松平忠房 (島原藩主)

松平忠房：激動の時代を駆け抜けた名君

松平忠房（まつだいら ただふさ）は、江戸時代前期に活躍した大名であり、三河国吉田藩の第2代藩主を務めました。その後、三河刈谷藩主、丹波国福知山藩主を経て、肥前国島原藩の初代藩主となりました。彼は、「家忠日記」で有名な松平家忠の嫡孫であり、深溝松平家の6代目当主にあたります。

生涯

元和5年（1619年）2月12日、忠房は吉田藩初代藩主・松平忠利の長男として吉田城で誕生しました。寛永9年（1632年）に父が死去したため家督を継ぎましたが、同年8月12日に三河刈谷へ移封されました。同年12月には従五位下・主殿頭に叙位・任官しています。

慶安2年（1649年）2月18日、忠房は丹波天田郡・何鹿郡などに1万5000石を加増され、4万5000石で丹波福知山へ加増移封されました。寛文6年（1666年）には、丹後国宮津藩3代藩主・京極高国が改易された際、宮津城の受け取り役を務めています。

寛文9年（1669年）6月8日、忠房は2万3000石を加増され、6万5900石で肥前島原へ加増移封されました。島原藩では、藩政確立のために積極的な藩政改革を推し進めました。諸行政機関の設置を始め、寛文11年（1671年）には宗門改めを行って寺社政策に尽力しました。延宝7年（1679年）には検地を実施し、検見制を税率として定める一方で、減税政策なども行い、農民経営の安定化に努めました。また、文学を奨励し、忠房自身も多くの書物を収集しました。これらの書物は、現在では松平文庫として所蔵されており、忠房自身も「尚舎源忠房」という蔵書印を用いていました。

寛文12年（1672年）7月には、天草郡1300石を預かり地として与えられました。これは、忠房に長崎奉行の監督並びに長崎警備・西国大名の監視を命じるものでもありました。このように幕府から重用された忠房は、天和3年（1683年）12月には従四位下に昇叙されています。

しかし、忠房の長男・好房は早世し、次男・忠倫は暗愚であったため廃嫡となり、後継者に恵まれませんでした。そのため、養子に松平伊行の次男・忠雄を迎え、元禄11年（1698年）4月18日に家督を譲って隠居しました。元禄13年（1700年）10月1日に死去しました。享年82歳でした。

系譜

父母
松平忠利（父）
松平家清の娘（母）
正室
永春院殿 ー 鍋島勝茂の娘
側室
石丸定次の娘
子女
松平好房（長男）
松平忠倫（次男）
養子
松平忠雄 ー 松平伊行の次男

松平記写本

豊橋市図書館に所蔵されている『松平記』の忠房写本が、令和5年（2023年）現在で最古の写本であることが判明しました。その記述には、他の写本とは大きく異なる部分があり、徳川家康以前の松平家の歴史についての解明が進むことが期待されています。この写本には、忠房が自己の系図と組み合わせて検討したと見られる記述や、大久保忠教の三河物語を参考にして比較検討したと思われる記述も見られます。

松平忠房は、激動の時代を生き抜き、藩政の安定化に努め、文化の発展にも貢献しました。彼の功績は、今もなお語り継がれています。

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