西ロマンス語

西ロマンス語：多様な言語群とその特徴

西ロマンス語は、ロマンス諸語を大きく二分する分類のうちのひとつです。ラ・スペツィア＝リミニ線を基準に、東ロマンス語と区別されます。地理的に広範囲に分布し、言語学的にも多様性に富むグループであり、ガロ・ロマンス語、イベロ・ロマンス語、そしてオクシタニー・カタロニア語（これらはさらに細分化されたり、他のグループに含められたりするなど、分類については議論があります）という主要なグループに分類されます。ガロ・イタリア語を含む場合もあります。

西ロマンス語の特徴として、複数形の「s」の使用や、イタリア語やルーマニア語の/t͡ʃ/と比較して/t͡s/（しばしば/s/）という「軟らかいC」音を持つ点が挙げられます。言語学者Dalbyの分類によれば、ポルトガル語、スペイン語、アストゥリアス語、アラゴン語、カタルーニャ語、ガスコーニュ語、プロヴァンス語、ガロ＝ワロン語、フランス語、アルピタン語、ロマンシュ語、ラディン語、フリウリ語の13言語が西ロマンス語に含まれます。イタロ・ダルマチア語と共にイタロ・西ロマンス語と分類されることもあり、分類法には様々な見解が存在します。サルデーニャ語に関しては、西ロマンス語、東ロマンス語のいずれにも属さず、より古い段階で分岐したとされています。

主要な西ロマンス語

話者数に基づいた四大標準西ロマンス語は、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、カタルーニャ語です。

スペイン語: 母語話者約4.86億人、第二言語話者約1.25億人。
ポルトガル語: 母語話者約2.2億人、第二言語話者約4500万人（多くはアフリカ）。
フランス語: 母語話者約8000万人、第二言語話者約7000万人（多くはアフリカのフランス語圏）。西アフリカではリングワ・フランカとして広く用いられています。
カタルーニャ語: 母語話者約720万人。

これらの言語は、膨大な数の非母語話者も抱えています。

西ロマンス語の主要グループ

西ロマンス語は、大きく以下の３つのグループに分類できます。分類方法によっては、これらのグループに属さない言語や、異なるグループに属する言語なども存在します。

1. ガロ・ロマンス語

フランス語を筆頭に、多様な言語が含まれます。

オイル語: 標準フランス語、ピカルディ語、ワロン語、ロレーヌ語、ノルマン語など。
アルピタン語（フランコ＝プロヴァンス語）: フランス語とプロヴァンス語の特徴を併せ持つ。
オック語: プロヴァンス語、ガスコーニュ語など。オクシタニー・カタロニア語に含める場合もある。
カタルーニャ語: 中央カタルーニャ語とバレンシア語の二大標準語が存在。オクシタニー・カタロニア語や東イベロ・ロマンス語に含める場合もある。
レト・ロマンス語: スイスのロマンシュ語、ドロミーティ地方のラディン語、フリウリのフリウリ語など。ガロ・ロマンス語に含めるか、独立した系統と見なすかで意見が分かれています。
ガロ・イタリア語: ピエモンテ語、リグーリア語、ロンバルド語、エミリア語、シチリア・ロンバルド語、バジリカータ・ロンバルド語など。ガロ・レト語に含める場合もあるが、言語学者の間でも分類は定まっていません。

2. イベロ・ロマンス語

イベリア半島を中心に分布する言語群です。

西イベロ・ロマンス語: カスティーリャ諸語（スペイン語、ラディーノ語）、ガリシア・ポルトガル語（ポルトガル語、ガリシア語、ファラ語）、アストゥリアス・レオン語（カンタブリア語、アストゥリアス語、レオン語、ミランダ語、エストレマドゥーラ語）、絶滅したモサラベ語など。
東イベロ・ロマンス語: カタルーニャ語とアラゴン語。オクシタニー・カタロニア語に含める場合もある。

3. オクシタニー・カタロニア語

ガロ・ロマンス語、イベロ・ロマンス語のいずれにも明確に属さない言語群です。

オック語: プロヴァンス語、ラングドシャン語、リムーザン語、オーヴェルニュ語、ガスコーニュ語など。
カタルーニャ語: 東西の二大方言と、中央カタルーニャ語およびバレンシア語の二大標準語。
* アラゴン語: 東、西、中央の方言があり、スペイン語の影響が強いものを第四の方言とする見解もある。

このように、西ロマンス語は多様な言語群から構成され、その分類については、言語学者の間でも様々な意見が存在しています。それぞれの言語の共通点と相違点を理解することは、ロマンス諸語全体の進化を理解する上で非常に重要です。

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