村垣範正

村垣範正：幕末外交を担った旗本

村垣範正（むらがき のりまさ、1813年10月17日-1880年3月15日）は、江戸時代末期の旗本であり、優れた外交官として幕末史に名を刻む人物です。旗本・村垣範行の次男として江戸で生まれ、代々庭番役を務めた家系に育ちました。祖父は要職を歴任した人物で、その家柄と能力により、範正は順調に出世の道を歩みます。

天保2年（1831年）、庭番として幕府に仕え始め、その後、細工頭や賄頭などを経て、安政元年（1854年）には勘定吟味役に抜擢されました。同年から蝦夷地・樺太の巡視を行い、日露国境の確認に携わったことは、彼の能力の高さを示しています。また、同年にはプチャーチン艦隊の来航に際し、露使応接掛として下田に赴任、ロシアとの外交にも関わりました。

その後も、箱館奉行、外国奉行、神奈川奉行などを歴任し、蝦夷地の開発や開拓にも尽力しました。安政3年（1856年）には箱館奉行に昇進、従五位下・淡路守に叙任されています。箱館奉行在任中には、先任の堀利煕とともに蝦夷地の調査、移民の奨励、開拓事業を推進し、アイヌの天然痘対策にも取り組みました。幕府が正式に認めた最初の種痘事業は、彼の要請によるものでした。

安政5年（1858年）には外国奉行に就任し、翌年には神奈川奉行を兼務するなど、その手腕は高く評価されました。

万延元年遣米使節と日普修好通商条約

安政7年（1860年）には、日米修好通商条約批准書交換のため、アメリカ合衆国へ派遣される使節団の副使として渡米しました。太平洋航路を経てサンフランシスコに到着後、ワシントンD.C.で批准書を交換、ブキャナン大統領とも会見を果たしています。帰国後には、詳細な航海日誌を残した功績により、知行高を加増されました。

同年、日普修好通商条約締結交渉では、交渉担当であった堀利煕が急死したため、その任を引き継ぎ、日本側全権として条約締結に貢献しました。

文久元年（1861年）のロシア軍艦[[対馬占領事件]]では、箱館においてロシア領事との交渉を行い、ロシア軍艦の退去を実現させています。箱館港の砲台建設も推進するなど、国防にも尽力しました。

文久3年（1863年）には作事奉行に転じ、その後、西の丸留守居、若年寄支配寄合などを歴任しましたが、明治元年（1868年）に隠居しました。明治維新後も官職には就かず、明治13年（1880年）に東京で亡くなりました。

人物評：対照的な評価

村垣範正の人物像は、評価が分かれています。咸臨丸に乗船した木村喜毅は「機敏にして吏務に練達す」と高く評価していますが、福地源一郎は「純乎たる俗吏」と酷評しています。この対照的な評価は、彼の複雑な人物像を示唆していると言えるでしょう。

村垣範正は、幕末期の激動期において、外交官として、そして行政官として重要な役割を果たした人物です。日米修好通商条約や日普修好通商条約締結への貢献、蝦夷地開発への尽力などは、彼の歴史的功績として高く評価されるべきでしょう。彼の生涯は、幕末日本の近代化への道のりを理解する上で重要な手がかりを提供してくれます。

子孫

彼の直系の子孫には、作曲家の服部逸郎（レイモンド服部）がいます。

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