花尾町 (鹿児島市)

花尾町（はなおちょう）

花尾町は、鹿児島県鹿児島市の北西部に位置する町です。かつては日置郡郡山村大字厚地と呼ばれていましたが、2004年の市町村合併の際に現在の名称に変更されました。人口は約800人、世帯数は約440世帯（2020年時点）と、小規模ながらも自然豊かな地域です。

地理

花尾町は、花尾山や八重山に囲まれた盆地に位置しています。町内には甲突川の支流である川田川が流れ、その流域に水田が広がっています。集落は、北から岩戸、大平、花尾、宮脇、大下、丸山と点在しており、南端には花尾小学校や花尾神社などがあります。

周辺地域との境界は、北は姶良市蒲生町、薩摩川内市入来町、南は鹿児島市油須木町、東俣町、東は鹿児島市本名町、西は鹿児島市郡山町となっています。

交通面では、町の中央を鹿児島県道211号小山田川田蒲生線が南北に走り、西方には国道328号が通っています。

山岳

町の東部に位置する花尾山は、標高540mの山で、本名町との境界にあります。山頂には熊野権現が祀られており、古くから山岳信仰の対象とされてきました。花尾山は川田川の源流でもあり、豊かな自然を育んでいます。

花尾山の名称の由来は、「花尾権現註縁起」によると、花尾権現がこの地に降臨した際に、山が花で彩られたことに由来するとされています。

歴史

花尾神社の創建と満家院東俣名

花尾町の歴史は、鎌倉時代にまで遡ります。当時、この地域は厚地と呼ばれ、薩摩国満家院の一部でした。中世には東俣名に属し、大蔵氏が治めていましたが、承久の乱で没落し、その後税所氏を経て島津氏の支配下となりました。

1218年（建保6年）、島津家初代当主の島津忠久が、母である丹波局を祀るために花尾神社を創建しました。この際、厚地と東俣は花尾神社と平等王院に寄進され、両地域は深い結びつきを持つようになりました。

16世紀には真言宗鹿児島大乗院の支配下となり、同院の領地となりました。この頃、厚地は厚智とも書かれ、「花尾権現註縁起」には花尾山麓の地名として記録されています。

厚地村の成立と大乗院領時代

江戸時代に入ると、厚地は薩摩藩の郡山郷の一部となり、前期から中期にかけて東俣村から分村して厚地村として独立しました。村高は895石余で、その一部は花尾神社の別当院である平等王院の領地でした。厚地村は大乗院の支配下に置かれ、1712年には公役免除の特権が与えられました。

江戸時代には、一向宗が禁じられていましたが、厚地の信者は隠れ念仏洞を建設し、密かに信仰を守り続けていました。また、村落の戸数に対する武士の比率が低く、寺社領として社家が勢力を持っていたと考えられています。明治初期の人口は1,268人でした。

明治の統治制度変更と大字設置

明治時代に入ると、1872年に郡山郷は第21大区、厚地村は第3小区となりました。1878年には日置郡の管轄となり、厚地に戸長役場が設置されました。1889年の町村制施行に伴い、厚地村は東俣村などと共に合併し郡山村となり、郡山村の大字「厚地」となりました。

学校を巡る対立と花尾小学校

明治初期に厚地に小学校が設置されましたが、1892年に東俣簡易科小学校と合併し、南方尋常小学校となりました。しかし、大正時代に入ると生徒数が増加し、校舎の移転問題が発生しました。この際、移転候補地を巡り、大字厚地の北部住民が強く反対し、地域間の対立が激化しました。

この対立は村議会を巻き込み、最終的には2校分立となり、1920年に花尾尋常小学校が新設されました。1922年には高等科が併設され、花尾高等尋常小学校となりました。戦後には花尾小学校と改称され、現在に至ります。

昭和以後の厚地・花尾町

1927年には道路が開通し、交通の便が向上しました。1956年には郡山村が町制施行し郡山町となり、厚地は大字として存続しました。2002年には花尾神社の本殿が鹿児島県の有形文化財に指定されました。

2004年の市町村合併で郡山町は鹿児島市に編入され、同時に大字厚地は廃止され、新たに花尾町が誕生しました。

文化財

花尾町には、以下のような文化財があります。

県指定有形文化財（建造物）
花尾神社本殿
花尾神社祝詞殿
花尾神社幣殿
花尾神社拝殿
市指定有形民俗文化財
茄子田の田の神
市指定無形民俗文化財
岩戸の疱瘡踊り
花尾の太鼓踊り
大平の獅子舞
市指定史跡
花尾神社の石塔群
市指定天然記念物
郡山花尾神社の社叢林

人口

1995年以降の人口推移は以下の通りです。

（国勢調査データに基づく人口推移表）

施設

花尾町には、以下の施設があります。

公共施設
郡山花尾運動場
八重山公園
教育施設
鹿児島市立花尾小学校
花尾保育所
郵便局
花尾簡易郵便局
寺社
花尾神社

花尾神社は、「さつま日光」とも呼ばれる美しい神社で、多くの参拝者が訪れます。創建は1218年と伝えられ、島津忠久が母を祀るために創建したとされています。また、鹿児島城下から花尾神社に至る道は「花尾街道」と呼ばれ、参拝者が多く利用していました。

交通

1927年頃に厚地から伊敷村小山田塚田までの道路が開通し、バス路線が開設されました。戦後には、花尾を経由する国鉄バスの路線も開設されました。1980年代には国道328号の改良工事が完了し、交通の便が大幅に向上しました。

道路

一般国道
国道328号
一般県道
* 鹿児島県道211号小山田川田蒲生線

花尾町は、豊かな自然と歴史、文化が調和した魅力的な町です。ぜひ一度訪れてみてください。

もう一度検索