若槻幾斎

若槻幾斎（わかつき きさい）

若槻幾斎は、江戸時代後期に活躍した儒学者・歌人です。崎門学派に属し、京都に尊朱学舎を構え、尾藤二洲、頼春水、高山彦九郎など、当時の著名な学者や文化人と交流しました。

生涯

大坂時代

延享3年（1747年）に大坂で生まれたとされています。幼少の頃から読書を好み、父から四書などの注釈書を学びました。父の死後、独学で崎門学を深く研究し、有賀長因に和歌を学びました。

江戸での挫折

安永年間には江戸に出て、田沼意次に仕官を試みましたが、田沼意次の失脚により、その願いは叶いませんでした。

京都での活動

天明5年（1785年）に京都へ移り住み、愛宕郡聖護院村に居を構えました。上京後、清和源氏若槻氏を称し、西依成斎に崎門学を学びました。天明8年（1788年）の天明の大火では、自宅が天皇の行在所御用局として接収され、一時的に白川村へ避難しました。その後、自宅は様々な用途に利用され、遷幸後には聖護院宮から白銀を賜りました。

角倉家の属吏として働いていましたが、後に退職し、儒学の教師として生計を立てました。寛政3年（1791年）には高山彦九郎に従って芝山持豊に面会し、和歌会や『源氏物語』の講釈に参加、経書の講義や門人の和歌の添削を行いました。同年春、「朱子の学を尊ぶ」という意味を込めて自宅を尊朱学舎と名付け、伏原宣条から扁額を授けられ、自身は幾斎と号しました。

文化・文政期には、青蓮院宮、近衛家、鷹司家、九条家、西洞院家、中山家、六条家、風早家、西大路家、富小路家、桜井家など、多くの公家に出講し、『中庸』や『論語』を講義しました。文化9年（1812年）には、学業の勉励が認められ、京都西町奉行から銀を賜りました。文化14年（1817年）には、仁孝天皇の即位に際し、代始能に開口謡を献上し、金を与えられました。

上京当初は経済的に余裕がありましたが、晩年は困窮し、学舎は荒れ果てていました。文政9年（1826年）に81歳で亡くなり、鳥辺山に葬られましたが、墓は近年撤去されました。

著書

『入学初則』: 程朱学・崎門学を推奨し、陸王学・古学・古文辞学を批判する内容。
『承応遺事』: 後光明天皇の事跡をまとめたもの。
『正保遺事』: 『承応遺事』の再編。
『畏庵随筆』: 仮名で書かれた随筆。
『音韺』: 韻図を収めた書物。
『四書集註翼』: 朱熹の『四書章句集註』の注釈書。
『大学章句小解』: 『四書集註翼』の解説書。

この他にも、『示肄』『読書余録』『読書録抄』『千首和歌』など、多数の著作を残しています。

交流関係

若槻幾斎は、多くの学者や文化人と交流がありました。

尾藤二洲: 若槻幾斎が最も親交を深めた人物の一人。
高山彦九郎: 尊号一件で協力し、親密な交流があった。
頼春水、頼山陽: 頼春水を通じて、その一族とも交流があった。
* 小沢蘆庵、蒲生君平: 蘆庵を通じて知り合い、蒲生君平からは同志として認められた。

その他にも、柴野栗山、西山拙斎、橘南渓、菅茶山など、多くの人物と交流がありました。

弟子

多くの弟子を育成し、その中には若槻整斎や摩島松南、井上学圃などがいます。

親族

若槻頼隆19世孫を称し、父は森義敏。妻は平氏。養子に若槻整斎がいます。

若槻幾斎の遺稿類は、建仁寺塔頭両足院を経て、京都府立総合資料館に所蔵されています。

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