滅悪山脈

滅悪山脈の概要

滅悪山脈（ミョラクさんみゃく）は、朝鮮民主主義人民共和国にある際立った山脈で、平安南道、黄海北道、咸鏡南道、江原道の境界付近に位置しています。この山脈は狼林山脈から始まり、南西方向に黄海へと向かって120 kmにわたって広がっています。平均標高は340m、幅は約14kmあります。そして、山脈の中でも特に有名な山には、816mの滅悪山や、747mの長寿山、546mの白楽山、954mの九月山があります。

環境の多様性

滅悪山脈は数多くの地下資源が埋蔵されていることで知られています。金、銀、銅、亜鉛などの貴重な金属が眠り、北斜面には鉄鉱石や蛍石、重晶石も発見されています。地質的には、珪岩、石灰岩、花崗岩、頁岩が基盤を成していますが、石灰岩は浸食により、特定の地点での高まりに留まっています。

土壌は地域によって異なり、北斜面にはポドゾル状の褐色森林土が、南西部には赤褐色森林土が見られ、壌土や埴壌土、埴土と多様な土壌が見られます。また、植生も非常に豊かで、山麓にはゴヨウマツやアカマツ、ニセアカシアが生い茂り、高くなるにつれてモンゴリナラ、カシワ、クヌギ、シラカバ、グイマツなどが見られます。

さらに、薬用植物や山菜も豊富で、山参や五味子、三枝九葉草、天南星、細辛などの薬草や、ワラビ、ゼンマイ、ツルニンジン、キキョウ、タラノキ、ヤマカノツメソウといった多様な山菜、ヤマブドウやマタタビ、ナシなどの果実が採れます。また、動物たちも多く、イノシシ、ノロジカ、オオヤマネコ、アジアアナグマ、タヌキ、キジ、キタタキ、キツツキ、フクロウ、クロハゲワシが生息し、自然環境が豊かであることがわかります。北朝鮮政府では、この山脈を滅悪山植物保護区として指定し、特産の植物を含め多くの植物が保護されています。

地理的特徴

この山脈は、その形成過程において傾動地塊が侵食された結果、残存している山地であると考えられています。山脈は北東から南西へ延び、長淵郡を経て黄海南道の西端に位置する長山串に至ります。その対岸には中国の山東半島が広がっています。滅悪山脈は礼成江と載寧江の分水嶺としての役割を果たし、遂安郡と燕灘郡、瑞興郡と新渓郡、平山郡と麟山郡との境界を形成し、黄海道を南北に分ける重要な自然的・人文的な境界です。

峠道としては、瑞興郡と新渓郡の間に位置する標高504mのマルグリ峠、平山郡と麟山郡の間にある標高170mのチソ峠が知られています。山脈の傾斜は、南東斜面が約45〜50˚、北西斜面が約35˚であり、東斜面からは大坪川や亀洛川、南川、漏川などの河川が流れ出ており、西斜面からは黄州川、瑞興江、銀波川が湧き出ています。

産業と観光

滅悪山脈の長寿山エリアは、その全体が白色珪岩で構成されているため、三つの美しい渓谷が存在し、“黄海金剛（황해금강）”として知られる観光名所となっています。また、信川郡周辺には古くから温泉が開発されており、観光と産業において重要な役割を果たしています。北斜面から排出される載寧江と南斜面の礼成江の流域は、広大な沖積平野を形成しており、穀倉地帯としても知られています。

このように、滅悪山脈は独自の地理的、環境的な特徴とともに、文化的な価値を持つエリアであり、様々な資源を提供しています。

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