西洞院家

西洞院家：桓武平氏嫡流の栄光と挫折

西洞院家は、桓武天皇を祖とする桓武平氏の嫡流を汲む由緒ある公家・華族の家系です。公家としての家格は半家、華族としての爵位は子爵に叙せられました。

平氏政権との関わりと公家としての伝統

その起源は、桓武天皇の皇子・葛原親王の子孫である平高棟に遡ります。高棟流は地方に下向して武家化した高望流と異なり、京都に留まり公家として朝廷に仕えてきました。代々、蔵人や弁官といった要職に就き、朝廷の実務に携わった多くの官僚を輩出。さらに、家系で編纂された日記は『平記』と総称され、貴重な歴史資料として現在も高い価値を持っています。

平安時代末期には、当主・平時信が大きな転換期をもたらしました。時信の娘・時子は平清盛の正室となり、妹の滋子は後白河天皇の女御（建春門院）となりました。時信の息子、平時忠は平氏政権下で権勢を振るった人物として知られています。これらの出来事は、西洞院家がいかに朝廷の中枢に深く関わっていたかを物語っています。

西洞院家の創設と隆盛

西洞院家の家号の起源は、平時信の弟である信範の子孫に求められます。行高の次男、行時（1324年-1369年）が住居を構えた地、西洞院を家号としたことによります。

その後、幾世代にわたり、当主の多くは公卿にはなれませんでしたが、時兼が従二位まで昇進。時顕・時長兄弟も右兵衛督や参議・従二位にまで上り詰め、以降、参議従二位まで昇進し、兵衛府か衛門府の督となることが家系の慣例となりました。

しかし、時当が永禄9年（1566年）に嗣子なく死去したため、一時的に家系は途絶えました。その後、天正3年（1575年）、関白近衛稙家の尽力により、河鰭家に養子入りしていた西洞院時慶が養子として迎えられ、家系は再興されました。時慶は近衛家と深い繋がりを持ち、その縁戚関係が西洞院家の再興に大きく貢献したと言えるでしょう。

時慶の時代には、複数の分家が生まれました。次男の時庸が平松家、五男の忠康が長谷家、六男の時貞が交野家をそれぞれ創設しました。また、時慶の娘・時子は後陽成天皇の掌侍となり、永宗女王と高雲院を生みました。さらに、時子の妹・行子は、東福門院付きの女官として仕え、その養子である石井行豊が石井家を興しました。

尊王思想と幕府の弾圧、そして明治維新

江戸時代中後期、当主・時名は竹内式部から神道と儒学を学び、朝廷の権威回復を志す尊王家として知られていました。しかし、宝暦8年（1758年）の宝暦事件に巻き込まれ、徳川幕府の弾圧を受け、失脚・落飾を余儀なくされました。明治維新後、明治天皇より正三位を追贈され、その尊王の功績が改めて評価されました。

江戸時代の西洞院家の家禄は273石（のち260石）で、屋敷は椹木町寺町西入にありました。明治維新後の華族制度成立に伴い、西洞院家も華族に列し、明治17年（1884年）には、西洞院信愛が子爵を授けられました。信愛はその後、神官として賀茂御祖神社に奉仕しました。

西洞院家は、平安時代から明治時代にかけて、朝廷の中枢に深く関わってきた歴史を持つ家系です。その栄光と挫折の歴史は、日本の歴史を理解する上で重要な一端を担っています。

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