楼玄

楼玄（ろう げん）

楼玄（生没年不詳）は、中国三国時代の呉に仕えた政治家です。字は承先といい、豫州沛郡蘄県（現在の安徽省宿州市一帯）の出身です。子に楼拠がいます。

生涯

楼玄は、孫休の時代に監農御史という役職に就き、農業政策を監督しました。孫晧の時代になると、王蕃・万彧・郭逴らと共に散騎中常侍に任じられ、皇帝側近として仕えました。その後、会稽太守を経て、財政を司る大司農にまで昇進しました。

万彧と孫晧は、禁中の責任者として信頼できる人物を探しており、楼玄こそが適任であると考えました。そこで楼玄は、宮下鎮・禁中侯として、宮中の諸事を任されることになりました。楼玄は、威厳を保ち、礼儀作法を重んじましたが、その一方で、歯に衣着せぬ物言いをすることも多く、孫晧の意にそぐわないことも度々ありました。

やがて、楼玄は賀邵と共に国政を批判しているという讒言を受け、責任を問われ広州へ追放されてしまいます。華覈が楼玄のために弁護しましたが、孫晧は楼玄を許さず、彼を子と共に辺境の地である交州へ移住させました。さらに、張奕という身分の低い武将の指揮下に置き、辱めようとしました。そして、張奕に密かに楼玄を殺害するよう命じました。

しかし、張奕は礼儀正しい楼玄の態度に敬意を抱き、殺害することをためらいました。その後、張奕が急死し、楼玄は彼の遺品の中から孫晧の密命を発見しました。絶望した楼玄は、ついに自害してしまいました。

天冊元年（275年）、孫晧は賀邵の一族を誅殺し、その家族を臨川郡へ強制移住させました。この時、孫晧は楼玄の子と孫も殺害するよう命じたとされています。

評価

陸凱は、建衡元年（269年）に亡くなる直前、国の支えとなる人物の一人として楼玄の名を挙げました。また、陸機も『弁亡論』の中で、呉末期の健全であった時期の政治を支えた人物の一人として、楼玄を評価しています。

薛瑩は楼玄を「節操があり、自ら才能を伸ばした人物」として、王蕃・賀邵・韋昭と並ぶ人物として高く評価しました。胡沖も、韋昭を除く三名について、甲乙付け難いとしながらも「敢えて述べるならば楼玄が最も優れていた」と評しています。

陳寿は、薛瑩や胡沖の評価を踏まえつつも「乱れた政治の時代に高官にあったのだから、非業の死を遂げたのも仕方のない事であった」と評しています。

三国志演義

小説『三国志演義』では、孫晧の悪政を諌めて処刑される人物の一人として、楼玄の名が登場します。

参考文献

* 陳寿、裴松之注『正史 三国志』、井波律子・今鷹真・小南一郎 訳・解説（ちくま学芸文庫全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。

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