日本基督教団改革長老教会協議会

日本基督教団 改革長老教会協議会

日本基督教団 改革長老教会協議会（にほんキリストきょうだんかいかくちょうろうきょうかいきょうぎかい）は、日本基督教団に所属する団体で、「改長協（カイチョウキョー）」と略称されます。合同教会である日本基督教団の枠内で、改革派教会および長老派教会が持つ信仰と伝統を大切に守り、次世代へと継承していくことを目的とした協議体、あるいは運動体として位置づけられています。

この協議会は、その基本的な立場として、古代教会の「基本信条」（特にニカイア・コンスタンティノポリス信条）によって告白されている信仰を規範とします。さらに、改革長老教会の伝統を踏まえ、かつて日本基督教会が1890年に定めた「信仰の告白」を失うことのできない信仰遺産として受け継いでいます。そして、日本基督教団の「信仰告白」を承認しつつ教会を形成していくことを、活動の基盤としています。

「改革長老教会」という言葉の意味

日本基督教団改革長老教会協議会において用いられる「改革長老教会」という言葉は、キリスト教プロテスタント諸派の中でも、改革派教会と長老派教会の両方を包括する総称として使われています。

これらの教派は、スイスの宗教改革者ジャン・カルヴァンの思想に連なる改革主義教会という、共通の教派的伝統を持っています。改革主義教会は原則として、教会政治制度に長老制を採用します。歴史的には、改革派教会は主にドイツやオランダなどヨーロッパ大陸で発展した流れを指し、長老派教会はスコットランドを経由して主に英語圏で広まった流れを指すことが多いです。前者は神学的な源流に、後者は教会政治の制度に焦点を当てた呼称ですが、実質的には同系統の教派群であると理解されています。

ただし、「改革長老教会 (Reformed Presbyterian Church)」という全く同じ名称が、歴史的に17世紀スコットランドのカベナンター（Covenanters）に由来する特定の教派を指す場合もあります。こちらは狭義の呼称であり、ウェストミンスター信仰基準に厳格に立ち、礼拝での賛美歌に詩篇歌のみを用い、楽器を使用しないといった特徴を併せ持つ一派です。

日本における改革・長老派の歴史的流れ

日本におけるプロテスタントの伝道は、明治初期の横浜から始まりました。1872年に設立された横浜公会（現・日本キリスト教会横浜海岸教会）には、米国オランダ改革派の宣教師らが関わっており、1874年創立の指路教会（現・日本基督教団横浜指路教会）には米国長老教会の宣教師が深く関わっていました。これらは横浜バンドと呼ばれる初期伝道者たちの重要な拠点でした。

1877年には、日本最初の改革・長老教会教団として日本基督一致教会が設立されます。これは、米国オランダ改革派、米国長老、スコットランド一致長老の各ミッションとその関係教会が集まって成立したもので、ドルト信条やウェストミンスター信仰基準、ハイデルベルク信仰問答といった歴史的な信仰基準を採用していました。しかし、宣教師主導の運営に対する日本人信徒からの不満も存在しました。

その後、日本基督一致教会は他の教派との合同を目指す構想が実現に至らず、1890年に憲法・規則を刷新し、日本基督教会（いわゆる「旧日基」）と改称・再編成されました。この際、それまでの厳格な信仰基準に代わり、より簡易な「日本基督教会信仰の告白」が制定され、広義の改革・長老教会としての道を歩むことになります。この旧日基内部では、簡易告白を支持する日本人牧師らと、ウェストミンスター基準に傾倒する南部長老派ミッション宣教師らとの間で神学的な対立が生じ、後の分裂の伏線となりました。

昭和期に入り戦時体制が進む中で、旧日基は主導的な役割を果たし、1941年に合同教会である日本基督教団が成立するに至ります。これは国家からの圧力に応じた側面と、初期からの教会一致を目指す理想を実現した側面の両方を持つ出来事でした。

戦後、国家の統制から解放されると、日本基督教団からは多くの教派が信仰や方針の自由を求めて離脱しました。旧日基の流れを汲む教会の中からも、保守的な立場で教団の自由主義的神学傾向に反対するグループが1946年に離脱し、日本キリスト改革派教会（RCJ）を設立しました。また、教団の信仰告白未制定や教会制度への不満から、旧日基の自由主義神学的勢力の一部も1951年に離脱し、1890年告白を継承する日本キリスト教会（「新日キ」）を設立しました。

一方、日本基督教団に残留した旧日基の自由主義神学的勢力のうち、教会合同の意義を重視するグループは、教団内で長老制度の運用を模索し、1968年に地域ごとの旧日基系教会が集まって全国連合長老会（連長）を結成しました。彼らは教団の信仰告白を認めつつ、1890年告白も信仰の遺産として受け継ぎ、教団内の長老制的な立場を主張する派閥となっています。

改長協の成立と役割

全国連合長老会が旧日基系教会の一部を組織化したのに対し、1970年代以降のいわゆる「教団紛争」による深刻な教会危機感の中から、さらに広い範囲の旧日基系教会やその関係者の間で、自らの教派的伝統である改革教会の伝統と長老制による教会形成に立ち返ることで、教会の再建を目指そうという機運が高まりました。こうした背景のもと、1985年に発足したのが日本基督教団 改革長老教会協議会（改長協）です。

改長協は、連合長老会のように教会政治組織としての性格を持つというよりは、より多くの教会や個人を巻き込んだ啓蒙的・運動体的な性格を強く持っています。連合長老会に参加するまでには至らないものの、改革・長老派の伝統を大切にしたいと考える教会や牧師、信徒が集まる、緩やかな意識の共有に基づいた組織と言えます。

教派的な特徴

改革長老教会協議会が立つ改革・長老派の伝統は、スイスの宗教改革者であるツヴィングリからブリンガーを経て、ジャン・カルヴァンに至る流れを汲んでいます。その信仰的な核となるのは、「神の主権を第一とする信仰」です。これは一般に予定説と結びつけて理解されることが多いですが、神の主権に対する絶対的な信頼と服従を意味します。この信仰は、後にハイデルベルク信仰問答、ドルト信仰基準、ウェストミンスター信仰基準といった重要な信仰告白文書群に結実していきます。

また、この伝統の重要な特質として、「御言葉によって常に改革される教会」（ Ecclesia semper reformanda secundum Verbum Dei ）というスローガンがあります。これは、教会が聖書の御言葉に照らして常に自らを省み、その時々の歴史的・社会的な状況に応じて必要な信仰告白を新たに生み出していく柔軟性を持つことを意味します。新しい信仰告白の制定は、古いものを否定するのではなく、歴史の中で積み重ねられてきた信仰の遺産を大切にしつつ、準拠すべき告白を増やしていくという形で継承されます。

さらに、改革・長老派の伝統は、聖書全体の重みを大切にする姿勢を持っています。個人の関心や特定の教理に偏らず、聖書の全域から神の御言葉を聞き取ろうとします。このため、教会暦に従って聖句の箇所が割り当てられる「教会暦説教」ではなく、聖書の一書を最初から最後まで順に読み解き、解説していく「講解説教」を重視することが特徴の一つです。これは、特定の教理（例えば信仰義認）に焦点を当て、かつて聖書の一部を軽んじた経緯もあるルター派（ルーテル教会）との対比において、顕著な違いとして挙げられます。

日本における用語の特殊事情

前述のように、「改革長老教会」という言葉には、改革派と長老派の広義の総称と、カベナンター由来の狭義の特定の教派という二つの意味合いが存在します。日本においては、狭義の改革長老教会自体の規模が小さいため、広義の意味での「改革長老教会」を使う際に、狭義の教派との混同が生じることは少ないのが現状です。

むしろ、日本で「改革派」という言葉が使われる際に、前述の日本キリスト改革派教会（RCJ）という有力な教派を指すことが多いため、総称としての「改革長老教会」を用いることで、この「改革派」という言葉を巡る混乱を回避しようとする意図が、改長協など一部の立場に見られます。

狭義の特定の教派を指す際には、「狭義の改革長老教会、いわゆるカベナンター」といった補足的な呼称を用いて区別する工夫がなされています。

このように、日本基督教団 改革長老教会協議会は、改革・長老派が持つ豊かな神学的・歴史的伝統を日本基督教団の中で保持し、聖書に基づいた教会形成を目指す運動体として、その役割を果たしています。

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