王濬

王濬（おう しゅん）

王濬（拼音: Wáng Jùn、221年 - 286年）は、中国の三国時代から西晋にかけての人物で、魏・西晋に仕えました。字は士治。司隸弘農郡湖県（現在の河南省霊宝市）の出身で、妻は徐邈の娘です。

生涯

代々2千石の家柄に生まれ、若い頃から経典に通じ、容姿も優れていましたが、名声を求めず、地元では評価されませんでした。しかし、志を抱き、司隸に招聘されて河東従事となります。当時の司隷校尉であった徐邈に認められ、その娘を妻として迎えました。

羊祜の参軍事となると、その才能を高く評価され、優遇されます。羊祜の甥である羊曁は、王濬を「奢侈で節義がない」と評しましたが、羊祜は彼の才腕を必要とし、取り合いませんでした。

益州の巴郡太守・広漢太守に昇進すると、兵役を緩和し、民に恩恵をもたらしたため、郡民から喜ばれました。刺史の皇甫晏が殺害されると、代わりに刺史となり、反乱を鎮圧。その後も蛮夷を懐柔し、多くの人々を帰属させました。その功績により、宮廷に入り、右衛将軍、大司農を歴任。羊祜は王濬の奇略を高く評価し、密かに上表して彼を再び益州刺史としました。王濬は蜀漢の旧臣である何攀を重用し、羊祜と連携して呉討伐の協議を進め、呉討伐のための大船団の建造を開始しました。

277年、益州で五斗米道の一派を率いていた陳瑞を誅殺し、配下の信者を免官。また、山川を祀る祠に植えられた松柏を「非礼」として破壊・焼却し、船建造の材料として利用しました。資材が不足すると、何攀の進言で墳墓の松柏を買い取りました。さらに、屯田兵600人を動員し、工事を急がせました。呉討伐慎重派の反対を恐れた王濬は、何攀の進言で休養中の兵士1万人を勝手に動員し、突貫工事を進めました。その結果、長江上流では大量の木屑が流れ、川の色が変わるほどでした。

279年、龍驤将軍・監梁益二州諸軍事として、長江を下り呉に侵攻。各地で呉軍を破り、西陵・武昌を瞬く間に攻略しました。王濬の旗船である大型の楼船は、全長120歩、2000人以上が乗船できる巨大なもので、櫓や城門を備え、甲板では馬を走らせることができたといいます。船首には鳥や怪獣の絵が描かれ、川の神への魔除けとされました。

呉軍は長江に鎖を渡し、鉄製の障害物を沈めて王濬軍の進攻を阻もうとしましたが、王濬は筏を使って障害物を除去し、松明で鎖を焼き切りました。これにより、軍船は進むことができました。

280年2月、戦地で仮節・平東将軍・都督梁益二州諸軍事に昇進し、建業へ迫りました。王渾が王濬に前進を待つように命じましたが、王濬は風向きが良いことを理由に独断で前進し、孫晧を降伏させました。この行動は王渾の怒りを買い、司馬炎（武帝）に弾劾されましたが、王濬は孫晧の身柄を王渾に引き渡すことで事態を収拾しました。呉を滅ぼした功績により罪は免れましたが、王渾との不和はその後も続きました。王濬は自身の功績を誇り、不満を口にすることもありましたが、司馬炎は大目に見ました。

呉を滅ぼした功績により、輔国大将軍・歩兵校尉となりましたが、秦秀らは王濬の功績に対し、降格人事ではないかと批判しました。最終的には、撫軍大将軍・開府儀同三司・特進・散騎常侍にまで昇り、襄陽侯に封じられました。

286年1月18日、死去。享年80。諡は武侯とされ、柏谷山に葬られました。墓は周囲45里に及び、四面に門を備え、松柏が生い茂っていたといいます。

唐の史館が選んだ中国六十四名将にも選ばれています。

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