王沈 (西晋)

王沈（おう しん）

王沈は、中国の三国時代から西晋にかけて活躍した政治家であり、歴史家でもありました。字は処道といい、并州太原郡晋陽県の出身です。彼の生涯は、魏から西晋への移行期における政治的変動と深く関わっています。

生涯

王沈の祖父は後漢の匈奴中郎将、父は魏の東郡太守を務めた家柄でした。幼くして父を亡くした王沈は、魏の高官であった王昶によって養育され、その名や字も王昶によって与えられました。彼は王昶や継母に孝義を尽くし、学問を好み、文筆に才能を発揮しました。

曹爽の掾属を経て中書門下侍郎となった王沈は、羊祜にも出仕を勧めましたが拒絶されます。曹爽が誅殺されると免官となり、羊祜の先見の明を認めました。後に治書侍御史として復職し、秘書監に転じます。魏の皇帝、曹髦に寵愛され、文籍先生と呼ばれ、裴秀らと共に討論会に参加しました。

荀顗や阮籍と共に『魏書』を編纂しましたが、時勢を考慮した内容であったため、陳寿の『三国志』には及ばなかったと評されています。甘露5年（260年）には、司馬昭の専横を討伐しようとした曹髦の計画を密告し、司馬昭によって曹髦は殺害されました。この功績により王沈は安平侯に封じられましたが、世間からは不忠の人物として非難されました。

その後、尚書を経て監豫州諸軍事・奮武将軍・豫州刺史に任じられ、善政を敷きました。賈逵以来の制度を調査し、学問を奨励して教育を普及させました。征虜将軍・持節・都督江北諸軍事を経て、五等爵が置かれると博陵侯に封じられました。蜀漢平定後の混乱を鎮め、呉を撤退させることに貢献しました。

鎮南将軍を経て御史大夫・守尚書令・給事中となり、晋創業の事業において賈充や裴秀らに計画を相談されるほど、その才能と名声は高まりました。司馬炎に帝位禅譲を強く勧め、実現させ、驃騎将軍・録尚書事・散騎常侍・城外諸軍事に昇進しました。博陵郡公にも封じられましたが、固辞しました。

司馬炎が政務全般を委ねようとしていた矢先の泰始2年（266年）5月に死去しました。元公と諡され、後に司空を追贈されました。咸寧元年（275年）には、晋建国の功臣として荀顗や裴秀らと共に祀られ、爵位も追封されました。

人物評価

王沈は文才に長け、政治手腕も高く評価されましたが、甘露の変における密告によって、不忠の人物という評価も受けています。彼の編纂した『魏書』も、時勢に阿った内容であると批判されています。しかし、その一方で、豫州刺史としての善政や、西晋創業への貢献は高く評価されています。

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