満洲国圓

満洲国圓（まんしゅうこくえん）とは

満洲国圓（まんしゅうこくえん）は、1932年から1945年まで満洲国で使用された通貨です。通称は「国幣」と呼ばれ、満洲中央銀行によって発行されました。この通貨は、満洲国の経済と社会において重要な役割を果たしました。

満洲国圓の誕生と変遷

満洲国が建国された当初、東三省では様々な軍閥政権が独自の貨幣を発行していました。これを統一するため、1932年に満洲中央銀行が設立され、新貨幣である満洲国圓（国幣）が発行されました。

銀本位制から日本円との連動へ

満洲国圓は、当初は中華民国の通貨と同様に銀本位制を採用し、銀圓（袁世凱弗、孫文弗）と等価とされました。しかし、1934年にアメリカで銀買上法が成立したことで銀価格が高騰し、中国大陸から銀が流出する事態が発生しました。

これに対処するため、満洲国は1935年に銀本位制から離脱し、日本円と連動する政策を採用しました。同年9月には日本円と完全に等価となり、11月には日満両政府が「満日為替相場等価維持に関する声明」を発表し、日本円を基準とする管理通貨制度へと移行しました。

通貨の統一

満洲国内では、満鉄附属地を中心に朝鮮銀行券や横浜正金銀行券も使用されていました。しかし、1935年11月4日に日本政府が「満洲国の国幣価値安定及幣制統一に関する件」を閣議決定し、満洲国内の日本側銀行券を国幣に統一する方針が決定されました。これにより、朝鮮銀行券や横浜正金銀行券は回収され、満洲国内の通貨は満洲国圓に統一されました。

戦後の混乱と終焉

1945年に満洲国が解散した後、満洲中央銀行はソ連軍に接収されました。しかし、満洲国圓はソ連軍発行の軍票や国民政府の法幣よりも信用が高く、しばらくの間は東北流通券と同価値で流通していました。1947年春、東北流通券との等価交換が実施され、満洲国圓の流通は禁止されました。1948年には、約12億圓の満洲中央銀行券が東北銀行地方流通券に交換されました。

発行法規

満洲国圓の発行は、「貨幣法」（1932年）で定められました。その後、アルミニウム不足により、小額紙幣（1944年）やマグネ貨（1945年）が発行されました。新様式の貨幣を発行する際は、発行日の1か月前に公告されることが義務付けられていました。

貨幣法

1932年6月に公布された「貨幣法」は、満洲国の貨幣制度を規定しました。貨幣の製造・発行権は政府にありましたが、満洲中央銀行が代行しました。通貨単位は「圓」で、十進法を採用し、1圓=10角=100分=1000厘と定められました。紙幣は百圓、十圓、五圓、一圓、五角の5種類、硬貨は白銅貨幣と青銅貨幣の4種類が規定されました。紙幣の強制通用力は無制限、硬貨は100枚までとされました。

小額紙幣発行ニ関スル件

1944年8月、「小額紙幣発行ニ関スル件」が公布され、鋳貨の代用として一角、五分、一分の小額紙幣が発行されました。しかし、実際に発行されたのは一角と五分の紙幣のみでした。

マグネ貨発行ニ関スル件

1945年2月、「マグネ貨発行ニ関スル件」が公布され、金属製鋳貨の代用として五分と一分のマグネ貨が発行されました。これらの硬貨は軽焼マグネシア（酸化マグネシウム）を主成分としていました。

通貨単位

満洲国圓の通貨単位は、「圓」であり、補助通貨として「角」「分」「厘」が使用されました。英文表記では、圓は「Yuan」、角は「Chiao」、分は「Fen」、厘は「Li」と表記されました。通貨記号は日本円と同じ「¥」が使用されましたが、満洲国圓を日本円と区別するために「M¥」と表記されることもありました。

紙幣の種類

満洲中央銀行券（中銀券）は、発行・改正された順に、改造券、甲号券、乙号券、丙号券、丙改券、丁号券の6種類に分類されます。紙幣の額面は、百圓、十圓、五圓、一圓、五角、一角、五分の計7種類が存在しました。

紙幣の製造

中銀券は、当初は日本の内閣印刷局に製造が委託されていましたが、大東亜戦争（太平洋戦争）の影響で、満洲国内の満洲帝国印刷廠（局）で製造されるようになりました。紙幣の用紙は、吉林特殊製紙と満洲豆桿パルプを原料とし、在来の中銀券を溶解して回収した三椏も使用されました。インフレにより、千圓券の製造も計画されましたが、実際に発行されることはありませんでした。

紙幣の記号と番号

紙幣には記号と番号が印刷されており、番号は1記号毎に100万番とされていました。後に、紙幣の印刷中に番号が欠如した場合は、100万番を超える番号を付すことが認められました。また、五角紙幣は番号なしで発行されることもありました。

紙幣の偽造防止策

内閣印刷局で製造された紙幣には、着色繊維や漉入、透かしなどの偽造防止策が施されていました。満洲帝国印刷廠（局）で製造された紙幣には、内蒙古地区の塩湖に生える藻を着色し、用紙に漉き込むことで偽造防止対策を講じました。

紙幣一覧

以下に各紙幣の特徴をまとめます。

改造券: 旧東三省官銀號現大洋票を流用した一時的な紙幣。
甲号券: 表面に満洲国旗、執政府勤民楼が描かれた初期の紙幣。
乙号券: 中国古代の聖人・賢人の肖像が描かれた紙幣。
丙号券: 壹角が追加され、デザインが小幅に変更された紙幣。
丙改券: 丙号券とほぼ同じデザインだが、印刷方式やインクが異なる紙幣。
丁号券: 五分、五角、壹仟圓の3種類が製造されたが、壹仟圓券は未発行。

硬貨の種類

満洲国では、白銅貨、青銅貨、アルミニウム貨、マグネ貨など、さまざまな素材の硬貨が発行されました。発行当初は白銅貨と青銅貨が発行され、後にアルミニウム貨が追加されました。大東亜戦争の影響で、アルミニウム不足となり、最終的にはマグネ貨が発行されました。

硬貨の製造

満洲国で発行された硬貨は、奉天市の満洲中央銀行造幣廠で製造されました。造幣廠は日本の造幣局の協力を得て再整備され、1933年5月より新硬貨の製造を開始しました。

硬貨一覧

以下に各硬貨の種類と特徴をまとめます。

白銅貨: 壹角、五分（当初発行）。
青銅貨: 壹分、五厘。
アルミニウム貨: 壹角、五分、壹分（小型化版）。
マグネ貨: 五分、壹分。

まとめ

満洲国圓は、満洲国の歴史を象徴する通貨であり、その発行から終焉まで、様々な変遷を辿りました。銀本位制からの離脱、日本円との連動、通貨の統一、戦争による資源不足など、時代の流れに翻弄されながらも、満洲国経済を支え続けました。この通貨の歴史を振り返ることは、当時の満洲国の政治、経済、社会情勢を理解する上で非常に重要です。

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