祁答院良重

祁答院良重：戦国時代の武将

祁答院良重（けどういん よししげ）は、大永6年（1526年）に生まれ、永禄9年（1566年）に没した戦国時代の武将です。祁答院氏の13代当主であり、通称は又二郎、河内守と称しました。父は祁答院重武で、子に長男の重経（田中と号す）、次男の重種（養子とも）、三男の重加、そして娘がいました。没年については、永禄2年（1559年）とする説も存在します。

良重は、桓武平氏秩父党の一派である渋谷氏の一族（血脈としては紀姓大井氏）に属し、北薩摩地方から大隅地方にかけて勢力を拡大しました。同じ渋谷一族である東郷氏や入来院氏らと連携し、薩摩国守護である島津氏に対し、時には従い、時には対立を繰り返す国人でした。

生涯

天文7年（1538年）、父・祁答院重武の死により家督を相続しました。天文23年（1554年）には、同盟関係にあった蒲生氏が、島津氏に与する肝付氏の加治木城を攻撃しました。これに対し、島津貴久は蒲生氏の攻撃の矛先を逸らそうと、同年9月12日に蒲生方の岩剣城に兵を進めました。この時、迎え撃ったのが祁答院良重でした。

岩剣城は、三方を崖に囲まれた天然の要害であり、その険しさを見た島津忠良（日新斎）は、島津義久ら三兄弟の誰かが「死なねば落ちまい」と語ったと伝えられています。良重は奮戦しましたが、岩剣城が包囲されたことを知った蒲生勢は、加治木城の包囲を解いて救援に向かいました。しかし、岩剣城北部の平松（現鹿児島県姶良市）で島津勢と激突し、敗走しました。この戦いで、良重の嫡子である重経も戦死しました。援軍の見込みが無くなった良重は、夜陰に紛れて城を脱出し、同年10月3日頃に岩剣城は島津軍の手に落ちました。

その後、良重は帖佐城・平安城を拠点に、島津貴久の侵攻に抵抗を続けましたが、天文24年（1555年）に島津義弘、喜入季久らの猛攻を受け、祁答院へと退去しました。その後も、良重は蒲生氏の支援を得て、帖佐奪還を試みましたが、義弘軍に迎撃され大敗しました。弘治3年（1557年）には、蒲生氏も本拠を島津軍に包囲され、当主・蒲生範清は、良重の取り成しを入れて島津貴久に降伏しました。その際、良重は蒲生範清・蒲生為清父子を祁答院の松尾城に迎えて保護しました。

帖佐の本城を失い、蒲生氏との同盟も失敗に終わったことで、良重の勢力は最盛期ほどではなくなりました。しかし、姶良地方から撤退して虎居城を拠点とし、入来院氏・東郷氏ら渋谷一族の諸勢力と結んで一定の力は保っていました。しかし、永禄9年（1566年）正月に、妻である虎姫によって刺殺されるという悲劇的な最期を迎えました。法名は「樹蔭得鉄大禅定門」です。

良重の死後、祁答院氏は領地経営が行き詰まり、大井実勝・高城重治・久富木重全の三名の連判により、祁答院氏の領地は全て入来院重嗣に譲渡され、没落しました。良重の死後、日向国飫肥へ出奔していた三男の重加が嫡流と定められました。その家督を継いだ子や孫は養子でしたが、島津軍団の一員として各地の合戦に出陣し、子孫は入来院氏、喜入氏の家臣として続いたと伝えられています。

エピソード

良重は、弓射の達人であり、馬の飼育にも熱心な、戦上手な武将として知られていました。しかし、子供を弓の標的にして殺害したり、自分の意にそわない家臣を押し込めたり、城外に追放するなど、横暴な振る舞いも多かったと伝えられています（ただし、これらの行状は敵対していた島津氏側の記録によるものであり、事実よりも大袈裟に脚色された可能性もあります）。

良重は、天文9年（1540年）に虎居の大明神、永禄4年（1561年）に鬼丸大明神、同8年に大願寺の雨華堂を修築しました。

補注

祁答院良重は、戦国時代の激しい動乱の中で、自らの領地と家を守るために戦い続けた武将でした。その生涯は、勇猛果敢である一方で、悲劇的な側面も持ち合わせていました。彼の死後、祁答院氏は没落しましたが、その子孫は島津氏の家臣として生き残りました。

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