水戸黄門 (1978年の映画)

映画『水戸黄門』詳細解説

概要

映画『水戸黄門』は、1978年12月23日に東映が配給した時代劇映画です。テレビドラマ『水戸黄門』（東野英治郎版）の放送開始10周年を記念して制作され、主演の東野英治郎をはじめ、里見浩太朗、大和田伸也など、テレビドラマ版の主要キャストが多数出演しています。映画は、水戸光圀（通称：水戸黄門）が、佐々木助三郎、渥美格之進らお供とともに諸国を漫遊し、各地で起こる悪事を懲らしめるという、テレビドラマ版と同様の勧善懲悪のストーリーを踏襲しています。本作では、光圀一行が柏崎と金沢を舞台に活躍します。

東映と俳優座映画放送が提携し、テレビドラマ版の放送局である東京放送（TBS）と、制作会社であるC.A.Lも製作に協力しています。カラー、シネマスコープで制作され、映倫番号は19578です。封切り時には、『トラック野郎・一番星北へ帰る』と同時上映されました。

物語

物語は、加賀藩で次席家老・村井主水らが藩主の座を狙い、藩を乗っ取ろうとする陰謀が発覚するところから始まります。城代家老・奥村作左衛門の娘である由美は、この陰謀を阻止するため、単身水戸へ向かい、水戸光圀に助けを求めます。加賀藩の藩主である前田綱紀は光圀の甥にあたり、由美は光圀に事の次第を話し、協力を依頼します。光圀は由美の頼みを聞き入れ、佐々木助三郎、渥美格之進、うっかり八兵衛、風車の弥七を伴い、加賀へと旅立ちます。

道中、柏崎に立ち寄った一行は、「水戸光圀一行」を名乗る偽者たちに遭遇します。また、代官・黒部と結託した地元ヤクザ・柏屋一家の悪事を知り、これを解決します。その後、一行は金沢に到着し、反村井派の藩士・鶴来源八郎が謀反の罪で捕らえられていることを知ります。由美は、恋仲である藩士・石川隼人に協力を求め、鶴来の釈放を試みます。石川は、実は村井一派のふりをしながら情報を集め、告発の機会をうかがっていたのでした。

参勤交代から帰国した藩主・綱紀に対し、石川は村井の陰謀を暴露しますが、村井一派に斬りかかられます。その時、奉納太鼓の奏者に扮していた光圀一行が正体を現し、三つ葉葵の御紋が入った印籠を掲げます。これにより、村井らの陰謀は阻止され、騒動は解決します。

出演者

水戸光圀：東野英治郎
佐々木助三郎：里見浩太朗
渥美格之進：大和田伸也
うっかり八兵ヱ：高橋元太郎
風車の弥七：中谷一郎
鶴来源八郎（加賀藩士）：和田浩治
石川志保（石川の妹）：山口いづみ
百合の方（綱紀の側室）：鮎川いづみ
源助（宿の番頭）：谷幹一
黒部八太夫（柏崎の代官）：遠藤太津朗
柏屋権蔵：富田仲次郎
笹屋喜兵衛（宿の主人）：稲葉義男
奥村家の御用人：浜田寅彦
高坂半九郎（村井の側近）：川合伸旺
下曽根金三郎（加賀藩士）：東野英心
鬼頭源心（刺客）：深江章喜
前田綱紀：武内亨
丑蔵（権蔵の手下）：汐路章
お松（宿の女中）：正司歌江
お竹（宿の女中）：正司照江
お海（宿の女中）：正司花江
三吉（馬子の少年）：伊藤洋一
六兵ヱ（にせ黄門）：ハナ肇
助八（にせ助三郎）：植木等
格三（にせ格之進）：谷啓
太兵衛（太鼓奏者・由美の協力者）：加藤嘉
村井主水（加賀藩次席家老）：安部徹
石川隼人（加賀藩士・由美の恋人）：竹脇無我
奥村由美：栗原小巻
奥村作左衛門（加賀藩城代家老）：三船敏郎

スタッフ

企画：葉村彰子、高岩淡
原案・脚本：葉村彰子
監督：山内鉄也
音楽：木下忠司
撮影：増田敏雄
録音：溝口正義
照明：増田悦章
美術：佐野義和
編集：河合勝巳

製作の背景

本作は、東映が外部資本との提携を積極的に進めていた時期に製作されました。テレビドラマ『水戸黄門』の舞台版企画が持ち上がった際、短期間で済む映画化が検討され、ドラマのスポンサーであった松下電器の創立60周年記念イベントとして映画化が決定しました。東映にとっても、テレビ番組とのタイアップによる宣伝効果や、松下電器の販売網を利用した集客が見込めるため、メリットがありました。監督の山内鉄也は、約10年ぶりに映画の演出を手がけました。

製作発表会見では、岡田茂東映社長らが映画化への意気込みを語り、里見浩太朗は12年ぶりの映画出演、栗原小巻は初の男装に挑戦しました。製作費は5億円で、配収15億円を見込んでいました。

タイトルバック

タイトルは、テレビ版を踏襲しつつ、横書きで赤字となり、背景に金色の三つ葉葵が配置されるなど、映画版独自のデザインとなっています。キャストクレジットは、光圀一行が旅に出る場面とともに流れ、「衛」の字が「ヱ」と表記されています。

編成・公開

当初は1978年夏公開予定でしたが延期され、1979年の正月映画として『トラック野郎・一番星北へ帰る』と同時上映されました。東映は、『トラック野郎』シリーズの併映作として本作を選びましたが、東野版を含むTBS/C.A.L版『水戸黄門』の映画化は本作のみとなりました。

その他

本作には、テレビドラマ版『水戸黄門』の枠である「ナショナル劇場」や、C.A.Lが関連するテレビドラマにレギュラー出演している俳優が多く出演しています。

評価

併映作品と合わせた配給収入は10億5000万円を記録しました。

テレビ放映

1981年以降、TBS系列やBS、CS放送などで度々テレビ放映されています。2022年にはYouTubeで期間限定無料配信も行われました。

関連作品

水戸黄門 (第1-13部) - 東野英治郎が主演したテレビシリーズ版

外部リンク

日本映画データベース
allcinema
KINENOTE
文化庁日本映画情報システム
MOVIE WALKER PRESS
映画.com
AllMovie
IMDb

もう一度検索