金 (朝鮮人の姓)

金（キム）姓について

金（きん、キム、朝: 김）は、朝鮮半島で最も一般的な姓の一つです。特に韓国では、2015年の国勢調査によると、約1069万人が金姓を名乗っており、これは韓国の総人口の約2割に相当します。これは、韓国における最大の姓であり、その歴史と影響は非常に大きいと言えるでしょう。

発音と表記

朝鮮語における漢字の発音は、通常一つの文字に対して一種類ですが、「金」の文字は一般的に「クム」（금）と発音されます。しかし、姓や地名として使用される場合は「キム」（김）と発音されるのが一般的です。例えば、有名な「金海」（キムへ）や「金浦」（キムポ）などが挙げられます。

興味深いことに、かつては姓や地名に使われる「金」も「クム」と発音されていたという説があります。民間語源によると、朝鮮王朝時代に王である李氏の姓に「木」が含まれていたため、五行思想で「金」が「木」を滅ぼすとされる「金剋木」を避けるため、発音が「キム」に変化したとされています。これは、王家の安泰を願う当時の人々の思いが反映されたものかもしれません。

ただし、現在でもまれに「クム」と発音する人がいます。音楽家の金守賢（クム・スヒョン）氏は、伝統的な発音に戻すという意図で、自身の姓を「キム」から「クム」に改めました。その息子である指揮者のクム・ナンセ氏、クム・ノサン氏も「クム」の姓で活動しています。

김 のラテン文字表記は、Kim、Gimなど様々な形が存在します。北朝鮮ではマッキューン＝ライシャワー式に基づいた「Kim」が用いられています。韓国では文化観光部2000年式で「Gim」と表記されますが、人名表記は例外とされており、実際には多様な表記が使用されています。

氏族

金姓には、285もの本貫（氏族のルーツ）が存在します。その中でも最大の氏族集団が「金海金氏」（キムへキムし）です。金海金氏は、古代国家である駕洛国（金官伽耶）の初代王・首露王を始祖としています。慶州金氏は新羅王家の子孫であり、6世紀に金海金氏と婚姻関係を結んだことから「金氏」を名乗るようになりました。また、安東を本貫とする安東金氏のうち、「新安東金氏」は、朝鮮王朝後期に強大な権勢を誇ったことで知られています。

『三国史記』には、駕洛国（金官伽耶）の王である首露王の祖先が、中国の伝説上の帝王である黄帝の子の少昊金天氏であるという記述があります。このため、金氏を名乗っていたとされています。この記述については、古代朝鮮の氏族が自らのルーツを中国の有力な氏族に結び付けようとした歴史的背景を考慮する必要があるでしょう。

著名な人物

金姓の著名人は、韓国と北朝鮮だけでなく、中国の朝鮮族にも存在します。以下に代表的な人物をいくつか紹介します。

韓国の人物

独立運動家: 金九（キム・グ）
元大統領: 金泳三（キム・ヨンサム）、金大中（キム・デジュン）
野球選手: 金炳賢（キム・ビョンヒョン）、金泰均（キム・テギュン）、金無英（キム・ムヨン）
サッカー選手: 金甫炅（キム・ホギョン）
フィギュアスケート選手: 金妍兒（キム・ヨナ）
アイドル: キム・ヒチョル（SUPER JUNIOR）、キム・キボム（元SUPER JUNIOR）、キム・キュジョン（SS501）、キム・ヒョナ（4minute）、キム・ジョンヒョン（SHINee）、キム・キボム（SHINee）、金珉錫（EXO）、金俊勉（EXO）、金鐘大（EXO）、金鐘仁（EXO）、キム・ナムジュン（BTS）、キム・ソクジン（BTS）、キム・テヒョン（BTS）、キム・ミンギュ（SEVENTEEN）、キム・ダヒョン（TWICE）、キム・ヒョンジョン（宇宙少女）、キム・ジヨン（宇宙少女）、キム・ヒョンジン（今月の少女）、キム・ジョンウン（今月の少女）、キム・ジウ（今月の少女）、キム・ジス（BLACKPINK）、キム・ジェニ（BLACKPINK）、キム・チェウォン（IZONE, LE SSERAFIM|LE_SSERAFIM）、キム・ミンジュ（IZONE）、キム・ナヨン（LIGHTSUM）、キム・チェヒョン（Kep1er）、キム・ダヨン（Kep1er）
女優: キム・テヒ、キム・ナムギル、キム・ハヌル、キム・ヒソン、キム・ヒョンジュ、キム・ボム
アイスホッケー選手: キム・ギワン、キム・サンウク、キム・ゴンウ

北朝鮮の人物

国家主席: 金日成（キム・イルソン）
朝鮮労働党総書記: 金正日（キム・ジョンイル）
朝鮮労働党総書記・国務委員長: 金正恩（キム・ジョンウン）

中国 朝鮮族の人物

歌手: 金海心（キム・ヘシム）

補足

金姓は、朝鮮半島における歴史と文化を深く反映している姓であり、その多様なルーツと多くの著名人の存在は、韓国社会だけでなく、朝鮮半島全体においても重要な位置を占めています。