酒井定隆

酒井定隆：上総酒井氏の祖

酒井定隆（さかい さだたか）は、永享7年（1435年）に生まれ、大永2年4月24日（1522年5月19日）に亡くなったとされる、室町時代後期から戦国時代初期にかけての武将です。上総酒井氏の祖と位置づけられています。

出自の謎

定隆の出自については、いくつかの説がありますが、確たる証拠はなく、その実像は謎に包まれています。

浜氏出身説: 奉公衆の東常縁が馬加康胤を討伐するために下総国に下った際、その副将であった美濃国土岐氏一門の浜春利の子とする説。
三河酒井氏一門説: 三河国の在地領主である三河酒井氏の一門とする説。
松田氏出身説: 藤原秀郷流波多野氏一族の氏族である松田氏の出身とする説。
境氏子孫説: 境常秀の子孫とする説。
丹波酒井氏支族説: 丹波国多紀郡の酒井氏の支族とする説。

また、古文書には、上総酒井氏の祖は酒井清伝という人物であると記されています。この清伝については、16世紀の東金城主酒井胤敏（敏房と同一人物と推定される）と土気城主酒井胤治が、揃って酒井氏の祖として名前を挙げています。このため、清伝を定隆の別名とする説と、実在が確認できる清伝こそが上総酒井氏の祖であり、定隆の実在を否定する説も存在します。

上総国での活動

康胤の滅亡後、古河公方足利成氏の介入により千葉孝胤が千葉氏の当主となり、東常縁が推す千葉実胤、自胤兄弟は太日河以東に戻ることができませんでした。この状況を見た定隆は、幕府に見切りをつけ、東常縁の帰国には同行せず、成氏の客将になったとされています。

長享2年（1488年）には、上総土気城に入り、ここを拠点に勢力を拡大しました。その後、東金城も占領し、勢力を確立しました。

法華宗への信仰

定隆は熱心な法華宗（顕本法華宗）の信者であり、上総北部を平定後数年で、領内のほとんどの寺院を法華宗に改宗させたという伝説が、近世中期以降の書物で確認されています。このことから、定隆が領内における宗教にも大きな影響力を持っていたことが伺えます。

子孫の繁栄

定隆の子孫は、土気を拠点とする長男の定治の系統と、東金を拠点とする三男の隆敏の系統に分かれ、それぞれ上総国で勢力を保ちました。

まとめ

酒井定隆は、出自は不明な点が多いものの、上総酒井氏の祖として、その後の歴史に大きな影響を与えた人物です。武将としての活動だけでなく、法華宗の普及にも貢献したとされています。

脚注

滝川恒昭 著「房総酒井氏に関する基礎的考察-酒井清伝の検討を中心に-」、佐藤博信 編『中世房総と東国社会』岩田書院〈中世東国論4〉、2012年。ISBN 978-4-87294-739-7。

関連項目

享徳の乱
中野城
上総酒井氏
上総七里法華

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