武英智

武英智：名門武家の血を受け継ぐ調教師の軌跡

武英智（たけひでのり）は、日本中央競馬会（JRA）所属の調教師であり、元騎手である。1980年生まれ。父は元騎手・調教助手の武永祥、祖父は元調教師の武平三という、まさに競馬界のサラブレッドと言える家系に生まれた。さらに、元調教師である武宏平を伯父、元調教師作田誠二を義理の叔父に持ち、元調教師の武邦彦は叔従父にあたる。そして、誰もが知る名騎手、武豊と武幸四郎兄弟とは再従兄弟という関係性にある。

華麗なる家系に生まれた武英智だが、そのキャリアは決して平坦なものではなかった。1996年、競馬学校に入学し、北村宏司、高田潤、二本柳壮らと共に15期生として研鑽を積んだ。1999年、栗東の領家政蔵厩舎から騎手としてデビューを果たす。地方競馬の高知競馬で初騎乗という異例の形でデビューし、その後中央競馬でも活躍を見せる。デビューイヤーには22勝を挙げ、中央競馬関西放送記者クラブ賞（新人騎手賞）を受賞するなど、華々しいスタートを切った。

しかし、3年目以降は勝ち星が減少。それでも、2007年にはオープン特別競走であるすずらん賞を制覇するなど、持ち前の実力を見せる場面もあった。2008年には、札幌の新馬戦で武英智騎乗のナムラカイシュウが1着、武豊騎乗のジョーカプチーノが2着という武家ワンツーフィニッシュを演出。兄弟子とも言うべき武豊との競演は、競馬ファンを魅了した。

しかし、武英智のキャリアに大きな影を落とす出来事が起こる。指定難病であるサルコイドーシスを発症。何度も手術を受けるも完治せず、2012年9月30日、騎手を引退せざるを得ない状況に追い込まれた。その後は、木原一良厩舎で調教助手として経験を積み重ねる。

そして、新たな挑戦が始まる。2016年12月8日、JRAより2017年度調教師試験合格が発表された。再従兄弟である武幸四郎も同時に合格しており、2017年は武家から2人の調教師が誕生するという歴史的な年となった。2017年3月1日に調教師免許を取得し、技術調教師として活動した後、2018年3月1日に厩舎を開業。

調教師となってからも、武英智の歩みは順風満帆ではなかった。しかし、2020年9月6日、管理馬メイケイエールが武豊騎乗で小倉2歳ステークスを制し、ついに騎手時代から夢見ていた重賞初勝利を掴み取る。そして、2024年2月18日、管理馬ペプチドナイルがフェブラリーステークスを制し、念願のGI競走初制覇を達成した。

武英智は、数々の困難を乗り越え、騎手として、調教助手として、そして調教師として、競馬界で活躍してきた。そのキャリアは、まさに「努力」と「信念」の物語であると言えるだろう。名門武家の血を受け継ぎながらも、自身の力で道を切り開いてきた武英智の今後の活躍にも期待がかかる。

主要騎乗馬

ハギノハイグレイド（2勝）
タッチオブゴールド（3勝、ゴールドアグリの母）
メルシーエイタイム（1勝、中山大障害2着）

主要管理馬

メイケイエール（小倉2歳ステークス、ファンタジーステークス、チューリップ賞、シルクロードステークス、京王杯スプリングカップ、セントウルステークス）
ジューンベロシティ（東京ジャンプステークス、阪神ジャンプステークス、東京ハイジャンプ）
ペプチドナイル（フェブラリーステークス）
* ジューンテイク（京都新聞杯）

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