禾部

禾部（かぶ）について

禾部は、漢字の部首の一つであり、主に穀物や農業に関連する文字をグループ化したものです。康熙字典の214部首の中で115番目に位置し、5画の部首としては21番目、午集では21番目にあたります。

禾の由来

「禾」という字は、イネ科の植物であるアワを意味しており、その穂が垂れる様子を象徴しています。穀物の代表として、古代中国の黄河文明ではアワが重要な主食でした。また、長江文明ではイネが主食とされ、周辺地域では殷周時代を通じてイネが栽培されることはありませんでした。後に伝来した小麦も、現在の主食の一つとなっています。この点から「禾」は穀物全般の象徴として使われ、時を経てイネを特に指すようにもなりました。

なお、「米」の字は米の実だけを指すのに対し、「禾」は茎や穂を含めた全体を指すため、意味の範囲が広範です。

禾部の役割

禾部は、穀物や農業に関する意味を持つ漢字を収める部首として機能しています。漢字の偏旁（へんぼう）や部首の意符としては、主に農業に関連する文脈で用いられることが多いです。また、禾部に属する字はいくつかの異体字も存在し、構造が異なったり、一部の部分が変更されたりした文字がいくつか見られます。これには、上下や左右の構造が異なる同字（例：稿と稾）、部分を変えた異体字（穉と稚）、さらに表外字の拡張された新字体などが含まれます。

部首の通称

禾部には地域ごとの異なる名称があります。日本では「いね」や「いねへん」、「のぎ」などと呼ばれ、片仮名の「ノ」と「木」を組み合わせた表現も存在します。韓国では「벼화부（byeo hwa bu）」、すなわち「稲の禾部」と呼ばれ、英語圏では「Radical grain」と認知されています。

中古音と現代音

中古音においては、「禾」の発音は広韻では「戸戈切」の戈韻、詩韻では歌韻に分類され、平声に属しています。また、現代の言語においては、普通話では「hé」（注音：ㄏㄜˊ）、広東語では「wo4」と発音されます。日本語では音読みが「カ」または「いね」とされ、朝鮮語では「화」（hwa）と読まれ「벼」に訓読みされます。

例字

禾部から派生する漢字には、次のような文字があります：

• - 2画：私、秀、禿
• - 3画：秉、秊（年）
• - 4画：科、秋、秕、秒、秤、秦、租、秩、秘、秣
• - 6画：移
• - 7画：稀、稍、税、程
• - 8画：稔、稚、稠、稗、稟、稜
• - 9画：種、稱（称）
• - 10画：稼、穀、稻、稽、稿、稷
• - 11画：穎、積、穆
• - 12画：穗
• - 13画：穢
• - 14画：穩（穏）、穫
• - 17画：穰

これらの漢字は農業や穀物に関連する意味を持つものが多く、そうした背景からも禾部の重要性が伺えます。

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