苅宿 (川崎市)

神奈川県川崎市中原区の苅宿について

苅宿（かりやど）は、神奈川県川崎市中原区の南部に位置する町名です。住居表示が実施されており、丁目はなく、単独の行政地名として扱われています。面積は約27.5ヘクタールで、中原区の南部、二ヶ領用水の右岸に位置しています。

地理

地形的には多摩川の沖積低地であり、平坦な土地が広がっています。主に住宅地として利用されていますが、帝国通信工業をはじめとする中小の工場も点在しており、住宅と工場が混在する地域です。北部には東海道新幹線が走り、南端には東京都道・神奈川県道111号線（通称ガス橋通り）が通っています。隣接する地域としては、北端は木月住吉町、北東端は二ヶ領用水を挟んで市ノ坪、東端は幸区鹿島田、南端はガス橋通りを挟んで大倉町や幸区新川崎、南西端は西加瀬や幸区北加瀬と接しています。

地価

住宅地の地価は、2023年7月1日の公示地価によると、苅宿4-39の地点で1平方メートルあたり33万1000円となっています。

歴史

中世以前

この地には古代に条里制が施行された形跡があり、また平将門が一時滞在したという伝承も残っています。ただし、文献に初めて登場するのは1559年の『小田原衆所領役帳』で、「稲毛鹿島田借宿」という名で記載されており、当時は鹿島田の一部で「借宿」と呼ばれていたことがわかります。

近世

江戸時代には苅宿村として独立した村となり、当初は旗本の杉田家が領主でしたが、後に杉田家が断絶し、天領となりました。村の石高は200石で一定しており、二ヶ領用水から分水していましたが、干害に悩まされることもありました。生活困窮から、副業として紙すきが行われ、最盛期には42軒中35軒が携わっていました。

明治以降

明治維新後、神奈川県に属し、行政区画は苅宿村、住吉村、中原町、川崎市へと変遷しました。明治中期からは桃や梨の栽培が行われましたが、昭和期には東京航空計器の進出を機に、軍需工場が多数建設され、川崎大空襲で被害を受けました。工場建設に伴い住宅も増えましたが、都心へのアクセスの良さから、1956年以降住宅建設が加速し、農地は急速に減少しました。

地名の由来

地名の由来には、平将門がこの地に宿を求めたという説と、鎌倉道が多摩川と交差する地点に近いため、正規の宿場ではない「借宿」があったという説があります。『小田原衆所領役帳』に「借宿」と記載され、江戸時代に「苅宿」に変化したとされています。

沿革

1559年：「稲毛鹿島田借宿」として記録される。
1611年：二ヶ領用水が開通。
1628年：将軍の御鷹場となる。
明和年間：杉田家断絶後、天領となる。
1868年：明治維新により神奈川県に属する。
1889年：町村制施行により住吉村の大字となる。
1925年：住吉村と中原村が合併し、中原町苅宿となる。
1933年：川崎市に編入され、川崎市苅宿となる。
1937年：東京航空計器の工場が設置される。
1941年：三菱重工など、多くの工場が設置される。
1957年：川崎市立苅宿小学校が開校。
1972年：川崎市が政令指定都市へ移行し、川崎市中原区苅宿となる。
2009年：住居表示実施。

世帯数と人口

2024年9月30日現在、世帯数と人口は川崎市によって公表されています。

学区

小中学校の学区は、川崎市の教育委員会によって定められています。

事業所

2021年の経済センサスによると、事業所数と従業員数が調査されています。

交通

鉄道: 東海道新幹線が通過するが、駅はありません。最寄りの駅は元住吉駅や平間駅です。
道路: ガス橋通りが南端を、市道苅宿小田中線が西加瀬との境界を通っています。
バス: 川崎市バスと川崎鶴見臨港バスが、元住吉、川崎駅西口方面への路線を運行しています。

施設

中原消防署苅宿出張所
川崎苅宿郵便局
苅宿商店街・苅宿本通商店街
帝国通信工業
川崎市立苅宿小学校

その他

郵便番号：211-0022
警察：中原警察署が管轄しています。

参考資料

『新編武蔵風土記稿』
『川崎の町名』
『川崎地名辞典（上）』
『角川日本地名大辞典 14 神奈川県』
『川崎 新中原誌』

この情報を基に、苅宿の歴史、地理、文化、産業について理解を深めることができるでしょう。

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