船上城

船上城：明石海峡に臨む城の歴史

兵庫県明石市にあった船上城は、明石川河口西側、明石海峡に面した湿地帯に築かれた、平城と水城の複合構造を持つ城郭です。その歴史は複雑で、複数の築城説が存在し、林ノ城という名称で別所氏によって築かれた後、高山右近によって改修・再築された可能性も指摘されています。

林ノ城時代：別所氏と三木合戦

永禄年間、三木城主・別所氏の支城として、別所吉親が林ノ城を築いたとされています。城下にある浄蓮寺には、別所吉親が奉納したと伝わる観音像が安置されていることから、その存在を示唆する史料として注目されています。その後、大屋肥後守が城主となり、天正6年（1578年）の三木合戦では、織田信長方の稲田植元に占領されました。天正8年（1580年）には蜂須賀正勝、続いて生駒政勝が城主となり、天正13年（1585年）に廃城となりました。

船上城時代：高山右近とキリシタン大名

天正13年（1585年）、6万石を与えられた高山右近は、高槻城から枝吉城を経て船上城に入城、城下町の建設に着手しました。既存の林ノ城を改修したのか、新たな城を築いたのかは、現在でも明確な史料がなく、今後の研究に委ねられています。天正14年（1586年）には城と城下町の建設が完了したと考えられています。

高山右近は武将、茶人、そして名築城家として知られる一方、キリシタン大名でもありました。高槻城周辺では領民のみならず僧侶までもがキリシタンとなる中、明石郡の寺院存続を危惧した僧侶たちは、仏像を大坂の大政所へ運び窮状を訴えました。フロイスの『日本史』によると、秀吉は右近の行動を容認し、仏像は天王寺に移され、僧侶たちは明石から追放されたとあります。城内にあったとされる宝蔵寺は教会となり、外国人宣教師が常駐したと伝えられています。『郷土の城ものがたり』は、右近在城中に2000名がキリシタンになったと記しています。

船上城は水城としての機能も持ち、船上川河口部に港を築きました。秀吉から大船2艘（または小舟200艘）を与えられ、瀬戸内航路を利用した貿易船の中継港として利用され、宣教師との連絡にも用いられていたと考えられています。

バテレン追放令（1587年）により右近が追放されると、船上城は秀吉の直轄領となり城番が置かれました。文禄元年（1592年）、名護屋城に向かう秀吉が立ち寄ったとされ、この際に城下町が拡張された可能性があります。

関ヶ原の戦い後、慶長6年（1601年）、池田輝政が播磨に移封、姫路城を居城とすると、船上城は池田輝政の8男・利政が城主となりました。慶長13年（1608年）には輝政の甥の由之が明石郡を治めました。慶長20年（1615年）の大坂の陣後、一国一城令により船上城は支城としての役割を失い、元和2年（1616年）、池田光政が鳥取に移封、小笠原忠真が入城し明石藩が成立しました。元和5年（1619年）、明石城が築城されると、船上城は廃城となりました。

城郭構造と発掘調査

『慶長播磨国絵図』には「明石古城」として、また『小笠原忠真一代覚書』には大坂の役までの遺構として、門、塀、殿主（天守）の存在が記されています。天守は二層の建物の上に望楼を取り付けた三層構造だったと推測されています。現在、城跡は宅地や農地となり、本丸跡、古城大明神の祠、説明看板が残るのみです。明石城築城の際には、船上城の部材が使用されたと伝えられ、明石市指定文化財の織田家長屋門も船上城の侍屋敷の長屋門であったとされています。

平成19年（2007年）の発掘調査では、武家屋敷跡や磁器など2000点以上の遺物が発掘され、廃城後も町として機能していた可能性が示唆されています。

アクセス

城跡周辺は私有地のため、立ち入りが制限されています。最寄りは山陽電気鉄道本線西新町駅です。

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