枚聞神社

枚聞神社（ひらききじんじゃ）

枚聞神社は、鹿児島県指宿市開聞十町に鎮座する神社で、古くから薩摩国一宮として崇められてきました。式内社であり、現在は神社本庁の別表神社となっています。

祭神

主祭神は、大日孁貴命（おおひるめのむちのみこと）です。配祀神として、五男三女神が祀られています。また、明治時代以降は近隣の神社を合祀しており、祭神については海神（わたつみのかみ）説、猿田彦神、国常立尊、大宮姫など、様々な説があります。

歴史

創建年代は社伝によると神代とされていますが、神社の縁起には和銅元年（708年）の創建と記されています。元々は開聞岳を神体とする山岳信仰に根ざした神社であり、当初は開聞岳の南麓に鎮座していましたが、貞観年間の噴火により揖宿神社付近に一時避難し、その後、北麓の現在の場所に移されたと伝えられています。

信頼できる史料での初出は、『日本三代実録』の貞観2年（860年）3月20日の記述で、この日に薩摩国従五位上開聞神が従四位下を加えられたとされています。その後、開聞神は貞観8年（866年）に従四位上、元慶6年（882年）に正四位下を授けられました。

延長5年（927年）の『延喜式神名帳』には「薩摩国穎娃郡 枚聞神社」として記載され、式内社に列しています。大正14年8月の「枚聞祭神調書」によれば、後鳥羽天皇の文治の頃から後陽成天皇の慶長4年までは、和田都美神社と称されていたと伝えられています。当時の祭神は和田都美神であったと考えられ、「神名帳頭注」（1503年）にも和田都美神と記されています。「一宮記」には「和田都美神社、枚聞神と号し」とあり、祭神を塩土老翁猿田彦神としています。「三国名勝図会」と「神社撰集」では共に猿田彦神としており、明治維新の「廃寺方被仰渡」では国常立尊、大日孁貴、猿田彦大神の三座を祭神としています。他にも、豊玉姫、木花開耶媛、大宮姫など、祭神については古来より諸説があります。

鎌倉時代以降は、新田神社（薩摩川内市）と薩摩国一宮の地位を巡って激しい争いを繰り広げました。戦国時代には、島津氏の有力家臣であった頴娃氏の庇護下にありましたが、元亀2年（1571年）に「証恩寺崩れ」と呼ばれるお家騒動が起こり、その巻き添えとなって社殿を失いました。しかし、すぐに島津氏の庇護を受けて再興し、同氏は当神社の籤により作戦を決めたと伝えられています。現在の社殿は、慶長15年（1610年）に島津義弘が寄進したものを、天明7年（1787年）に島津重豪が改築したものです。

外洋に面した立地から、古くから「航海神」としても崇められ、江戸時代以降は琉球からの使節の崇敬も集めました。しかし江戸時代には、宇佐八幡宮の五社別宮とされていた新田神社の方が次第に重く扱われるようになり、明治4年（1871年）に国幣小社に列したものの、新田神社は同18年（1885年）に上位の国幣中社に列しています。

第二次世界大戦後に近代社格制度が廃止されると、当社は神社本庁に参加し、その別表神社に定められました。

清所と玉の井

本殿の裏には、木製の柵で囲まれた「清所」と呼ばれる場所があります。ここは大小の石が敷き詰められた場所で、豊玉姫の御陵であるとも言われています。

また、近くには豊玉姫と彦火々出見尊が出会ったとされる「玉の井」があり、日本最古の井戸とも言われています。『古事記』や『日本書紀』にもその記述が見られます。さらに、彦火々出見尊と豊玉姫が結婚後に住んだとされる「婿入谷」という場所も存在します。

神階

貞観2年（860年）3月20日：従五位上から従四位下 （『日本三代実録』）
貞観8年（866年）4月7日：従四位上　（『日本三代実録』）
元慶6年（882年）10月9日：正四位下　（『日本三代実録』）

境内

本殿は、方3間の入母屋造妻入で、屋根は銅板葺、千木・鰹木が置かれています。正面には縋破風で1間の向拝が付けられており、平成2年（1990年）3月23日に鹿児島県の有形文化財に指定されました。

参道から本殿を望むと、本来は本殿の屋根の上に開聞岳が見える構造になっていますが、現在は背後の樹木が繁茂して見通すことは難しくなっています。

主な祭事

神幸祭 （10月16日）

文化財

重要文化財（国指定）

松梅蒔絵櫛笥（内容品・目録共）：松と梅の蒔絵で飾られた女性用の化粧用具箱。昭和2年（1[[927年]]）4月25日に古社寺保存法に基づく国宝（旧国宝、現行法の重要文化財に相当）に指定されました。

鹿児島県指定有形文化財

本殿

指宿市指定有形文化財

琉球扁額7点：平成22年1月6日指定

現地情報

所在地：鹿児島県指宿市開聞十町1366
交通アクセス：最寄駅はJR九州指宿枕崎線 開聞駅（徒歩約12分）

参考文献

黒板勝美編『日本三代実録』前後編、新訂増補国史大系普及版、吉川弘文館。初版1934年、普及版1971年。
『角川日本地名大辞典４６鹿児島県』、角川書店、昭和58年

関連図書

安津素彦・梅田義彦編集兼監修者『神道辞典』神社新報社、1968年、50頁
白井永二・土岐昌訓編集『神社辞典』東京堂出版、1979年、293-294頁

関連項目

新田神社 （薩摩川内市）：薩摩国一宮を称するもう1つの神社

外部リンク

枚聞神社 - 鹿児島県神社庁
枚聞神社 ～ひらききじんじゃ～ - いぶすき観光ネット（指宿市観光協会）
* 枚聞神社・宝物殿 - 國學院大學大学院 高度博物館学教育プログラム

もう一度検索