苫小牧東部地域

北海道の南西部、苫小牧市、勇払郡厚真町、安平町にまたがる広大な勇払平野に位置する地域。このエリアは、かつて国家的なプロジェクトとして「苫小牧東部開発計画」が推進された、大規模な開発地帯です。

開発の経緯と目的の変化

苫小牧東部地域の開発は、日本の長期的な発展と北海道における新たな産業基盤の構築を目指し、「第3期北海道総合開発計画」において重要な位置づけがなされました。当初は「苫小牧東部大規模工業基地開発基本計画」に基づき、重厚長大産業を中心とした一大工業地帯の形成を目標としていました。

しかし、その後の国内外の産業構造の変化などを受け、当初の計画は見直しを迫られました。そして、「苫小牧東部開発新計画」およびその具体化である「苫小牧東部開発新計画の進め方について【第2期】」へと引き継がれ、開発の方向性は大きく転換しました。現在は、単なる工業地帯ではなく、「自然環境との共生を図りながら、快適性（アメニティ）に満ちた複合的な都市空間を創出する」ことを目指しています。

地域特性

この地域は約1万ヘクタールという広大な敷地を有しており、開発のポテンシャルは非常に高いと言えます。特に、新千歳空港、苫小牧港、高規格幹線道路、鉄道といった陸・海・空の各交通インフラが整備されており、国内外へのアクセスに極めて優れています。また、弁天沼に代表される豊かな自然環境が残されており、自然との調和も重視されています。エネルギー面では、近隣の勇払油ガス田から天然ガスの供給を受けるパイプラインが敷設されています。

事業を担う組織

本地域の開発事業は、設立以来、事業主体を変えながら進められてきました。

苫小牧東部開発株式会社
1972年（昭和47年）に、国（北海道東北開発公庫）、地方自治体、金融機関、民間企業などが出資する第三セクター方式で設立されました。土地の取得・造成、分譲・賃貸、施設の建設・管理運営などを担いました。開発初期には企業の誘致が進みましたが、その後は計画通りに進まず、1997年（平成9年）時点での契約済み敷地は当初計画の約8%にとどまりました。1995年の計画見直しにより分譲面積は縮小されたものの、多額の開発・造成費用による約1,800億円もの借入金を抱えることとなり、経営状況は厳しいものとなりました。

株式会社苫東
苫小牧東部開発株式会社の事業を引き継ぐ形で、1999年（平成11年）に設立された組織です。国（日本政策投資銀行）、地方自治体（北海道および地域の市町）、金融機関、民間企業が出資しています。主に土地の取得、造成、分譲、賃貸、管理を行うほか、埠頭など開発に必要な施設の建設・管理運営、さらに公共緑地や公共施設の維持管理業務も受託しています。

開発の歩み（主要な出来事）

開発計画の策定から現在の形に至るまで、いくつかの節目がありました。

1970年（昭和45年）：第3期北海道総合開発計画が閣議決定され、本開発の基盤が作られました。
1971年（昭和46年）：「苫小牧東部大規模工業基地開発基本計画」が北海道開発審議会で了承されました。
1972年（昭和47年）：苫小牧東部開発株式会社が設立され、事業が本格化しました。
1995年（平成07年）：「苫小牧東部開発新計画」が北海道開発審議会で了承され、開発の方向性が転換されました。
1999年（平成11年）：事業主体が株式会社苫東へ引き継がれました。
2008年（平成20年）：「苫小牧東部開発新計画の進め方について【第2期】」が策定されました。

地域内の構成と主要施設・企業

「苫小牧東部開発新計画」策定後は、国際化や情報化に対応した総合的な経済発展の基盤を創出するため、国や北海道、地元自治体による各種優遇措置や支援制度が設けられています。

地域は、日高自動車道と国道235号線を境に、北側の臨空地域と南側の臨海地域に大別されます。

臨空地域

新千歳空港への近さが特徴です。

臨空柏原地区: 新千歳空港に最も近く、北海道道129号線でアクセスできます。海岸からやや内陸に位置し、「苫小牧市テクノセンター」などの施設が立地しています。
臨空東地区: 国指定史跡である「静川遺跡」が存在します。また、近年では「苫東安平ソーラーパーク」や、「ノーザンファーム」といった大規模牧場関連施設なども立地しています。

臨海地域

苫小牧港に近いエリアです。

臨海北地区: 臨空柏原地区の南に位置し、日高自動車道や国道235号線、北海道道259号線に近接しています。「土木研究所寒地土木研究所」の試験施設や、「いすゞエンジン製造北海道」などが立地しています。
臨海東地区: 大規模な石油備蓄基地が設けられており、世界最大級の地上タンク方式を採用しています。また、「内閣衛星情報センター北受信管理局」も設置されています。周文ふ頭には「苫小牧東港周文フェリーターミナル」があり、本州方面への日本海航路が就航しています。
臨海臨港地区: 苫小牧港のコンテナターミナルが中心で、大型のガントリークレーンを備えています。
臨海西地区: 弁天沼の周辺を含み、野鳥の重要な生息地であることから、環境保全に配慮した開発が進められています。

アクセス環境

苫小牧東部地域は、多角的な交通手段に恵まれています。

港湾: 国際拠点港湾かつ中核国際港湾である苫小牧港が利用可能です。
空港: 24時間運用が可能な新千歳空港へのアクセスも良好です。
鉄道: 日本貨物鉄道（JR貨物）の苫小牧貨物駅が近くにあり、貨物輸送に利便性があります。また、北海道旅客鉄道（JR北海道）の室蘭本線・日高本線の苫小牧駅や、千歳線・室蘭本線の沼ノ端駅が利用可能です。
高速道路: 道央自動車道の苫小牧東IC/TBや沼ノ端西IC、日高自動車道の沼ノ端東IC、苫東中央IC、厚真ICなどが地域へのアクセスを担っています。
* 一般国道: 主要な幹線道路として、国道36号線、国道234号線、国道235号線が通っています。

これらの優れた交通インフラと広大な土地、そして見直しを経て自然との共生を目指す開発方針により、苫小牧東部地域は多様な産業の立地と地域活性化の可能性を秘めています。

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