栄山寺

栄山寺（えいさんじ）

栄山寺は、奈良県五條市にある真言宗豊山派の寺院で、山号は学晶山と称します。本尊は薬師如来で、奈良時代の建築様式を今に伝える国宝の八角堂があることで広く知られています。

歴史

栄山寺のある五條市周辺は、古代には阿陀郷と呼ばれ、『万葉集』にもその名が登場するほど古くから開けた地でした。創建は養老3年（719年）と伝えられ、藤原不比等の長男である武智麻呂によって前山寺として建立されました。現存する八角堂は、武智麻呂の菩提を弔うため、子の仲麻呂によって建立されたとされています。正倉院文書にも八角堂建立を示す記述があり、天平宝字年間にはその存在が確認できます。

その後、寺名を栄山寺と改め、興福寺の末寺として藤原南家の菩提寺となり、鎌倉時代まで繁栄しました。南北朝時代には、後村上天皇らの行在所が置かれ、その跡地は国の史跡に指定されています。また、役小角の修行地とも伝えられ、修験道とも関係が深い寺院です。

戦国時代末期には堂宇の多くが焼失しましたが、江戸時代にかけて本堂などが再建されました。江戸時代初期には一時衰退しましたが、泉涌寺雲龍院、護国寺の末寺となり復興。現在は梅室院のみが塔頭として残っています。

境内

本堂
天文22年（1553年）に再建されたもので、金堂または薬師堂とも呼ばれます。本尊の木造薬師如来坐像（重要文化財）や脇侍の日光菩薩、月光菩薩などが安置されています。奥には資料室も併設されています。
石灯籠（重要文化財）
弘安7年（1284年）の銘がある石灯籠で、栄山寺型灯籠と呼ばれ、創建当初の姿をよく残しています。
御霊神社
八角堂（国宝）
天平宝字4年から8年（760年 - 764年）に建立されたと推定される、本瓦葺の八角形の建物です。藤原武智麻呂の菩提を弔うために子の仲麻呂が建立したと伝えられています。平城京および斑鳩以外の地区にある奈良時代の建築として非常に貴重で、建立年次がほぼ特定できる点でも重要です。内部は四角形ですが、周囲に立つ八角柱が特徴的です。屋根は修理の際に瓦葺きに復元されました。内部の柱や飛貫には、奈良時代の彩色絵画が残されており、建物とは別に「絵画」として重要文化財に指定されています。
栄山寺行宮跡（国指定史跡）
南北朝時代の天皇行在所跡。
塔ノ堂（大日堂）
大日如来像を安置。
七重石塔（重要文化財）
平安時代後期の作で、凝灰岩製の古い石造塔です。
鐘楼
梵鐘は国宝に指定されています。
山門
庫裏
梅室院
塔頭。

文化財

国宝
八角堂 附：旧石露盤残欠（宝珠）1箇
梵鐘 - 延喜17年（917年）の製作で、「平安三絶の鐘」として知られています。
重要文化財
石造七重塔
木造薬師如来坐像
木造十二神将立像 12躯
八角堂内陣装飾画
石灯籠
国指定史跡
栄山寺行宮跡
奈良県指定有形文化財
絹本著色藤原武智麿像
栄山寺文書 107点

所在地・アクセス

所在地：奈良県五條市小島町503
アクセス：JR五条駅・五條バスセンターから奈良交通バスで「栄山寺前」下車すぐ（便数少）。または「栄山寺口」下車、徒歩約10分。
拝観料：500円（高校生以上）

栄山寺は、その長い歴史と貴重な文化財によって、訪れる人々に深い感動を与えてくれるでしょう。

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