蜷川親敬

蜷川 親敬（にながわ ちかのり）の生涯と業績

蜷川 親敬は、江戸時代後期の旗本であり、明治時代の初期に逓信技手として活躍した人物です。通称は邦之助であり、彼の人生は歴史の波にさらされながらも、一貫して家族や秩序を重んじたものでした。彼は、禄高1200石を有する旗本・滝川具近の四男として誕生し、公称の誕生年は天保12年（1841年）とされていますが、享年から逆算すると天保13年（1842年）が正確な生年と言われています。

親敬の家族背景には、幕末の動乱とも関連があり、実兄の滝川具挙は大目付を務め、鳥羽・伏見の戦いに関与していました。このような背景から、蜷川家はその後の親敬の人生にも大きく影響を与えました。

家系と継承

安政7年（1860年）のこと、親敬は兄の親従が子を残さずに急逝したため、末期養子として蜷川家を引き継ぐことになります。蜷川家は室町時代に丹波国に所領を持ち、室町幕府の政所代を世襲していた一族と別系統です。親敬がついた蜷川家は、越中国新川郡蜷川を祖としており、やがて没落しますが、17世紀後半に家系が復興し、徳川に仕官することで旗本の地位を再取得しました。

幕末の動向と役職

文久元年（1861年）8月、親敬は小姓組に入ります。そして翌年には、勘定奉行兼外国奉行の竹内保徳の娘との結婚が許可されました。この背景には、当時の幕府の中央での立ち位置があったことでしょう。元治元年（1864年）に徒頭としての役割を果たし、慶応2年（1866年）には幕府軍の改革の一環として銃隊頭並に任命されます。

慶応3年（1867年）になると、歩兵頭並に転任し、この間に親敬は実家である滝川家と隣接する小栗忠順の家を頻繁に訪れていました。そのことは当時の小栗の記録にも残っており、親敬と滝川具挙の長男との交流があったことがわかります。

静岡への移住と明治時代の転機

慶応4年（1868年）3月、江戸開城が決まり、親敬は歩兵頭並を退任し、徳川亀之助に従い静岡に移住しました。この時期は、日本の歴史においても重要な転換点であり、親敬もその一翼を担ったといえるでしょう。廃藩置県後に東京に戻った彼は、明治5年（1872年）からは工部省に出仕し、そこで逓信省の前身となる電信寮に所属します。

この頃、親敬は自身の名を「蜷川敬」と改め、電信架設の技術者として各地に出張しました。技術者としての働きは、現代の通信技術の基盤を築く一助となったとされます。

最期とその後の蜷川家

明治19年（1886年）には函館逓信管理局で5等技手の位置に就いたものの、翌年には病に倒れ、46歳でこの世を去りました。彼の遺骨は東京都渋谷区恵比寿南の松泉寺に埋葬されています。

蜷川家は、親敬の娘婿が養子として継承し、現在もその子孫が存続しています。興味深いことに、彼らは家伝の文書を国文学研究資料館に寄贈しており、蜷川親敬の業績と家系の歴史は、今なお貴重な文化遺産として残されています。

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