました。方賓は兵糧の不足を正直に告げました。その後、永楽帝は夏原吉を呼び出しましたが、夏原吉ははっきりと答えませんでした。このことに激怒した永楽帝は、夏原吉を開平の兵糧視察に派遣し、その後召還して投獄しました。

方賓は当時、霊済宮の工事を指揮していましたが、宮中の宦官から永楽帝の怒りを聞き、恐怖に駆られました。永楽帝に殺されるのではないかと恐れた方賓は、自ら縊死しました。永楽帝は方賓を殺すつもりはなかったものの、方賓の死を知ると激怒し、その遺体を辱めたとされています。

方賓の生涯は、明代初期の政治情勢、特に永楽帝の性格と統治のあり方をよく示しています。彼の悲劇的な最期は、権力者の理不尽さを示すとともに、官僚としての責任感と忠誠心の重要性を私たちに問いかけています。

参考文献

『明史』巻151 列伝第39
寺田隆信『永楽帝』中央公論社〈中公文庫〉、1997年。ISBN 978-4062921480。

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