石薬師寺

石薬師寺は、三重県鈴鹿市石薬師町にある東寺真言宗の寺院で、高富山を山号とし、瑠璃光院という院号を持っています。本尊は薬師如来です。

歴史

寺伝によると、この寺は神亀3年（726年）に泰澄によって開かれました。泰澄が当地で巨石の出現を見て、薬師如来の示現と悟り、草庵を設けて供養したのが始まりとされています。その後、弘仁3年（812年）には空海（弘法大師）がこの地を訪れ、巨石に薬師如来を刻み、開眼法要を行ったと伝えられています。この出来事が人々の信仰を集め、嵯峨天皇の勅願寺となり、壮麗な寺院が建立されました。当時は高富山西福寺瑠璃光院と称されていたそうです。

しかし、天正年間（1573年～1592年）の兵火によって寺は焼失してしまいました。その後、寛永6年（1629年）に神戸城城主の一柳監物によって諸堂宇が再建され、現在の本堂はこの時に建てられたものです。元和2年（1616年）には、東海道五十三次の宿場である石薬師宿にちなみ、高富山瑠璃光院石薬師寺と改称され、現在に至っています。

本堂内には、鈴鹿市指定文化財である秘仏本尊薬師如来をはじめ、紀州徳川家が寄進した脇侍の日光菩薩、月光菩薩、さらに十二神将、地蔵菩薩、大日如来、不動明王が安置されています。また、大師堂には「知恵弘法」と呼ばれる弘法大師像が祀られています。

みどころ

石薬師寺の東側には東海道が通っており、江戸時代には参勤交代でこの地を通る大名たちが、道中の安全を祈願するために寺を訪れたと言われています。その際、山門から境内に下る石段は、足元に配慮して丸みを帯びた形状に加工されたとされ、現在もその石段が残っています。

また、江戸時代に活躍した浮世絵師の歌川広重が、東海道五十三次（浮世絵）に石薬師宿（東海道江戸から44番目の宿場）の全景を描いたことで、この地は広く知られるようになりました。

文化財

石薬師寺には、多くの文化財が保存されています。

三重県指定有形文化財（建造物）
石薬師寺薬師堂（1棟）：本堂にあたる薬師堂は、桁行3間、梁間4間の単層、寄棟造平入、本瓦葺きの木造建築です。隅木や棟札の墨書から、寛永6年（1629年）に近江大工によって再建され、寛政元年（1789年）に屋根が葺き替えられたことが分かります。また、寛政6年（1794年）には内陣の修復と厨子の再建が行われています。この薬師堂は、正統的な和様意匠を用いた伝統的傾向の強い大型の三間堂であり、建立および改修の年代が明確であるため、技術的・意匠的にこの地方の基準となる重要な建築物とされています。三重県内の近世寺院建築としては最も早い時期に属するもので、ほぼ類似の形式を持つ真言宗や天台宗の三間堂の中でも最古の例です。

鈴鹿市指定有形文化財
石薬師の石仏：花崗岩製の線彫りの如来立像で、像高は190cmです。寺伝によれば、弘法大師が地面から生えた石に刻んだとされています。浅い線彫りで、頬が豊かで、薬師仏として親しまれてきました。普段は秘仏とされていますが、毎年12月20日の「おすす払い」の際には洗い清められます。後世に彫り直しがされているため、時代判定は困難ですが、平安時代後期の作とされています。

年中行事

石薬師寺では、以下の年中行事が行われます。

1月1日～1月3日：修正会
1月8日：初薬師供
3月21日：弘法大師正御影供
4月8日：大般若仏生会 花祭り
7月16日：閻魔尊大施餓鬼会式
12月20日～12月21日：御本尊開扉おすす取り

近隣施設

石薬師寺の周辺には、以下の施設があります。

石薬師の蒲桜：県指定文化財、天然記念物
佐佐木信綱記念館：日本の歌人、国文学者の佐佐木信綱の記念館。石薬師寺から東海道を北へ約0.6km
白鳥塚古墳 (鈴鹿市)
伊勢国分寺（国分町）

アクセス

石薬師寺へのアクセスは以下の通りです。

JR関西本線 河曲駅より西へ約2km
国道1号：石薬師交差点より南へ約0.5km、国道沿い

脚注

滝本昭二『三重四国八十八ヵ所霊場』三重四国八十八ヵ所霊場会：54 – 55

関連項目

三重四国八十八箇所
西国薬師四十九霊場
石薬師宿

外部リンク

三重四国八十八ヶ所霊場 番外1 高富山 瑠璃光院 石薬師寺
石薬師寺

もう一度検索