筑紫三宅得許

筑紫三宅 得許とその出自

筑紫三宅得許（つくしのみやけ の とくこ）は、飛鳥時代に実在した豪族で、姓は連とする一族に属しています。三宅氏は、古代日本において屯倉の管理者としての役割を果たしていた一族であり、彼らは渡来人に起源を持つ氏族とされています。一般的には、天日槍を祖先として、田道間守の子孫であるとみなされていますが、筑紫三宅連氏に関しては、より多くの要素が絡んでいます。

三宅氏は、屯倉の管理者として日本全国に広がる存在でした。この連族である筑紫三宅氏は、『古事記』中巻の神武天皇段において、多氏や少子部宿禰氏、坂合部連氏、阿蘇君氏と同様、神八井耳命を祖先としています。このように、筑紫三宅氏は有力な地方豪族としての位置を確立していました。加えて、『類聚国史』に記載されている延暦12年8月条には、「筑前国那賀郡人三宅連真継」という名前が登場し、得許の子孫であると考えられています。

記録と白村江の戦い

『日本書紀』の巻第二十九には、天武天皇13年の12月（684年）に、遣唐使の留学生である土師甥（はじ の おい）や白猪宝然（しらい の ほね）が新羅経由で唐に送られた際、白村江の戦いで捕虜になった猪使子首（いつかい の こびと）と共に筑紫三宅得許が同乗していたことが記されています。この記録からは、戦いの結果として捕虜となった彼らの帰還が貴重な出来事であったことが推察されます。

新羅は、当時大奈末の地位にいた金物儒（こんもつぬ）を派遣し、捕虜たちを筑紫国へ送り届けることになりました。この出来事から1週間後、彼ら二人の捕虜が無事に帰還したことは喜ばしいニュースとされていました。ただし、彼らと共に戦った兵士たちがどういった運命を辿ったのかについては、詳細には記されていません。これは、白村江の戦いに関する最初の捕虜帰還の記録となります。

さらに、この際の使者に対する饗応は、持統天皇4年（690年）に、新羅から派遣された使者に対する接待の参考になったと伝えられています。このように筑紫三宅得許は、古代日本において重要な役割を果たした豪族の一人であり、その存在は歴史に深く刻まれています。

参考文献

• - 『古事記』完訳日本の古典1、小学館、1983年
• - 『日本書紀』（五）岩波文庫、1995年
• - 『日本書紀』全現代語訳(下)、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
• - 『日本古代氏族事典』【新装版】佐伯有清：編、雄山閣、2015年
• - 『白村江―古代東アジア大戦の謎』遠山美都男、講談社現代新書、1997年
• - 『戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで』倉本一宏、講談社現代新書、2017年

関連項目

• - 土師富杼
• - 氷老人
• - 弓削元宝
• - 道久
• - 韓嶋裟婆
• - 布師磐
• - 物部薬
• - 壬生諸石
• - 錦部刀良

もう一度検索