武士道 (新渡戸稲造)

武士道

『武士道』（Bushido: The Soul of Japan）は、新渡戸稲造によって1899年に著された書籍であり、日本の武士道精神を欧米に紹介することを目的としています。新渡戸稲造自身が英語で執筆し、アメリカで出版されました。本書は、日本人の道徳観の根幹をなす「武士道」について、西洋の哲学と比較しながら、その精神的な支柱を解説したもので、彼の代表作の一つとされています。

概要

新渡戸稲造は、思想家・教育者として知られており、本書では、武士道という概念を通じて、日本人の心の拠り所を世界に向けて説明しました。内村鑑三の『代表的日本人』、岡倉天心の『茶の本』と並び、明治期に日本人が英語で著した重要な著作として位置づけられています。執筆は、カリフォルニア州モントレーで行われました。

日本では、1900年に裳華房から翻刻版が出版され、15,000部が売れたとされています。1908年には櫻井鴎村によって日本語に翻訳され、1938年には岩波書店から矢内原忠雄による翻訳が出版され、これが現在の定本となっています。

しかし、本書の内容に対しては、批判的な意見も存在します。井上哲次郎は、天皇へのキリスト教徒の不敬を弾劾し、バジル・ホール・チェンバレンは『君が代』と『古事記』を英訳した人物であり、皇室学者の津田左右吉らは、「新渡戸の『武士道』が誤った日本像を海外に広め、あるべき概念を混乱させている」と批判しました。

各章の構成

本書は、以下の17章で構成されています。

1. 道徳の体系としての武士道
2. 武士道の淵源
3. 義または正義
4. 勇気、敢為堅忍の精神
5. 仁、側隠の心
6. 礼儀
7. 正直と誠実の心
8. 名誉
9. 忠義
10. 侍と教育と訓練
11. 克己
12. 自害と敵討ち
13. 刀・侍の魂
14. 女性の訓練と地位
15. 武士道の感化
16. 武士道はなお生きているか？
17. 武士道の将来

書籍情報

原文

Bushido: The Soul of Japan. Inazo Nitobe. Kodansha International. (2002). ISBN 978-4-7700-2731-3

日本語訳

『武士道』櫻井鴎村訳、丁未出版社、1908年（明治41年）
『明治文学全集 88 明治宗教文学集（二）』筑摩書房、1975年 - 新渡戸稲造篇に櫻井鴎村訳『武士道』を収録。
『武士道』矢内原忠雄訳、岩波書店、2007年（原著1938年）
『武士道』矢内原忠雄訳、岩波書店〈ワイド版岩波文庫 35〉、1991年
『武士道　現代語で読む最高の名著』奈良本辰也訳・解説、三笠書房、1993年
『いま、拠って立つべき日本の精神 武士道』岬龍一郎訳、PHP研究所、2005年
『武士道　現代語訳』、山本博文訳・解説、筑摩書房〈ちくま新書〉、2010年
『新訳武士道　ビギナーズ日本の思想』、大久保喬樹訳、角川ソフィア文庫、2015年

関連項目

葉隠

外部リンク

Bushido: the soul of Japan (Revised and enlarged 13th Eiton, 1908) - プロジェクト・グーテンベルク
『武士道（新渡戸稲造の著作）』 - コトバンク

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