阿児町神明

三重県志摩市阿児町神明

阿児町神明（あごちょうしんめい）は、三重県志摩市の中央部に位置する地域です。1897年までは神明浦（しめのうら）と呼ばれていました。この地は、真珠養殖発祥の地として知られるとともに、志摩市の主要な観光拠点である賢島を擁しています。面積は約6.98平方キロメートルで、複雑な地形と豊かな自然が特徴です。

地理

神明地区は、谷と台地が交錯する複雑な地形をしています。南から西にかけて英虞湾に面しており、その美しい海岸線が魅力です。中心集落は、津波や高潮を避けるため、地区の中央部の台地上に位置しています。この地域は、北は阿児町鵜方・阿児町国府、東は阿児町甲賀、南東は阿児町立神と隣接しています。

産業

神明の主な産業は、農業、真珠養殖、観光業です。1950年代の統計では、耕地面積の割合は志摩郡の平均よりも低く、内湾では海女による漁業は行われていません。英虞湾に面した地域であるため、真珠養殖が盛んで、古くからこの地の経済を支えてきました。また、近年は観光業も発展し、多くの観光客が訪れるようになりました。

島

神明には、以下の島々があります。

賢島: 英虞湾最大の島で、観光の中心地です。
多徳島: 御木本幸吉が真珠養殖に成功した地として知られています。かつては「田徳島」と表記されていましたが、1899年に改名されました。
横山島: 賢島の近くに位置し、真珠養殖の中心地の一つです。宿泊施設「石山荘」があります。
枯島:
弁天島:
ゑびす島:

これらの島々は、美しい自然と豊かな海の恵みをもたらしています。

新興住宅地

神明北部には、「うらじろ団地」という新興住宅地が開発されています。これは、地域の住宅需要に対応するために整備されました。

歴史

神明の歴史は古く、先史時代から人々が居住していました。賢島遺跡からは、石鏃、石錘、石斧などの遺物が出土しています。中世には城があったとされ、「城山」と呼ばれる丘があります。江戸時代には、鳥羽藩に属し、神明浦村として知られていました。村高は時代とともに増加し、新田開発によって発展しました。また、水[[産業]]も盛んで、近隣の村々と漁業権を巡って争った記録も残っています。主な漁法は地曳網、立網、長網などの網漁で、特にぬきイリコ（きんこ）が多く生産されました。文化年間には、阿波国の巡業師から人形と技術を受け継ぎ、「神明文楽」が始まりました。

明治時代初期には、神明浦村は小村であったため、鵜方村または立神村との合併を求められました。しかし、住民は漁村としての独自性を守るため、分村を強く求めました。その結果、1897年に鵜方村から分離し、単独の村として「神明」と改称しました。1890年には、御木本幸吉がこの地に進出し、真珠養殖を始めました。1929年には、志摩電気鉄道（現在の近鉄志摩線）が開通し、賢島に終点が置かれたことで、開発が進みました。

かつて、この地域では出生届の提出が遅れることが多く、戸籍上の年齢と実際の年齢が異なることがありました。また、次男や三男には名前がつけられないこともあり、役場が勝手に名前をつけることもありました。村の人々は、日常での呼び名で互いを認識していたため、戸籍上の名前と認識が異なることもありました。

現代

1946年には、伊勢[[志摩国立公園]]が制定され、観光開発が本格的に始まりました。1951年には、志摩[[観光ホテル]]が賢島に開業し、奥志摩地域における宿泊施設整備の先駆けとなりました。1965年には、真珠養殖筏数が県内4位となり、真珠養殖は最盛期を迎えました。しかし、その後、過密な養殖による品質低下と価格の暴落が起こり、真珠養殖業は不況に陥りました。1970年代以降、観光開発が本格化し、企業の保養所が多数建設されました。また、地域住民向けに「うらじろ団地」が建設されました。

1991年には、阿児アリーナと阿児町立図書館（現在の志摩市立図書館）が開館しました。しかし、バブル崩壊後、観光業は不況に見舞われ、施設の閉鎖や旅館の廃業が相次ぎました。2000年には、三重県が「志摩サイバーベース・プロジェクト」を発足させましたが、目立った成果を上げることができず、事業は終了しました。一方、賢島スポーツランドは、2010年に「賢島ローズネットファーム」、2011年に「志摩ローズファーム」として再出発しました。

2016年には、賢島が伊勢志摩サミットの会場となり、大きな注目を集めました。サミット開催1周年を記念して、賢島駅2階に「サミエール」が開館しました。

地名の由来

「神明」という地名の由来には、いくつかの説があります。一つは、禁漁区の浜に注連縄を張り、そこで獲れたナマコを伊勢神宮や伊雑宮に奉納していたことから、「しめのうら」（注連浦⇒神明浦）と呼ばれるようになったという説です。もう一つは、毎年師走になると恵利原村の逢坂へ注連縄を張りに行ったことから、「しめのうら」となったという説です。1897年に鵜方村から分離する際、「浦」が外され、「神明」となりました。

沿革

1889年：町村制施行により、英虞郡鵜方村大字神明浦となる。
1896年：英虞郡と答志郡の合併により、志摩郡鵜方村大字神明浦となる。
1897年：神明浦が鵜方村から独立し、志摩郡神明村となる。
1955年：昭和の大合併により、志摩郡阿児町神明となる。
2004年：平成の大合併により、志摩市阿児町神明となる。

世帯数と人口

2019年7月31日現在、世帯数は2,061世帯、人口は5,066人です。

港湾

神明には、地方港湾である賢島港と漁港である神明漁港があります。神明漁港は、1989年に漁港指定を受け、志摩市が管理しています。

交通

鉄道:
近鉄志摩線が通り、志摩神明駅と賢島駅があります。

バス:
三重交通のバスが運行しており、賢島駅前、神明、長沢などにバス停があります。

道路:
国道167号、国道260号、三重県道17号が通っています。

海路:
志摩マリンレジャーが賢島港から遊覧船や航路を運航しています。

施設

賢島には、多くの観光施設やホテルがあります。詳細については、賢島の情報を参照してください。

史跡

神明神社: 天照大神を主祭神とする神社で、境内の「曼荼羅石」は三重県指定文化財です。
瑞竜山昌禅寺: 曹洞宗の寺院です。

その他

郵便番号: 517-0502

参考文献

阿児町 編『阿児町史』
阿児町史編纂委員会 編『新版 阿児町史』
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 24 三重県』
平凡社地方資料センター 編『「三重県の地名」日本歴史地名大系24』

関連項目

三重県の廃止市町村一覧

外部リンク

神明真珠養殖漁業協同組合
* 日本の地名がわかる事典『三重県志摩市阿児町神明』 - コトバンク

阿児町神明は、美しい自然と豊かな歴史を持つ魅力的な地域です。真珠養殖の歴史や観光地としての発展、そして地域の人々の暮らしを通して、この地の魅力を感じていただければ幸いです。

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