日本と東トルキスタンの関係

本項では、日本と東トルキスタンの関係について、歴史的な経緯を中心に解説します。東トルキスタン、現在の中国新疆ウイグル自治区は、テュルク系民族が長く居住してきた地域であり、特にウイグル民族の歴史は複雑な変遷を辿ってきました。

前史（紀元前～7世紀頃）

東トルキスタンの地は、古くは周王朝の記録にも登場する「狄」と呼ばれる異民族が居住していました。6世紀にはテュルク系民族の突厥が中央アジアで勢力を拡大しましたが、この時代の突厥とウイグル人を同一視することはできません。

強力なウイグル人国家: 回鶻およびカラハン朝（8世紀～1212年）

ウイグル民族の存在が歴史に登場するのは、モンゴル高原からジュンガル盆地東部に勢力を持った遊牧国家「回鶻」によるものです。回鶻は唐王朝と交流を持ち、懐仁可汗の称号を授与されました。この時代のウイグル人は、独自の宗教やマニ教を信仰していました。同時期の日本は遣唐使を通じて唐と交流がありましたが、日本と回鶻の直接的な交流は確認されていません。

回鶻は疫病や内紛により衰退し、840年にモンゴル高原での権勢を失います。その後、9世紀半ば以降には、ウイグル人によるイスラム王朝カラハン朝が西トルキスタンで大勢力を築きました。カラハン朝はイスラムの制度や学問を取り入れ、テュルク語の文学や辞典編纂など、文化的な発展を遂げました。1212年、カラハン朝はホラズム・シャー朝によって滅ぼされましたが、そのホラズム・シャー朝も1219年にモンゴル帝国によって滅亡しました。

モンゴル人や清王朝による支配（1212～1912年）

カラハン朝滅亡後、ウイグル人はモンゴル帝国の支配下に入り、その後もチャガタイ・ハン国やジュンガルなどの支配を受けました。1759年には、満州族の清王朝が東トルキスタンを侵略し、植民地支配を開始しました。1864年に一時独立を回復しますが、1876年に清王朝が再侵攻し、1884年に東トルキスタンは「新疆省」として清の版図に組み込まれました。「新疆」とは「新しい領土」を意味します。

辛亥革命から中華人民共和国による併合まで（1912～1949年）

1912年の辛亥革命で清王朝が倒れ中華民国が成立しましたが、東トルキスタンでは支配者が変わっただけで、ウイグル人の地位は改善されませんでした。1933年には、カシュガルで東トルキスタン共和国（第一次）が独立を宣言しましたが、翌年、中華民国から派遣された軍閥の盛世才によって鎮圧されました。1944年には、ソ連の支援を受けた勢力がグルジャで再び東トルキスタン共和国（第二次）を樹立しました。

第二次東トルキスタン共和国は、中国共産党やソ連の意向を受け、国民政府に対抗する動きを見せました。1945年の日本の降伏後、ソ連は国民政府との和平路線に転換し、東トルキスタン共和国の指導者アリハーン・トラを拘束しました。その後、アフメトジャン・カスィミが指導者となりましたが、1949年に謎の飛行機事故で死亡し、その混乱の中で人民解放軍が東トルキスタンに侵攻、中華人民共和国の一部として併合されました。

新疆ウイグル自治区の成立以降（1955年～）

1955年、新疆ウイグル自治区が設置されました。当時、日本は中華民国と国交があり、中華人民共和国との関係は断絶していました。1972年の日中国交正常化により、日本は中華人民共和国との関係を樹立し、東トルキスタンとの関係も、中華人民共和国を介する形となりました。

2008年には、在日ウイグル人によって日本ウイグル協会が設立され、ウイグル人の権利擁護活動が行われています。その後、世界ウイグル会議との関係が変化し、日本ウイグル連盟が設立されました。

日本とウイグル人の関係の現状

現代の日本と東トルキスタンの関係は、主に在日ウイグル人による人権活動を通じて維持されています。日本国内では、ウイグル人に対する中国政府の政策に対する懸念が高まっており、人権問題への関心も高まっています。日本ウイグル協会や日本ウイグル連盟などの団体が、国際社会に向けてウイグル人の現状を訴え、支援を求めています。

まとめ

日本と東トルキスタンの歴史的な関係は、古代から現代に至るまで複雑な変遷を辿ってきました。特にウイグル人の歴史は、様々な勢力の支配を受けながらも独自の文化を維持し続けています。現代においては、人権問題を通じて両地域の関係が再認識されつつあり、国際社会におけるウイグル問題への関心が高まっています。

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