未亡人ごろしの帝王

『未亡人ごろしの帝王』は、1971年に東映東京撮影所によって製作され、東映の配給で公開された日本映画です。

本作のタイトル表記には特記事項があります。一般的にキネマ旬報データベースなどで見られるように、「未亡人殺しの帝王」と漢字が使われることが多いのですが、封切り当時の公式ポスターには平仮名で「未亡人ごろしの帝王」と記されていました。このタイトルは「ごけごろしのていおう」と読まれ、東映のプロデューサーであった岡田茂氏によって命名されました。

この映画は、梅宮辰夫氏が主演を務める通称「帝王シリーズ」の第三弾として位置づけられています。監督については、シリーズ前二作を手がけた斎藤武市氏から、新たに内藤誠氏へと交代しました。映画の内容は、そのタイトルが示す通り、梅宮氏が演じる並外れて精力的な主人公が、多くの後家（未亡人）たちを相手に繰り広げる奔放な行動を描いたものです。

主な出演者

松山浩：梅宮辰夫
金井政雄：山城新伍
吉川銀子：八代万智子
横田源助：中村是好
横田奈々江：星野みどり
田辺甲太郎：ルーキー新一
栗林たか：宮城千賀子
鵜飼もとこ：園佳也子
向井初子：三原葉子
佐々本令子：根岸明美
静間春千代：久里千春
金髪の美女：サリー・メイ
栗林：安部徹
大村：小松方正
大村の手下：団巌
亀山：福山象三
浩の母親：初井言栄
医者：殿山泰司
浩の妹：木村弓美
千成軒のおやじ：遠藤辰雄
奈々江に誘われる酔っ払い：南利明
銭湯の主人 : 由利徹
詐欺師：潮健児

主なスタッフ

監督：内藤誠
脚本：小野竜之助
企画：矢部恒
撮影：山沢義一
美術：北川弘
音楽：小杉太一郎
主題歌：梅宮辰夫「シンボルロック」
録音：宗方弘好
照明：桑名史郎
編集：祖田富美夫
助監督：岡本明久

制作の背景

本作の監督に起用された内藤誠氏は、当時、東映の岡田茂プロデューサーの指示により、手がけていた「不良番長シリーズ」の監督を降板させられた直後でした。岡田氏は内藤氏に対し、「お前はとかくカメラを振り回したり、技巧に走りすぎる。東映ドラマは人間ドラマでいけ」と説教し、「これからはお前にそういう作品を回す」として、この「帝王シリーズ」を担当させたといいます。内藤氏自身は後に、岡田氏が当時の自分の資質を見抜いていたと感じる一方で、社員監督として会社の指示に従う必要があり、「本当はまだ"不良番長"をやりたかったんだけど」と当時の複雑な心境を明かしています。しかし、同時期に活動していた石井輝男氏からは、「”帝王シリーズ”はずいぶん金をかけているみたいで面白いよ」との言葉をもらったそうです。

キャスティングにまつわるエピソード

吉川銀子役で出演した八代万智子氏は、東映ニューフェイスとして梅宮辰夫氏と同期入社でした。実は、梅宮氏が俳優として最初にゴシップの対象となった相手が八代氏だったとされています。この出来事を皮切りに、梅宮氏は多くの女優や銀座のホステスなどと浮名を流し、プレイボーイとしてのイメージを確立していきます。そして、この「帝王シリーズ」への主演が、そのプレイボーイ像を世間に決定的に印象づける役割を果たしました。

公開当時の評価

本作は公開当時、特に『週刊ポスト』誌上で注目を集め、批評の対象となりました。同誌は、「この映画は、つまり梅宮の私生活を描いたものだ」と断じ、当時の日本映画界が「俳優個人の"恥部"を描く"ストリップティーズ時代"になっている」と評しました。かつて映画は虚構を描くものであり、俳優個人の生活とは一線を画していましたが、今や個人生活がそのまま映画となり、その私生活の方すら本人にとっても虚構のように感じられる状況になっていると指摘。これは、映画界の企画力不足、つまり無能ぶりを証明しているにすぎない、とまで論じています。

同時上映作品

本作は、若山富三郎氏が主演し、斎藤武市氏が監督を務めた映画『極悪坊主 飲む打つ買う』と同時に上映されました。

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