近鉄8000系電車

近鉄8000系電車

近鉄8000系電車は、近畿日本鉄道（近鉄）が奈良線・京都線向けに製造した通勤形電車です。本項では、8000系の派生系列である8400系、8600系、8800系についても解説します。

概要

1964年、奈良線の建築限界拡大と新生駒トンネルの開通により、20m級車両の運転が可能になったことを受け、旧型車両の置き換えを目的に製造されました。基本構造は、1961年に登場した900系に準じています。

広義の8000系（8000系、8400系、8600系、8800系）の総製造数は355両に達し、ベースとなった900系を含めると379両、さらに車体流用車の920系（後の1010系）を含めると394両となり、近鉄において最多両数を誇りました。

8000系

奈良線の輸送力増強のため、1964年7月の新生駒トンネル開業に合わせて製造されました。架線電圧1500V昇圧に際し900系を編入する予定があったため、モ8000形・ク8500形とも末尾21から番号が始まっています。

1964年から1966年製造の編成は扇風機を装備、1967年から1969年製造の編成はラインデリアを装備して登場しました。大阪線、名古屋線、南大阪線では、扇風機装備車とラインデリア装備車で系列を区別していますが、8000系では同一形式・連番としています。

1964年に2両編成31本（62両）が製造され、その後、1969年まで編成単位で、1980年まで中間車が製造されました。最終的に、4両編成31本、3両編成6本、2両編成33本の計208両が製造されました。電算記号は、2両編成がE、3両編成がB、4両編成がLです。

車体

車体は900系を基本とし、全長20,720mm、全幅2,800mmです。当初の塗装は900系と同様にベージュ色地に窓下に青色の帯でしたが、後にマルーンレッド一色に、そして1980年代後半からはシルキーホワイトとマルーンレッドのツートンカラーに変更されました。

走行機器

主要機器も900系を基本とし、昇圧準備がなされています。駆動装置はWNドライブ、主電動機は日立製作所HS-833Jrbまたは三菱電機MB-3064AC（出力は115kWまたは145kW）が混在、制御装置は日立製作所製で、各電動車に搭載されています。

台車は近畿車輛製シュリーレン式で、編成によって金属ばねのKD-51系、空気ばねのKD-64系、新設計のKD-86系が装着されています。

集電装置は、1968年度製造車以前は2基でしたが、1969年度製造車は1基で登場しました。後に1基撤去された車両もありますが、冷房改造時に再度増設した車両もあります。

ブレーキ方式はHSC-D（発電制動・抑速制動付き）電磁直通ブレーキです。圧縮機・電動発電機は付随車に搭載されています。

改造

1974年に8023Fが試作的に冷房化され、1977年から1985年にかけて本格的な冷房改造が行われました。また、編成の組成変更や減車、省エネ改造も実施されました。

廃車

最盛期には206両が在籍していましたが、2024年12月までに194両が廃車されました。廃車後、発生した主電動機と台車が他の車両の機器更新に転用されました。

8000系アルミ車体試作車

1968年製造の元8069Fは、アルミ車体試作車です。外観は普通鋼車と同様の塗装が施されていますが、前面隅や肩部のRが小さく角張ったスタイルが特徴です。アルミ車体用に用意されたKD-64B・C台車は、ボルスターアンカーの向きが特徴的でした。2005年12月に廃車されました。

8400系

1969年から1972年にかけて製造された系列で、8000系とほぼ同形ですが、機器配分を見直し、電動発電機とコンプレッサーをTc車に集中搭載しています。車体は8000系後期型と同一で、空調装置はラインデリアです。1978年から1985年にかけて冷房化と車体前面の方向幕設置が行われました。2025年2月までに17両が廃車されています。

8600系

8400系をベースに、登場時から冷房装置を取り付けた系列です。1973年から1979年にかけて製造されました。冷房搭載に伴い、屋根の形状が変更されています。本系列は当初より正面の貫通ドア上部に方向幕を設置し、以降の通勤車に標準装備されました。2024年5月までに一部車両が廃車されています。

8800系

既存抵抗制御車の省エネ改造のモデル車両として、8600系をベースに制御方式を界磁位相制御に変更した系列です。1980年に4両編成2本のみが製造されました。奈良・京都線では初の1C8M方式を採用しています。2025年3月現在、廃車は発生していません。

運用

当初は奈良線のみに投入され、後に京都線、難波線、橿原線、天理線、生駒線でも運用されました。8400系の一部はワンマン運転対応に改造され、田原本線で運用されています。

2両編成、3両編成、4両編成、6両編成があり、それぞれ運用範囲が異なっています。

脚注

注釈

出典

参考文献

飯島厳・藤井信夫・井上広和『復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道II 通勤車他』ネコ・パブリッシング、2002年
諸河久・山辺誠『日本の私鉄 近鉄2』（カラーブックス）、保育社、1998年。
三好好三『近鉄電車 大軌デボ1形から「しまかぜ」「青の交響曲」まで100年余りの電車のすべて』（JTBキャンブックス）、JTBパブリッシング、2016年。
東京工業大学鉄道研究部『私鉄電車ガイドブック5 近鉄』、誠文堂新光社、1978年。
関西鉄道研究会『関西の鉄道』1985年 新春号
交友社 『鉄道ファン』
付録小冊子「大手私鉄車両ファイル 車両配置表&車両データバンク」2007年9月号 - 2019年8月発行号
2016年11月号 Vol.56／通巻667号 特集「近畿日本鉄道 内装デザイン変更車両」p.56 - p.57
2018年7月号 Vol.58／通巻687号 POST欄 p.145

関連項目

近畿日本鉄道の車両形式
近鉄8A系電車

外部リンク

近鉄公式サイト　鉄路の名優

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