松井太久郎

松井太久郎：激動の時代を駆け抜けた陸軍中将

松井太久郎（まつい たくろう）は、1887年（明治20年）に生まれ、1969年（昭和44年）に没した、大日本帝国陸軍の軍人です。最終階級は陸軍中将。福岡県出身で、農業を営む松井勘太郎の三男としてこの世に生を受けました。

軍人としての歩み

松井は、東筑中学校を経て、1910年（明治43年）に陸軍士官学校（22期）を卒業。同年12月には歩兵少尉に任官し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。その後、1917年（大正6年）には陸軍大学校（29期）を卒業し、着実にステップアップしていきます。

1918年（大正7年）には、第12師団副官としてシベリア出兵に参加。その後も、参謀本部員（支那課）、関東軍司令部附、浦塩派遣軍参謀、朝鮮軍司令部付（ウラジオストク駐在）など、要職を歴任しました。

1937年（昭和12年）11月には陸軍少将に進級。駐蒙兵団司令部付、近衛歩兵第1旅団長などを経て、1940年（昭和15年）8月には陸軍中将となりました。

太平洋戦争においては、第5師団長として北部仏印進駐を指揮。その後、マレー作戦やシンガポール攻略にも従軍しました。さらに、支那派遣軍総司令部付（汪兆銘政府最高軍事顧問）、支那派遣軍総参謀長、第13軍司令官などを歴任し、上海で終戦を迎えることとなります。

戦後と評価

1946年（昭和21年）7月に復員。マレー、シンガポール占領時に、日本軍将兵による多数の華僑虐殺事件が発生し、その責任を問われた将兵や関係者もいましたが、松井自身は戦犯に問われることはありませんでした。


1948年（昭和23年）1月31日には公職追放の仮指定を受けましたが、軍人としての経歴は、激動の時代を駆け抜けた一人の軍人の姿を今に伝えています。

年譜

1908年（明治41年）12月：陸軍士官学校入校
1910年（明治43年）5月28日：陸軍士官学校卒業（第22期）
1910年（明治43年）12月26日：陸軍歩兵少尉
1913年（大正2年）12月9日：陸軍中尉
1914年（大正3年）12月12日：陸軍大学校入校
1917年（大正6年）11月27日：陸軍大学校卒業（第29期）
1919年（大正8年）4月：参謀本部附
1920年（大正9年）2月13日：陸軍大尉・参謀本部支那課員
1921年（大正10年）11月：関東軍司令部附
1922年（大正11年）2月：参謀本部員
1922年（大正11年）6月：浦塩派遣軍参謀
1922年（大正11年）10月：朝鮮軍司令部附
1924年（大正13年）6月：参謀本部附
1925年（大正14年）1月：参謀本部員
1925年（大正14年）5月1日：朝鮮軍参謀
1925年（大正14年）8月7日：陸軍少佐
1927年（昭和2年）7月26日：参謀本部員
1929年（昭和4年）8月1日：陸軍中佐
1930年（昭和5年）8月1日：陸軍技術本部附
1931年（昭和6年）9月：関東軍司令部附
1931年（昭和6年）10月5日：関東軍第4課長
1932年（昭和7年）2月17日：陸軍技術本部附
1932年（昭和7年）4月11日：近衛歩兵第2連隊附
1933年（昭和8年）8月1日：陸軍歩兵大佐・大阪連隊区司令官
1935年（昭和10年）1月21日：独立歩兵第12連隊長
1935年（昭和10年）1月22日：第4師団司令部附
1936年（昭和11年）12月3日：支那駐屯軍司令部附（北平特務機関長）
1937年（昭和12年）8月31日：北支那方面軍司令部附
1937年（昭和12年）9月14日：関東軍司令部附（張家口特務機関長）
1937年（昭和12年）11月1日：陸軍少将
1938年（昭和13年）6月10日：近衛歩兵第1旅団長
1939年（昭和14年）8月1日：関東軍司令部附（満洲国最高軍事顧問）
1940年（昭和15年）8月1日：陸軍中将
1940年（昭和15年）10月15日：第5師団長
1942年（昭和17年）5月11日：支那派遣軍総司令部附（南京政府最高軍事顧問）
1943年（昭和18年）3月18日：支那派遣軍総参謀長
1945年（昭和20年）2月1日：第13軍司令官
1946年（昭和21年）7月：復員
1948年（昭和23年）1月31日：公職追放の仮指定を受ける

栄典

1911年（明治44年）3月10日：正八位
1914年（大正3年）2月10日：従七位
1919年（大正8年）3月20日：正七位
1924年（大正13年）5月15日：従六位
1937年（昭和12年）1[[2月1日]]：正五位

外国勲章佩用允許

1943年（昭和18年）7月14日：中華民国：特級同光勲章

親族

妻：松井幸子（高橋直武（陸軍少将）の娘）

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
* 外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。

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