本興寺 (尼崎市)

本興寺（ほんこうじ）

兵庫県尼崎市にある法華宗本門流の大本山、本興寺は、その歴史と文化財の豊かさで知られる寺院です。山号はなく、本尊は本門八品上行所伝の南無妙法蓮華経です。

歴史

本興寺の創建は、室町時代の応永27年（1420年）に遡ります。当時、日隆上人が尼崎で布教活動を行っていた際、室町幕府管領で大物城（尼崎古城）主であった細川満元の帰依を受けました。満元は夫人の懐妊と男子誕生の祈願を日隆に依頼し、その祈願が成就したお礼として、満元によって大物（現在の尼崎市大物、東本町）に寺が創建されました。

「両山暦譜」によれば、細川満元が大物の若宮八幡宮の境内地を寄進して着工し、応永30年（1423年）に竣工したとも伝えられています。

享徳3年（1454年）には、寺の境内に勧学院が創設されました。この勧学院は教育機関であり、現在の学校法人法華学園興隆学林専門学校の前身にあたります。法華宗本門流において、本能寺が伝道の中心であったのに対し、本興寺は教学の中心地としての役割を担いました。

慶長2年（1597年）には、三光堂拝殿が豊臣秀吉と加藤清正によって再建されました。

元和3年（1617年）には、戸田氏鉄による尼崎城築城に伴い、寺は現在地に移転しました。

文政5年（1822年）には本堂と祖師堂が焼失しましたが、本堂は文政10年（1827年）に、祖師堂は嘉永4年（1852年）にそれぞれ再建されました。

1914年（大正3年）には、勧学院が光長寺檀林を吸収合併し、本門法華宗学林と改称しました。その後、1941年（昭和16年）に法華宗三派の合併により、本門法華宗学林は法華宗興隆学林と改称しました。同年、学林の教授ら6名が教義綱要の不敬罪で検挙されるという事件（戦時宗教弾圧）も起こりました。

太平洋戦争後、学林は一時枚方市に移転しましたが、1973年（昭和48年）に旧地である本興寺の東隣りに復帰しました。1984年（昭和59年）には学校法人法華学園の認可を得て、1985年（昭和60年）に興隆学林専門学校と称して現在に至ります。

1995年（平成7年）1月17日の阪神・淡路大震災では、方丈（重要文化財）が大きな被害を受けましたが、後に半解体修理が行われました。

本興寺は、天下五剣の一つに数えられる名刀「数珠丸」（重要文化財）を所蔵していることでも知られています。

現在の住職は、134世の小西日遶貫首です。

境内

本興寺の境内には、歴史と文化が息づく様々な建造物があります。

本堂: 文政10年（1827年）に再建されました。
方丈（重要文化財）: 元和3年（1617年）に現在地に再建されました。内部には曾我紹興や大岡春卜、鵬運斎（伝不詳）によって描かれた障壁画が残されています。
庫裏
三重塔
開山堂（重要文化財）: 文庫堂とも呼ばれ、文正元年（1466年）または永正10年（1513年）に旧地に建立されました。永禄元年（1558年）に現在の形に改築され、元和3年（1617年）に現在地に移築されました。明暦2年（1656年）には前面に二間の外陣が追加され、天和3年（1683年）には後方に四間の内々陣と後陣が増築され、複雑な構造となっています。内部には文明元年（1469年）作の木造日隆聖人坐像（重要文化財）が安置されています。
祖師堂: 嘉永4年（1852年）に再建され、日蓮聖人像が安置されています。
鐘楼（兵庫県指定有形文化財）: 寛永10年（1633年）に再建されました。
御霊水井戸: 応永27年（1420年）に日隆聖人によって掘られ、以来水が枯れることがないと言われています。
日隆聖人荼毘所塚
笠塔婆（尼崎市指定有形文化財）
三光堂（重要文化財）: 天正17年（1589年）から慶長14年（1609年）の間に建立され、元和3年（1617年）に現在地に移築されました。三間社流造銅板葺で、三十番神、鬼子母神、三光天子（日天・月天・明星天）などが祀られています。本興寺の鎮守社です。
三光堂拝殿: 慶長2年（1597年）に豊臣秀吉と加藤清正によって再建されました。法華経信徒の守護神が祀られています。
三光堂向唐門（尼崎市指定有形文化財）: 江戸時代前期に建立された一間一戸向唐門です。
山門

また、境内には以下の塔頭があります。

一乗院
恵運院
尭運院 - 鬼子母神を祀っています。
本教院
本成院
養寿院

文化財

本興寺は、数多くの貴重な文化財を所蔵しています。

重要文化財

開山堂 附：棟札 2枚
三光堂
方丈 附：棟札 2枚
木造日隆聖人坐像 - 頭部には和紙に包まれた歯と人間の頭部の骨片が納められています。紙には「おこつ」と記されており、日隆聖人入寂後に像内に納められたと考えられています。
太刀 銘恒次（数珠丸恒次） - 天下五剣の一つ。日蓮聖人が甲斐国身延山へ入山した際に信者から贈られ、数珠を掛けて杖としていたことから「数珠丸」と呼ばれるようになりました。日蓮聖人の守り刀であり、身延山久遠寺に秘蔵されていましたが、一時所在不明となり、1919年（大正8年）頃に尼崎市在住の刀剣鑑定家杉原祥造によって発見され、本興寺に寄進されたと伝えられています。

兵庫県指定有形文化財

鐘楼

尼崎市指定有形文化財

三光堂向唐門
笠塔婆
海北友松筆押絵貼屏風
本興寺文書 49点
流水文銅鐸

所在地とアクセス

所在地: 兵庫県尼崎市開明町3丁目13
アクセス: 阪神電車本線・阪神なんば線 尼崎駅より徒歩約5分。

参考文献

法華宗大本山本興寺『歴史と宝物』
* 尼崎市立地域研究史料館『尼崎地域史事典』 1996年刊 尼崎市発行

本興寺は、その歴史と文化、美しい建造物を通して、訪れる人々に深い感動を与えてくれるでしょう。

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