有馬義貞

有馬義貞：激動の時代を生きた肥前の領主

有馬義貞（ありま よしさだ）は、戦国時代の肥前国（現在の長崎県）において、島原半島を治めた大名です。彼は、有馬晴純の嫡男として生まれ、後にキリシタン大名として知られる大村純忠を弟に、有馬晴信を子に持ちました。日野江城を拠点とし、肥前有馬氏の12代当主として、激動の時代を生きました。

生涯

大永元年（1521年）に生まれた義貞は、室町幕府12代将軍・足利義晴から偏諱を受け、「義貞」と名乗ります。天文21年（1552年）に父・晴純から家督を譲られ、室町幕府の相伴衆となります。しかし、キリスト教への姿勢の違いから父との間に確執が生じ、また、隣国の大友宗麟や龍造寺隆信といった有力大名の圧迫を受け、さらに父の時代には服従していた西郷氏の台頭もあって、次第に勢力を失い、高来郡一郡を支配する小勢力にまで転落してしまいます。

苦境に立たされながらも、義貞は南蛮貿易に活路を見出し、大きな利益を上げました。当初、父・晴純から、大村純忠のようにポルトガル船との交易のためにキリシタンになることを勧められていました。しかし、布教に伴う内紛が生じると、父の態度は一変します。永禄7年（1564年）には、父によって追放され、家督を剥奪されてしまいます。一説には、前年の龍造寺氏との戦いに敗れたことが追放の原因とも言われています。

追放後、宣教師ルイス・デ・アルメイダの記録によれば、永禄11年（1568年）に、教会から岬へ向かうキリシタンの「償いの行列」を見て、義貞は強い感銘を受けたといいます。これをきっかけにキリスト教に興味を抱きますが、自身の政治的立場や命の危険から、入信をためらっていました。天正元年（1573年）には、弟の大村純忠に対し、命の危険があるから棄教した方が良いと勧めるほどでした。

しかし、ついに天正4年（1576年）4月15日、フランシスコ・カブラル神父から洗礼を受け、キリシタンとなります。洗礼名は「アンドレス（安天烈）」でした。義貞の影響を受け、家臣団の中にもキリシタンになる者が多かったと伝えられています。ルイス・フロイスは、『フロイス日本史』の中で義貞を「詩歌に造詣深く、書道に巧みで、為政者としては老練慎重かつ賢明である」と評しています。

元亀元年（1570年）に嫡男の義純に家督を譲りますが、翌元亀2年（1571年）に義純が急死したため、次男の鎮純（後の有馬晴信）を当主にしました。

天正4年12月27日（1577年1月15日）、義貞は56歳で死去しました。その人柄は優しく、文化人としても知られていました。

参考文献

結城了悟『キリシタンになった大名』聖母の騎士社〈聖母文庫〉、1999年。
外山幹夫『肥前 有馬一族』新人物往来社、1997年。

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