野尻城 (日向国)

野尻城 (のじりじょう)

概要

野尻城は、宮崎県小林市（旧野尻町）の東麓に位置する山城です。城の周囲は城之下川によって囲まれ、断崖絶壁に挟まれた天然の要害となっています。その広大な城域は南北400メートル、東西800メートルにも及びます。

当初、城郭は西北部の本丸と東南部の二の丸で構成されていると考えられていました。しかし、その後の調査により、東南部が「野尻本城」、西北部が後から築かれた「野尻新城」であることが判明しました。この二つの城郭が一体となって機能していたと考えられています。

現在、城跡は農地として利用されていますが、曲輪や空堀などの遺構が残っています。特に新城側には井戸の跡が残っており、この井戸跡は1989年（平成元年）11月4日に当時の野尻町によって史跡に指定され、現在は小林市指定史跡となっています。

歴史

野尻城は、天文年間に伊東氏によって築かれたとされています。ただし、築城されたのが城郭全体を指すのか、それとも新城部分を指すのか、詳細な記録は残っていません。

それ以前の記録として、延元4年（1339年）には、三俣院の高城が畠山直顕に攻め落とされた際、城主の肝付兼重が落城の10日前に城を脱出し、この野尻城に入ったという記録があります。また、文明6年（1474年）頃には、北原氏の8代目当主・貴兼によって併有されたという記録も残っています。その後、北原氏の領地が伊東氏によって奪われると、野尻城は伊東氏の城となりました。

天正4年（1576年）に島津氏によって高原城が落とされると、野尻城は紙屋城、戸崎城とともに伊東氏にとって最前線の城となりました。高原城の城主となった島津家臣の上原尚近は、当時の野尻城主であった福永祐友が島津氏に内通しているという偽の情報を佐土原城下に流布し、福永と伊東家当主・伊東義祐との離間を画策しました。義祐はその偽情報を信じ、福永を遠ざけるようになります。これにより、福永は島津氏に寝返り、天正5年（1577年）12月7日に島津氏の兵を城内に入れ、野尻城は島津氏の城となりました。

元和元年（1615年）の一国一城令により、野尻城は廃城となりました。

遺構

曲輪
空堀
井戸跡（小林市指定史跡）

脚注

1989年（平成元年）11月4日に旧野尻町史跡に指定。
現在は小林市指定史跡。

参考文献

宮崎県教育庁文化課 1998「地名表」『宮崎県中近世城館跡緊急分布調査報告書1（地名表・分布地図編）』宮崎県教育委員会 p.22
宮崎県教育庁文化課 1999「野尻城」『宮崎県中近世城館跡緊急分布調査報告書2（詳説編）』宮崎県教育委員会 p.150

関連項目

日本の城一覧

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