羽田明

羽田明（はねだ あきら）

羽田明は、1910年3月6日に京都市で生まれ、1989年12月27日に逝去した、日本のアジア史研究における重要な人物です。京都大学の名誉教授であり、その研究は中央アジア史に焦点を当てていました。

生い立ちと学歴

東洋史学者である羽田亨を父に持ち、学問的な環境の中で育ちました。第三高等学校を経て、東京帝国大学文学部東洋史学科に進学し、1934年に卒業。その後、1936年からはフランス政府の招聘留学生としてパリ大学に2年間留学し、ヨーロッパの学術に触れました。

研究活動

帰国後の1939年、東亜研究所の嘱託員として中央アジア近世史の研究に着手しました。1940年からは母校である第三高等学校で教鞭を執り、1949年に京都大学教養部の教授に就任。東洋史学の講義を担当しました。1962年には、学位論文『中央アジア史研究(近世篇)』を京都大学に提出し、文学博士号を取得。1970年には京都大学文学部に新設された西南アジア史学講座の初代主任教授となり、新たな分野の発展に貢献しました。

教育活動と学術貢献

羽田明は、研究者としての活動だけでなく、教育者としても多くの学生を育成しました。1967年から1969年まで京都大学教養部長を務めるなど、大学運営にも携わりました。1973年に京都大学を定年退官後も、四天王寺女子大学の教授や学長を務めるなど、教育への情熱を持ち続けました。また、日仏会館理事や武田科学振興財団杏雨書屋の館長など、学術・文化交流にも尽力しました。

受賞と栄典

その功績を称え、1967年にフランス政府からレジオン・ドヌール勲章（シュヴァリエ級）、1974年にはフランス政府文部省から学術功労賞が授与されました。1982年には、日本政府から勲三等旭日中綬章を受勲しています。

著作

主な著書には、『中央アジア史研究』があり、これは羽田明の研究を代表する著作として知られています。また、共著として『中学社会科世界史』、『新講座地理と世界の歴史』、『文英堂精説世界史』、『世界歴史』などがあります。翻訳としては、『異域録：清朝使節のロシア旅行報告』の編訳を担当するなど、幅広い分野で活躍しました。

人物

羽田明は、研究者としてだけでなく、教育者、文化交流者としても多岐にわたる活動を通じて、社会に貢献しました。その学問に対する真摯な姿勢と、国際的な視野を持つ人物として、多くの人々に尊敬されています。没後も、その業績は高く評価されており、アジア史研究における重要な先駆者として記憶されています。

主な著作

『中央アジア史研究』臨川書店 1982

共著

『中学社会科世界史』豊田尭 文英堂 1954
『新講座地理と世界の歴史 第7-8巻 アジア篇』日比野丈夫・西村睦男共編 雄渾社 1956
『文英堂精説世界史』豊田尭,会田雄次共著 文英堂 1964
『世界歴史 第4巻 東アジア世界』日比野丈夫共編 人文書院 1965
『世界歴史 第3巻 オリエント・地中海世界 第2』会田雄次共編 人文書院 1966
『西域』河出書房新社〈世界の歴史 10〉1969 / 新装版1974
『西域』新版 河出文庫〈世界の歴史 10〉1989 - 共著者：山田信夫・間野英二・小谷仲男

翻訳

訳註担当「瓦剌伝 (明史)」『騎馬民族史 正史北狄伝 3』平凡社東洋文庫 1973
トゥリシェン 『異域録：清朝使節のロシア旅行報告』羽田明編訳・今西春秋訳注 平凡社東洋文庫 1985

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