胡美

胡美（こ び）

胡美は、生年不詳ながら1384年に没した、元末明初の武将です。元々は廷瑞という名でしたが、朱元璋の字である国瑞を避けて美と改名しました。彼の出身は、現在の湖北省仙桃市にあたる沔陽府です。

生涯

胡美は、当初、陳友諒に仕え、江西行省の丞相として龍興を守っていました。1361年、朱元璋が江州を平定すると、胡美は朱元璋からの招諭を受けました。胡美は鄭仁傑を使者として九江に派遣し、部下の解散をしないことを条件に降伏を申し出ました。朱元璋は初め難色を示しましたが、劉基の進言により、城の明け渡しを促す返書を鄭仁傑に持たせて帰しました。

1362年、返書を受け取った胡美は、康泰を九江に派遣し降伏しました。朱元璋が龍興に到着すると、胡美は陳友諒から与えられた丞相印と、軍民が備蓄していた兵糧の資料を献上しました。朱元璋は胡美を労い、旧官にとどめました。しかし、胡美の降伏に同僉の康泰と平章の祝宗は不満を抱き、そのことを胡美は朱元璋に報告しました。朱元璋が彼らに徐達に従って陳友諒を討つよう命じると、康泰と祝宗は反乱を起こし、洪都（龍興）を攻め落としました。しかし、徐達らが兵を返して反乱を鎮圧し、祝宗は逃亡中に死亡、康泰は捕らえられ集慶に送られました。康泰は胡美の姉妹の子であったため、朱元璋に命を助けられました。

1363年、胡美は陳友諒討伐に従軍しました。1365年には、徐達らと共に水陸両軍を率いて淮東を奪取。1366年には、張士誠を討ち、湖州を攻略、平江を包囲しました。1367年には、別将として無錫を攻略し、莫天祐を降伏させ、凱旋すると栄禄大夫の位を授けられました。

その冬、胡美は征南将軍となり、軍を率いて江西から福建に進攻。杉関を渡り、光沢を攻略、邵武の守将である李宗茂を城ごと降伏させました。建陽に宿営すると、守将である曹復疇を降伏させました。さらに進軍して建寧を包囲しましたが、守将の達里麻と参政の陳子琦が老獪な戦術で抵抗。しかし、1368年、胡美は城を強襲して降伏させました。整然と入城し、略奪は一切行わなかったとされています。将士9700人あまりを捕らえ、陳子琦らを応天府に送りました。胡美は中書平章・同知詹事院事となり、湯和らと合流して福州・延平・興化を奪取しました。胡美は降伏した将を派遣して説得にあたらせ、汀州や泉州の諸県を降伏させました。福建を平定した後、胡美は現地の留守を任されましたが、後に応天府に召還され、朱元璋に従って汴梁へ赴きました。

1370年、胡美は朱元璋の命により河南へ赴き、ココ・テムルの旧部下を招集。同年の冬、その功績により豫章侯に封じられ、世襲の権利を与えられました。洪武帝の誥詞では、竇融が後漢に帰順した故事になぞらえて、胡美の功績を称えました。

1380年、胡美は臨川侯に改封され、長沙に潭府を建てて監督をしました。洪武帝は、胡美を韓政、曹良臣、楊璟、陸聚、梅思祖、黄彬らと共に勲臣に列し、厚遇しました。しかし、胡美の長女が宮中に入り貴妃となっていたものの、胡美の子や娘婿が宮中の禁を破って出入りしていたことが発覚し、1384年に胡美の子と娘婿は刑死、胡美自身も自殺を命じられるという悲劇的な最期を迎えました。

脚注

* 参考文献：『明史』巻129 列伝第17

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