阿保今雄

阿保今雄

阿保今雄（あぼ/あほ の いまお）は、平安時代前期に活躍した貴族です。従五位下・主税頭という官位にまで上り詰めました。

出自と氏姓

今雄は当初、小槻山姓（小槻山君）を名乗っていましたが、後に阿保姓（阿保朝臣）を賜与され改姓しました。しかし、子の小槻当平以降は「小槻宿禰」に再び改姓し、その子孫は官務家として発展を遂げます。そのため、一族の礎を築いた今雄自身も「小槻今雄」や「今雄宿禰」と記されることがあります。

当平と糸平が姓を朝臣から格下の宿禰に落とした理由については定説がなく、彼らが今雄の実子ではないという説も存在します。『地下家伝』によれば、今雄は天武天皇から舎人親王、三原王を経て繋がる家系であったとされています。

経歴

小槻山君は近江国栗太郡（現在の滋賀県草津市・栗東市一帯）を拠点とする豪族でした。仁寿元年（851年）には、今雄は雄琴・苗鹿の地を拝領し自身の所領としました。雄琴という地名は、今雄の邸宅から琴の音がよく聞こえたことに由来すると伝えられています。貞観5年（863年）には、苗鹿の地に法光寺を創建しました（一説には、それ以前に最澄が開基したともいわれます）。

貞観15年（873年）には、正六位上・左少史・算博士であった今雄は、弟の有緒らと共に平安京左京四条三坊に居を移しました。貞観17年（875年）には、有緒や従兄弟の良眞と共に阿保朝臣姓を賜与され、改姓しました。

今雄らが算道を習得したことにより太政官の史の官職を得て、中央への進出を果たしたものと考えられています。当時、算道は9世紀初頭から衰退が進み、大学寮4道のうち最下位に位置していましたが、地方教育機関である国学に入るべき地方豪族にも道が開かれていました。また、史は太政官事務部門の少納言局・左右弁官局のうち弁官局に属する職であり、任じられる家は地下家でしたが、太政官文書管理・諸国庶務を務めることで朝廷に仕えることができました。なお、この算博士・史の職は今雄の子である阿保経覧・小槻当平・小槻糸平も歴任し、その後は当平の子孫に継承され、小槻氏は官務家として発展していくことになります。

その後、元慶元年（877年）までに外従五位下・但馬介に叙任され、元慶3年（879年）には従五位下（この時の官職は勘解由次官・算博士・但馬介）に叙爵しました。元慶8年（884年）7月7日に没し、死後、法光寺裏山の円墳に葬られました。また、子の当平によって雄琴神社に今雄宿禰命として祀られています。

墓所

今雄の墓は、滋賀県大津市法光寺境内にあります。「伝小槻今雄宿禰墓」とされ、墓の石造宝塔は古墳上から移されたものと伝えられています。毎年7月7日には、今雄忌として供養が行われています。

官歴

時期不詳：正六位上、左少史、算博士
貞観15年（873年）12月1日：本居貫を平安京左京四条三坊に改める
時期不詳：右大史
貞観17年（875年）12月17日：阿保朝臣に改姓
時期不詳：外従五位下
元慶元年（877年）4月26日：算博士兼但馬介
時期不詳：勘解由次官
元慶3年（879年）11月25日：従五位下
時期不詳：主税頭
元慶8年（884年）7月7日：卒去

系譜

父：小槻山豊緒
母：不詳
生母不明の子女：
男子：阿保経覧（?-917）
男子：小槻当平（阿保当平）（?-929）
男子：小槻糸平（886-970）
男子：小槻陳群（919-968） - 兄・糸平の養子

参考文献

宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

関連項目

雄琴神社 (大津市) - 祭神：今雄宿禰命
雄琴神社 (壬生町) - 祭神：小槻今雄公
法光寺

外部リンク

算博士小槻今雄について (数学史の研究)

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