韋昭

韋昭（い しょう）

韋昭は、中国三国時代の呉に仕えた政治家、儒学者、歴史家であり、字は弘嗣（こうし）。揚州呉郡雲陽県の出身です。子に韋隆がいます。

生涯

当初、丞相府の役人としてキャリアをスタートさせ、西安県令、尚書郎を歴任。その後、太子中庶子に昇進し、皇太子であった孫和に仕えました。この頃、孫和の命により、博奕（すごろくや囲碁）を批判する『博奕論』を著しています。

孫亮が即位すると、諸葛恪の推薦で太史令に任命され、華覈や薛瑩らと共に『呉書』の編纂に携わりました。孫休の時代には、盛沖と共に侍講への就任を望まれましたが、政治を専断していた側近の張布によって阻まれました。

孫晧の時代には、当初は寵愛を受け、高陵亭侯、侍中、左国史に任じられました。しかし、正論を述べることが多く、孫晧の意に沿わない言動が重なったため、次第に冷遇されるようになりました。

『呉書』において孫晧の父である孫和の本紀を立てるよう命じられた際、太子で終わった孫和には伝を立てるべきと回答し、これを拒否したことが、冷遇されるようになった一例として挙げられます。

憂いと病気を理由に辞任を願い出ましたが、孫晧は医者と薬を送り、任務の続行を命じました。また、酒が苦手であった韋昭に対し、酒好きの孫晧は飲酒を強要しました。さらに、孫晧は側近を酒宴に同席させ、群臣の欠点を議論することを好んで要求しましたが、韋昭はこの風潮に同調しませんでした。

鳳凰2年（273年）に投獄され、『官職訓』・『弁釈名』を献上して赦免を請いました。華覈も「韋昭は『呉書』を完成させるために不可欠な人材である」と助命嘆願を繰り返しましたが、最終的に処刑されました。家族は零陵に配流されました。

華覈の嘆願文中で「年七十になり」と述べられていることから、享年は70歳以上と推定されています。

業績

韋昭は、数多くの著作を残しました。

『毛詩答雑問』
『孝経解賛』
『弁釈名』
『呉書』
『洞記』
『漢官典職儀式選用』
『国語注』

中でも『国語注』は現存しており、春秋外伝である『国語』の注釈として重要な書物です。また、唐代に成立した正史『宋書』の「楽志」には、歴代王朝の兵士の士気高揚と慰安を目的とした軍楽である鼓吹曲が収録されており、その中に韋昭作の曲が12篇含まれています。

『呉書』について

韋昭らが執筆した『呉書』は、陳寿が書いた『三国志』の参考資料の一つとして重要な価値を持ちます。『三国志』の呉志は、韋昭らの『呉書』に基づいて編集されたと推測されています。

しかし、『呉書』は編纂者たちの相次ぐ処刑や呉の滅亡などにより、完成には至らなかったようです。そのため、陳寿の『三国志』呉志では、列伝の一部が途切れていたり、重要人物の列伝が立てられていなかったりする箇所が見られます。呉の初代丞相であった孫邵の列伝が存在しないのは、韋昭が孫邵と敵対する派閥に属していたため、意図的に記述を避けたという説もあります。

三国志演義

小説『三国志演義』には登場しません。

登場作品

『三国志博奕伝』（文春文庫）：韋昭が主人公の小説。

参考文献

* 陳寿、裴松之注『正史 三国志』、井波律子・今鷹真・小南一郎 訳・解説（ちくま学芸文庫全8巻、1992 - 93年）、※呉書は6・7・8巻、小南一郎訳。

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