林邑楽

林邑楽とは

林邑楽（りんゆうがく）は、ベトナムから日本に伝わってきた雅楽の一種で、その独特な音楽と舞いは、歴史的背景を持つ旅の結晶です。ベトナム中南部に存在したチャンパ王国に由来し、2世紀末から8世紀にかけて表記された「林邑」という名称は、中国の書物において用いられました。この呼称は、後漢の時代に南方から独立したことによるもので、「象林邑」と呼ばれることもありましたが、省略形が一般化しました。

伝来の経緯

林邑楽が日本に伝わったのは、天平8年（736年）とされており、当時の僧侶である仏哲が菩提僊那や道璿らとともに来日し、この音楽を紹介しました。彼は大安寺の僧たちに訪れ、自国特有の「菩薩儛幷部侶・抜頭等儛」の演奏を教えました。特に天平勝宝4年（752年）に行われた大仏開眼供養会で林邑楽が演奏されたことで、その後も注目を集めました。

また、天平宝字7年（763年）には渤海使の饗応の際に演奏され、その背景には、当時の朝廷が安史の乱に関する情報を受け取っていたことが記録されています。天平神護3年（767年）には、称徳天皇が山階寺を訪れ、林邑楽と共に呉の楽を楽しむ場面がありました。こうした演奏は、日本の宮廷文化に林邑楽が深く絡んでいたことを示しています。

地位の変遷

大同4年（809年）には、雅楽寮に初めて林邑楽に関する楽師が2名置かれ、承和11年（844年）には仁明天皇が初めて林邑楽を目にしたという記録が残っています。しかし、時を経るうちに林邑楽は左方唐楽に吸収されることとなり、その独自性は薄れていきました。

曲目と特性

林邑楽には、「抜頭」（ばとう）や「陪臚」（ばいろ）、さらには「迦陵頻」（かりょうびん）などの有名な楽曲が存在し、これらを含む8曲は「林邑八楽」として知られています。これらの楽曲は、日本の雅楽の一部として演奏され続け、独特の風情とリズムが聴く者の心を捉えます。

参考文献

この歴史ある音楽形式の詳細をさらに深く知りたい方は、以下の文献を参考にすると良いでしょう。

• - 『続日本紀』3（新日本古典文学大系14、岩波書店、1992年）
• - 『続日本紀』全現代語訳（中、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1992年）
• - 『続日本後紀』全現代語訳（下、講談社学術文庫、森田悌：訳、2010年）
• - 『岩波日本史辞典』（監修：永原慶二、岩波書店、1999年）
• - 『角川第二版日本史辞典』（高柳光寿・竹内理三：編、角川書店、1966年）

史実が織りなす林邑楽の魅力は、今もなお多くの人々に受け継がれる重要な文化遺産となっています。

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