湯之谷村

かつて新潟県の中央部、北魚沼郡に位置していた湯之谷村（ゆのたにむら）は、越後山脈の豊かな自然に抱かれた地域です。2004年11月1日、村は小出町、堀之内町、広神村、守門村、入広瀬村との新設合併を経て、現在の魚沼市の一部となり、行政区域としての名称はその歴史を閉じました。

地理的特徴

村域は魚沼盆地の東端に位置し、東部には越後駒ヶ岳、平ヶ岳、荒沢岳といった2000メートル級の山々が連なります。これらの山々を源とする清流、佐梨川が村内を流れ、その上流部には広大な奥只見湖が広がっています。この地域は、越後三山只見国定公園の一部にも指定されるほど、手つかずの自然が多く残されています。湯之谷村は、新潟県内の小出町、広神村、入広瀬村、大和町に加え、県境を挟んで福島県の只見町、檜枝岐村、群馬県の水上町、片品村にも接しており、交通の要衝としても重要な役割を果たしていました。

歴史的背景

湯之谷地域は古くから人々の営みがあり、特に湯之谷温泉郷の一つである大湯温泉は、奈良時代に行基によって開かれたという伝承を持ち、およそ1300年の歴史を誇ります。近世には、上田銀山や大湯銀山などの開発が盛んに行われ、最盛期には2万6千人もの人々が暮らす大規模な銀山街が形成され、地域経済を支えました。銀山の衰退後、近代に入ると只見川の豊富な水資源に着目した電源開発へと産業の中心が移り、奥只見ダムなどの建設が進められました。

沿革

近代町村制施行により、1889年4月には現在の村域にあたる場所に八箇村と湯ノ谷村が誕生しました。その後、1901年11月1日にはこれら二つの村が合併し、「湯之谷村」が成立しました。村はその後も約1世紀にわたり存続しましたが、平成の大合併の一環として、2004年11月1日に隣接する5つの町村と合併し、新たに「魚沼市」が誕生したことにより、湯之谷村としての歴史的な役割を終えました。旧村域の大字名は、現在も魚沼市の地域名として引き継がれています。

交通網

湯之谷村内には高速道路のインターチェンジはありませんでしたが、隣接する小出町に位置する関越自動車道魚沼インターチェンジが最寄りのアクセスポイントでした。一般道路としては、主要幹線である国道17号が西側を通り、奥只見方面へと向かう国道352号が村内を縦断していました。特に国道352号の枝折峠越えの区間は、その険しさで知られています。また、奥只見ダムへの主要アクセスルートである新潟県道50号小出奥只見線（奥只見シルバーライン）や、新潟県道70号小出守門線といった主要地方道が地域内の移動を支えていました。村内には休憩・交流拠点として道の駅「ゆのたに」が設置されていました。
鉄道についても村内には駅がなく、最寄りの在来線駅は小出町のJR上越線・只見線小出駅、上越新幹線を利用する場合は隣接する大和町（現在の魚沼市）にある浦佐駅が利用されていました。

観光・文化・教育

湯之谷村は観光資源が豊富で、歴史ある湯之谷温泉郷を中心に多くの観光客が訪れました。奥只見レクリェーション都市公園大湯公園や、かつて銀山があった銀山平、越後駒ヶ岳への登山口の一つでもある枝折峠は美しい自然景観を楽しめるスポットとして人気です。奥只見湖では遊覧船が運航され、湖上からの景色を満喫できました。また、群馬県にまたがる尾瀬への新潟県側の玄関口の一つでもあります。冬には豊富な雪を利用した奥只見丸山スキー場、湯之谷薬師スキー場、大湯温泉スキー場が営業し、ウィンタースポーツのメッカとしても賑わいました。
年間を通じて様々なイベントが開催され、夏には銀山平での「ふれあい夏の雪祭り」や「尾瀬三郎中納言供養祭」、秋には米どころならではの「コシヒカリプレゼント」、冬には温泉地での「湯の里雪祭り」などが地域を盛り上げました。
教育機関としては、井口小学校（現：湯之谷小学校）、東湯之谷小学校（現在は井口小学校と統合）、湯之谷中学校がありました。この地域は、医師・弁護士で元新潟県知事の米山隆一氏、現魚沼市長の内田幹夫氏、タレント・キャスターの大桃美代子氏、アルペンスキー選手の星瑞枝氏など、各界で活躍する多くの著名人を輩出しています。

湯之谷村は行政区域としては姿を消しましたが、その豊かな自然や歴史、文化は魚沼市の一部として、現在も大切に受け継がれています。

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