東俣町 (鹿児島市)

東俣町（ひがしまたちょう）

鹿児島県鹿児島市に位置する東俣町は、旧薩摩国日置郡に属し、郡山郷の一部として歴史を刻んできました。2020年4月1日現在、1,266人の人口と645世帯が暮らすこの町は、面積6.2平方キロメートルと比較的コンパクトながら、豊かな自然と歴史的背景を併せ持っています。

地理

東俣町は鹿児島市の北西部に位置し、甲突川水系の川田川中流域に広がっています。川田川流域には水田が多く見られ、町の南東には三重岳がそびえ立ちます。集落は東西の山麓や山間に点在しており、自然豊かな環境が特徴です。

交通面では、鹿児島県道211号小山田川田蒲生線が南北に、鹿児島県道40号伊集院蒲生溝辺線が東西に走り、地域を結ぶ重要な役割を担っています。周辺地域としては、北に花尾町、南に川田町、東に皆与志町、本名町、西に油須木町、小山田町が隣接しています。町の中央部には東俣幼稚園、南部には東俣郵便局、一之宮神社、そして温泉施設「スパランド裸・楽・良」があります。また、東俣町全域が辺地対策の特別措置法に基づく「東俣辺地」に指定されています。

歴史

東俣の成立

「東俣」という地名は、南北朝時代から見られ、当時は薩摩国満家院の一部で、東俣名（みょうでん）として知られていました。1195年の「加治木氏系図」には、加治木八郎親平が四男業平に東俣などを譲ったと記録されています。その後、加治木氏の没落を経て、税所氏が満家院の郡司を引き継ぎましたが、税所氏の衰退とともに、この地は島津氏の支配下に入りました。

江戸時代の東俣

江戸時代には薩摩国日置郡郡山郷に属し、「天保郷帳」には村高が2,121石余と記録されています。古くは現在の花尾町や柚須木も東俣に含まれていましたが、江戸時代前期から中期にかけて分村し、柚須木村と厚地村が成立しました。この時期に村高が400石余増加した記録も残っています。

また、東俣には藩主の休憩所である御茶屋が設けられ、島津斉宣も利用したとされています。

明治時代の東俣

明治時代に入り、1872年の大区小区制により、東俣村は第2小区となりました。1878年には郡区町村編制法が施行され日置郡の管轄となり、東俣に戸長役場が設置されました。その後、川田村と厚地村の戸長役場を統合し、さらに郡山村の戸長役場に統合されました。1887年には市来警察署伊集院分署の東俣巡査駐在所が設置され、2015年に統合されるまで地域を守っていました。

1889年の町村制施行に伴い、東俣村は周辺の村々と合併し、郡山村の一部となりました。これにより、東俣村は大字「東俣」となりました。

南方小学校を巡る対立と分村騒動

1879年頃、東俣に東俣小学が設置され、後に川田小学を合併しました。1887年には東俣簡易科小学校となり、1892年には厚地簡易科小学校と合併し、南方尋常小学校が設置されました。

大正時代に入り、南方小学校の生徒数増加に伴い、校舎の増築か移転が検討されました。移転候補地を巡り、地域住民の間で対立が激化し、分村騒動にまで発展しました。最終的には、村の有力者である成尾庄之焏の説得により、2校分離となり、1920年に花尾尋常小学校が新設されました。

昭和以後の東俣

1928年頃には製糸工場が設立されましたが、昭和恐慌の影響で1933年に閉鎖されました。1956年には郡山村が町制施行し郡山町となり、東俣は郡山町の大字となりました。1993年からは総合運動公園の建設が始まり、1997年に落成、2000年には温泉施設「スパランド裸・楽・良」がオープンしました。

2004年、郡山町は鹿児島市に編入され、大字東俣は廃止され、新たに鹿児島市の町「東俣町」として設置されました。

文化財

東俣町には、鹿児島市指定の無形民俗文化財である「西上の太鼓踊り」が伝承されています。

人口

1995年以降、国勢調査による人口の推移を見ると、東俣町の人口は変動を続けています。

施設

公共

スパランド裸・楽・良
総合運動場多目的競技場

教育

東俣幼稚園

郵便局

東俣郵便局

寺社

一之宮神社

交通

1877年頃には、吉田往還が整備され、現在の鹿児島県道40号伊集院蒲生溝辺線の一部となっています。1934年には「伊集院蒲生線」として県道に指定され、1993年に主要地方道、翌年に「伊集院蒲生溝辺線」となりました。2003年には東俣バイパスが開通し、交通の便が向上しました。

また、1927年には村道厚地線として、現在の鹿児島県道211号小山田川田蒲生線の一部となる路線の建設が始まりました。

道路

鹿児島県道40号伊集院蒲生溝辺線
鹿児島県道211号小山田川田蒲生線

脚注

参考文献に示された資料を参照