樋脇町倉野

樋脇町倉野の概要

樋脇町倉野（ひわきちょうくらの）は、鹿児島県薩摩川内市に位置する大字です。旧薩摩国薩摩郡に属し、長い歴史を持つ地域です。人口は165人、世帯数は88世帯（2020年10月1日現在）と小規模ながらも、地域独特の文化と歴史を今に伝えています。特筆すべきは、世界で唯一現存する「オーンク」と呼ばれる仏種子梵字が刻まれた倉野磨崖仏です。

地理

薩摩川内市のほぼ中央部、川内川の中流域に位置し、周辺には東郷町南瀬、さつま町、入来町などが隣接しています。地形的には、鮮新世後期の角礫岩からなる丘陵と、その上部に川内玄武岩が乗る台地で構成されています。この地で採れる「倉野石」は、加工しやすい軽石片を多く含むことから、門柱などに利用されています。

主要な河川としては川内川と倉野川が流れ、小毛野岡などの山岳も点在します。これらの自然環境が、地域の歴史と文化を育んできたと言えるでしょう。

歴史

古代

倉野の地には古代より人が住み着いており、川内川南岸の丘陵には倉野城が築かれ、隼人の砦があったとされています。奈良時代には大伴旅人の軍が隼人の反乱鎮圧のために倉野に上陸し、その地は倉野渡瀬と呼ばれるようになりました。その後、倉野は川内川の水運の要地となり、薩摩国の国府が置かれた川内との間で水運交通が盛んに行われていました。また、平安時代には倉野に倉院が設置され、入来院の貢物が収納されていました。

中世

鎌倉時代に入ると、倉野は薩摩国入来院の一部となり、「くらのの村」として記録されています。当時の総田数は21町20代でした。この地は、渋谷氏（後の入来院氏）が地頭として治めるようになり、その子孫が倉野氏を称しました。倉野城は倉野氏の居城となり、南には瑞泉庵が建てられ、鎌倉時代末期には倉野磨崖仏が彫られました。戦国時代には島津氏の直轄領となりました。

近代

江戸時代には、薩摩藩の樋脇郷に属し、村高は時代によって変化しました。文禄年間以降は島津氏の直轄領でしたが、一時的に入来院重高の領地になった後、再び薩摩藩の直轄領となりました。明治時代には廃藩置県により鹿児島県に属することとなり、1889年の町村制施行により樋脇村の大字「倉野」となりました。その後、樋脇村は樋脇町となり、2004年には薩摩川内市の一部となりました。この際、大字名は「樋脇町倉野」と改称されました。

文化財

倉野には数多くの文化財が残されています。特に有名なのは、倉野磨崖仏で、世界で唯一現存する「オーンク」の仏種子梵字が刻まれています。また、倉野六地蔵塔、木下逆修塔群、笹嶺馬頭観音、下岩戸のかくれ念仏、倉野殿墓なども指定されています。倉野太鼓踊は無形民俗文化財として、地域の人々に大切に守り伝えられています。

施設

倉野には、地域住民の交流拠点である倉野地区コミュニティセンターや、地域を支える倉野簡易郵便局があります。また、諏訪神社、稲穂神社などの寺社も地域住民の信仰を集めています。

教育

かつては「薩摩川内市立倉野小学校」がありましたが、児童数の減少により2010年に廃校となり、樋脇小学校に統合されました。倉野の児童は、現在、樋脇小学校や中学校に通学しています。

交通

地域の主要道路としては、鹿児島県道346号山田入来線と鹿児島県道394号山崎川内線が挙げられます。これらの道路は地域住民の生活を支え、地域間を結ぶ重要な役割を担っています。特に、倉野橋は川内川を渡る重要な橋梁であり、地域住民の生活に不可欠なインフラとなっています。

まとめ

樋脇町倉野は、豊かな自然と歴史、文化が調和した魅力的な地域です。古代から中世、近代へと続く歴史の中で、多くの文化財が残されており、地域の人々によって大切に守り伝えられています。倉野磨崖仏をはじめとする数々の文化財は、訪れる人々に深い感動を与え、この地の歴史と文化を語り継いでいます。

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