李奉昌

李奉昌（イ・ボンチャン）とは

李奉昌（り ほうしょう、朝鮮語読み：イ・ポンチャン、1900年8月10日 - 1932年10月10日）は、日本統治下の朝鮮で生まれた独立運動家です。彼は、日本での生活を経て、大韓民国臨時政府のある上海に渡り、韓人愛国団の団員として活動しました。1932年には、昭和天皇の暗殺を試み、桜田門事件を起こしましたが、失敗に終わり、大逆罪で死刑となりました。韓国では、独立運動に貢献した義士として知られています。

生い立ちと青年期

李奉昌は、大韓帝国時代の漢城府龍山で、父李鎮球の次男として生まれました。一説には、先祖代々の土地が鉄道敷設によって収用されたことで家計が困窮し、京城府に出てきたとされていますが、李奉昌本人は、父が建築業や運送業で成功した新興資本家であったと述べています。1915年に文昌学校を卒業後、家計の悪化により進学を断念し、菓子店や薬局で働きました。

1918年、朝鮮総督府鉄道に就職し、転轍手や操車係見習いを務めましたが、外地人労働者と内地人労働者の間の差別により、職を辞めました。この頃、朝鮮半島では三・一運動が起きていましたが、李奉昌は参加せず、青年期には抗日独立運動への関心はなかったとされています。1924年、関節炎が悪化したとの嘘の申告をして退職し、兄と共に大阪へ渡りました。

日本での生活

大阪では、日本人の紹介で姪の李銀任を派遣し、その旅費を得て帰国。その後、日本名「木下昌蔵」を名乗り、職を探しました。ガス会社に就職するも脚気を患い入院。その後、日雇いの沖仲仕など、職を転々としましたが、健康上の問題で定職に就けませんでした。

1928年、即位の礼を見物するため京都に行った際、ハングルと漢文が混ざった手紙を持っていただけで警察に拘束されました。この時、日本人と同じように振る舞っても差別されることに憤慨し、その後の行動のきっかけになったと主張しています。1929年には、集金した代金を使い込み東京に逃亡。その後も職を転々としましたが、いずれも長続きしませんでした。

上海での活動と桜田門事件

1930年、上海に渡った李奉昌は、鉄工所や蓄音機店で働きましたが、満足な収入を得られませんでした。そこで、上海にある大韓民国臨時政府の存在を知り、韓人愛国団に接触します。最初は警戒されましたが、日本語が堪能なことから、金九にスカウトされ、暗殺計画の実行役に選ばれました。

1931年12月、李奉昌は正式に韓人愛国団に入団し、金九から資金と手榴弾を与えられ、日本へ渡りました。1932年1月8日、東京で陸軍始観兵式が行われることを知り、昭和天皇を襲撃することを決意。憲兵曹長の名刺を使い、警備を突破しましたが、手榴弾は天皇の乗る馬車ではなく、その前の馬車に投げつけてしまい、暗殺は失敗。李奉昌は逮捕されました。

その後と評価

1932年9月、李奉昌は大逆罪で死刑判決を受け、同年10月に処刑されました。暗殺は失敗に終わったものの、日本では内閣が総辞職を表明するなど、社会に大きな動揺を与えました。また、この事件は日中関係を悪化させ、第一次上海事変の遠因の一つにもなりました。

戦後、李奉昌の遺骨は韓国に帰還し、国民葬が執り行われました。韓国では、独立三義士の一人として、その功績が讃えられています。1962年には、建国勲章大統領章が追叙され、切手のデザインにも採用されるなど、現在も韓国で広く尊敬されています。

李奉昌の行動は、結果として暗殺を成功させることはできませんでしたが、その強い意志と行動力は、後の独立運動に大きな影響を与えました。彼が残した功績は、今もなお韓国で語り継がれています。

注釈

この文章は、李奉昌の生涯と活動を概説したものであり、彼の行動を美化するものではありません。歴史的事実に基づき、客観的に記述することを心がけました。

参考資料

森川哲郎『朝鮮独立運動暗殺史』三一書房、1976年
李奉昌義士宣言文 - (韓国)国立中央博物館 (日本語)
* 李奉昌義士の「最後の写真」発見 - 中央日報

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