日本の音楽雑誌

日本の音楽雑誌の歴史

日本の音楽雑誌は、時代ごとの音楽シーンを映し出す鏡のような存在です。黎明期から現代に至るまで、様々なジャンルや文化の興隆とともに、多種多様な雑誌が誕生し、その役割を果たしてきました。ここでは、その歴史を詳細に紐解いていきます。

戦前

音楽雑誌の登場

1880年代、ピアノ、オルガン、バイオリンといった西洋楽器の国産化が進む中、1890年に国内初の音楽雑誌『音楽雑誌』が創刊されました。その後、1901年には『音楽之友』（後の『音楽』）、1904年には『音楽新報』が創刊され、1908年に両誌が合併し『音楽界』となりました。また、楽器店が発行する音楽雑誌も登場し、1907年には十字屋田中商店楽器部（後のJEUGIA）が『音楽世界』を、1910年には東京音楽学校学友会および共益商社楽器店が『音楽』を、1912年には松本楽器店（後の山野[[楽器]]）が『月刊楽譜』を創刊しました。

大正デモクラシーと童話童謡雑誌の登場

大正デモクラシーの潮流の中、1918年には童話童謡雑誌『赤い鳥』が、翌1919年には『金の船』（後の『金の星』）が創刊され、子供たちの情操教育にも貢献しました。

レコード雑誌の登場

1910年代には国産蓄[[音機]]が登場し、レコード文化が広がるにつれて、『音楽と蓄音器』、『ザ・グラモヒル』（後の『ディスク』）、『名曲』（後の『レコード音楽』）、『レコード』など、レコード専門の雑誌も発行されました。

戦中

1941年、戦時統制により音楽雑誌は統合され、一般音楽誌として『音楽之友』（『月刊楽譜』、『音楽世界』、『音楽倶楽部』が合併）、ポピュラー[[音楽]]誌として『國民の音楽』（『アコーディオンハーモニカ研究』、『歌の花籠』、『ハーモニカの友』が合併）、レコード誌として『レコード文化』（『レコード音楽』、『ディスク』、『レコード』が合併）、吹奏楽誌として『吹奏楽』（『吹奏楽月報』、『バンドの友』が合併）、音楽評論誌として『音楽公論』（『音楽新潮』と『音楽評論』が合併）、機関紙として『音楽文化新聞』（旧『音楽商報』）が創刊されました。

1943年にはさらに統合が進み、『音楽文化』（後の『音楽芸術』）と『音楽知識』（後の『音楽之友』）の2誌に集約されました。

戦後

ジャズの流行

戦後、ジャズ喫茶が復興し、モダン・ジャズが確立される中、1946年に新興音楽出版社が『ミュージック・ライフ』を、1947年にスイングジャーナル社が『スイングジャーナル』を創刊しました。

電気楽器の普及

1960年代にはエレキギターが流行し、1968年には楽器・音楽情報誌『Young Mates Music』（後の『Player』）が創刊されました。また、電子オルガン「エレクトーン」の普及に伴い、1971年には雑誌『月刊エレクトーン』が創刊されました。

深夜放送ブームとロック、フォークの躍進

1960年代後半から深夜放送が人気を博し、若者向けの音楽番組で海外のロックや日本のフォークソングが紹介されるようになると、これらの音楽を扱う雑誌も登場しました。1968年に新興音楽出版社がフォーク雑誌『YOUNG GUITAR』を、1969年に表現技術出版が『guts』を、1970年に集英社が『ヤングセンス』を、自由国民社が『深夜放送ファン』を、1972年に講談社が雑誌『ヤングフォーク』を創刊しました。また、1972年には渋谷陽一がロック雑誌『rockin'on』を創刊し、1973年には『ローリングストーンジャパン』が創刊されました。

FM放送の登場とFM情報誌

FM放送の普及とともに、FM情報誌も登場し、音楽ファンにとってFM放送が重要な情報源となっていきました。

ニュー・ロックとブルースブーム

1960年代後半にニュー・ロックが登場し、1969年に『ニューミュージック・マガジン』（現『ミュージック・マガジン』）が創刊され、1970年代にはブルースブームが起こり、1973年に日暮泰文がブルース専門雑誌『ザ・ブルース』（後の『ブラック・ミュージック・リヴュー』）を創刊しました。1977年にはプログレッシブ・ロック雑誌『FOOL'S MATE』が登場しました。

テクノブーム

1970年代後半にはYMOを中心とするテクノが流行し、キーボードやコンピュータに注目が集まりました。1979年には『キーボード・マガジン』と『キーボードランド』、1981年には『サウンド&レコーディング･マガジン』が創刊され、その後も多くのキーボード雑誌が登場しました。

ミュージックビデオと邦バンド

1980年代にはミュージックビデオ（MV）が普及し、日本のロックバンドもMVを制作するようになりました。1988年には雑誌『WHAT's IN?』が、プレイヤー向け雑誌として『BANDやろうぜ』が、1989年には『GiGS』が創刊され、バンドブームを牽引しました。

映像カラオケとカラオケ演歌雑誌

1980年代初期に映像カラオケが登場し、カラオケの普及に伴い、『月刊カラオケファン』や『演歌ジャーナル』などのカラオケ・演歌雑誌が登場しました。

洋楽における流行の変化

1980年代にはヘヴィメタルブームが起こり、1984年にはヘヴィメタル専門誌『BURRN!』が創刊されました。一方、『rockin'on』はヘヴィメタルを扱わなくなり、その対抗として1988年に『クロスビート』が創刊されました。

アイドル路線とシリアス路線

1980年代にはアイドルバンドが台頭し、1984年にはアイドルバンドに特化した雑誌『PATi PATi』が創刊されました。また、男性アイドル誌も登場し、一方では佐野元春などの邦ロックをシリアスに扱う雑誌を求める声に応え、1986年には『ROCKIN'ON JAPAN』が創刊されました。

歌謡曲と女性アイドル、女性シンガーソングライター

長らく専門誌が存在しなかった歌謡曲を扱う雑誌として1979年に『よい子の歌謡曲』が創刊されました。1980年代のアイドルブームの中で、アイドル雑誌も数多く登場し、1992年には女性シンガーソングライターに注目した雑誌『GiRLPOP』が創刊されました。

音楽CDの普及とCD雑誌

1982年に音楽CDが発売され、普及が進むにつれて、1985年には『CDジャーナル』が、1986年には『CDでーた』（後の『CD&DLでーた』）が創刊されました。

ユーロビートブーム

1980年代のディスコブームとともに、ユーロビートが流行し、1987年よりエイベックスが音楽情報誌『beatfreak』を創刊しました。

ジャニーズブーム

1980年代後半からジャニーズブームが起こり、1988年にはアイドル雑誌『Wink Up』が創刊されました。また、既存の男性アイドル誌でもジャニーズ関連の記事が増えました。

ビジュアル系の登場

1980年代後半にビジュアル系バンドが登場し、1990年には雑誌『SHOXX』が創刊され、その後も多くのビジュアル系雑誌が登場しました。

童謡ブーム

1980年代には創作童謡が盛り上がり、1985年には日本童謡協会が機関紙『どうよう』を創刊しました。

タイアップ路線とプロデューサーの時代

1990年代にはタイアップ路線が台頭し、音楽プロデューサーが注目を集めました。また、1993年にはアニメソングレーベルの広報誌『STARCHILDでございますぅ』が、1994年にはフリーペーパー『Music Freak Magazine』が創刊されました。

クラブミュージック

1990年代初頭にはクラブブームが起こり、1991年にはクラブ雑誌『REMIX』が、1994年には『Loud』が、1995年には『ele-king』が、1997年には『GROOVE』が創刊されました。

ダイジェストCD付き雑誌

1997年には、付録にダイジェストCDが付いた雑誌『ザッピィ』が登場しました。

着メロ

1990年代後半には携帯電話の着メロ機能が普及し、1999年には着メロ専門誌『着メロマガジン』が創刊されました。

アニソン雑誌の登場

1990年代末からアニソンブームが起こり、2006年には『アニカンR MUSIC』が、2007年には『アニソンマガジン』が、2010年には『リスアニ!』が創刊されました。

音楽Webメディアの登場と雑誌不況

1990年代にインターネットが普及すると、音楽情報がWebで入手できるようになり、雑誌の売り上げは減少していきました。2000年には『POP MUSIC Artist 公式ホームページINDEX』が、2001年には『bounce』のWeb版が、2004年には『ORICON STYLE』が、その後も『ナタリー』、『リアルサウンド』、『M-ON! MUSIC』などのWebメディアが登場しました。

現行

現在も、様々なジャンルの音楽雑誌が発行されています。主なものとしては、以下のものがあります。

ポップス・ロック：『ミュージック・マガジン』、『ROCKIN'ON JAPAN』、『B-PASS』、『音楽と人』、『MUSICA』、『Rolling Stone Japan』、『CDジャーナル』など
洋楽：『INROCK』、『rockin'on』、『レコード・コレクターズ』、『ユーロ･ロック･プレス』
ハードロック・ヘヴィメタル：『We ROCK』、『BURRN!』、『METALLION』、『ヘドバン』、『METAL HAMMER JAPAN』
パンクロック：『Bollocks』
ビジュアル系：『ROCK AND READ』
クラシック：『音楽の友』、『MOSTLY CLASSIC』、『音楽現代』、『月刊ショパン』、『ムジカノーヴァ』、『Band Journal』、『現代ギター』、『サラサーテ』
ジャズ：『jazz Life』、『ジャズ批評』、『JAZZ JAPAN』
クラブ・ヒップホップ・ダンス・DJ：『ele-king』
ブルース・ソウルミュージック：『BLUES & SOUL RECORDS』
AOR：『AOR AGE』
演歌・昭和歌謡：『月刊カラオケファン』、『歌の手帖』
アニメソング：『リスアニ!』、『Ani-PASS』
邦楽（伝統音楽）：『邦楽ジャーナル』
楽器演奏・楽曲制作：『ギター・マガジン』、『リズム&ドラム・マガジン』、『ベース・マガジン』、『キーボード・マガジン』、『サウンド&レコーディング・マガジン』、『アコースティック・ギター・マガジン』、『ウクレレ・マガジン』、『YOUNG GUITAR』、『月刊Piano』、『月刊エレクトーン』、『THE SAX』、『サックス・ワールド』、『The Clarinet』、『THE FLUTE』、『Ocarina』、『Acoustic Guitar Book』、『THE EFFECTOR BOOK』
* 音楽教育：『教育音楽 小学版』、『教育音楽 中学・高校版』

休刊・廃刊

2000年代以降、音楽業界全体の不況やインターネットの普及により、数々の音楽雑誌が休刊・廃刊となりました。

（具体的な雑誌名は原文を参照してください）

まとめ

日本の音楽雑誌は、それぞれの時代やジャンルの音楽シーンを反映した貴重な資料です。その歴史を振り返ることで、日本の音楽文化の変遷をより深く理解することができるでしょう。

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