深井城

深井城（ふかいじょう）

深井城は、現在の大阪府堺市中区深井中町にあったとされる日本の城です。しかし、遺構などは確認されておらず、観音山古墳がその推定地として有力視されています。本記事では、深井城の概要と、その名が歴史に刻まれた深井の合戦について詳しく解説します。

概要

深井城については、その遺構や正確な位置を示す古文献が残っていないため、推定地を巡って議論がなされています。そのため、正確な城郭の形状は不明であり、恒久的な城ではなく、臨戦用の砦であった可能性も指摘されています。

堺市には、大仙陵古墳をはじめとする百舌鳥古墳群が点在しており、周辺地域では高屋城や誉田城のように、古墳跡に築城された例が見られます。このような背景から、深井城も観音山古墳跡をベースに築城されたと考えられていますが、その古墳自体も完全に破壊されており、伝承レベルの情報しか残っていません。1970年代には、わずかに土塁や台地などの遺構が残っていたようですが、その後の宅地や農地開発によって、その痕跡も消滅してしまいました。

深井城が古文書に登場するのは、深井の合戦に関する記述のみです。この合戦において、深井城は細川政賢方の本拠地として使用されました。一方、細川高国方の本拠地となったのは、西村砦と東村砦です。

西村砦

西村砦も、古墳跡に建設されたと考えられており、城ノ山古墳跡がその有力な候補地となっています。しかし、現在では古墳、砦跡ともに消滅し、宅地化されています。

東村砦

東村砦も同様に、古墳跡に建設されたと考えられており、定の山古墳跡が有力視されています。区画整理事業によって古墳の形状は変形しましたが、現在は復元され、公園として整備されています。この定の山古墳は復元古墳であるため、山頂部に登ることが可能です。

深井の合戦

深井城の歴史は、ほぼ深井の合戦に集約されます。合戦後、深井城がどのような経緯をたどったのか、いつ廃城になったのかは全く分かっていません。

開戦までの経緯

永正6年（1509年）の如意ヶ嶽の戦いで阿波に帰国した細川澄元は、京都への復帰と足利義澄の将軍復権を目指し、戦略を練っていました。その一環として、永正8年（1511年）7月7日、総大将を同族の細川政賢と和泉守護の細川元常とし、軍を和泉堺の浜に上陸させました。『陰徳太平記』によれば、当初は天王寺城を攻める計画だったようです。しかし、山中為俊、畠山高国、遊佐順盛や浪人衆が合流し、深井城に陣を敷きました。『瓦林正頼記』によると、この時の政賢軍の兵力は7、8千であったとされています。

この動きに対し、澄元の対立勢力である細川高国は、摂津国の国人衆に追討を命じました。これに応じた池田氏、伊丹氏、三宅氏、茨木氏、安威氏、福井氏、太田氏、入江氏、高槻氏ら2万の兵が結集し、西村砦と東村砦に布陣しました。

戦いの状況

7月13日、合戦が開始され、細川高国軍が先陣を切って深井城へ進軍しました。

『細川両家記』によると、高国軍が城に突入したところ、城内はもぬけの殻でした。しかし、突如として出口が閉鎖され、高国軍は包囲されてしまいます。脱出を試みようと出口に集中したところへ、政賢軍が現れ、そこから逃れようとする高国軍に襲い掛かりました。高国軍も応戦しましたが、最終的に敗北し、大将方は討ち死に、雑兵も300名以上が討ち取られるという結果となりました。

戦後の状況

高国軍の残兵は堺へ逃亡し、この機に乗じた政賢軍は、その日のうちに中嶋城まで攻め上り、船岡山合戦へと繋がっていきます。

別説

当時の戦況については、『細川両家記』に「籠の中の鳥」という記述が見られる一方で、他の古文献には異なる状況が記されています。

『瓦林正頼記』：高国軍は兵力は多かったものの、連携がうまくいかず、大勢が討ち死にした。
『陰徳太平記』：多勢に囲まれた政賢軍は、死を覚悟し、決死の覚悟で出撃した。

このように、深井の合戦の状況については、古文献によって諸説が存在します。

同時期に、澄元が鷹尾城で引き起こした戦いについては、芦屋河原の合戦を参照してください。

城跡へのアクセス

電車でのアクセス: 泉北高速鉄道線 深井駅 → 南海バス 中深井下車
車でのアクセス: 阪和自動車道 堺インターチェンジ → 中深井方面
近隣に駐車場はありません。

参考文献

『細川両家記』
『瓦林正頼記』
『陰徳太平記』
『日本城郭大系』第12巻 大阪・兵庫、新人物往来社、1981年3月。
『堺市文化財地図』 堺市教育委員会、1989年3月。

関連項目

細川政権 (戦国時代)
定の山古墳
畿内・近国の戦国時代

外部リンク

深井城推定地周辺の地図
西村砦推定地周辺の地図
東村砦推定地周辺の地図
定の山古墳，堺市公式ホームページ
城ノ山古墳，堺市公式ホームページ

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